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■以下はサイト管理者がキーワード「ベンゾジアゼピン」に関する発言を抜粋しました。質疑の前後関係を考慮して長めに拾い出しています。
参議院
第193回国会 厚生労働委員会 第23号
平成二十九年六月八日(木曜日)
<前略>
○片山大介君 日本維新の会の片山大介です。
私、前回は睡眠の重要性を訴えさせていただいたんですが、今回は寝られなくなったりする睡眠障害について伺っていきたいと思います。
それで、まず、睡眠障害による日本の経済的な損失って幾らかという、こういう調査があって、これを見ると、眠気による作業効率の低下や欠勤、遅刻、早退などで実に年間三・五兆円に上るというんです。これ結構かなりな額ですが、なおかつ、これには医療費が加わっていないので、医療費を加えるとまさに相当な損失額になると思っている。
それで、その睡眠障害の中でも代表的なものは不眠症だと言われていて、じゃ、一体その不眠症、悩んでいる人がどれくらいいるのかというと、これは厚労省の調査であるんですが、一般成人のうちおよそ二〇%が不眠に悩まされている。だから、五人に一人の計算なので、およそ一千五百万人から二千万人に上るというので、ある意味では国民病に近いようになってきているのかなというふうに思います。
なぜ、それで不眠症になるのかというと、これは大体主に心理的な要因だというふうに言われているんですけれども、これについて厚労省はどのように分析しているのか、ちょっとお伺いしたいんですが。
○国務大臣(塩崎恭久君) 不眠症の原因についてお尋ねをいただいたと思いますが、不眠とは、寝付きの悪い入眠障害、それから眠りが浅くて途中で目が覚めちゃうという中途覚醒、それから早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒、ある程度眠ってもぐっすり眠れないという、眠れたという満足感とか休養感が得られないという熟眠障害など、睡眠の問題を抱えた状態をいうわけでございまして、このような不眠の状態が一か月以上続いて、日中、精神や身体の不調が出ると、こういう状態になると不眠症ということに相なるようでございます。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/193/0062/19306080062023a.html
第193回国会 厚生労働委員会 第23号
平成二十九年六月八日(木曜日)
<前略>
○片山大介君 日本維新の会の片山大介です。
私、前回は睡眠の重要性を訴えさせていただいたんですが、今回は寝られなくなったりする睡眠障害について伺っていきたいと思います。
それで、まず、睡眠障害による日本の経済的な損失って幾らかという、こういう調査があって、これを見ると、眠気による作業効率の低下や欠勤、遅刻、早退などで実に年間三・五兆円に上るというんです。これ結構かなりな額ですが、なおかつ、これには医療費が加わっていないので、医療費を加えるとまさに相当な損失額になると思っている。
それで、その睡眠障害の中でも代表的なものは不眠症だと言われていて、じゃ、一体その不眠症、悩んでいる人がどれくらいいるのかというと、これは厚労省の調査であるんですが、一般成人のうちおよそ二〇%が不眠に悩まされている。だから、五人に一人の計算なので、およそ一千五百万人から二千万人に上るというので、ある意味では国民病に近いようになってきているのかなというふうに思います。
なぜ、それで不眠症になるのかというと、これは大体主に心理的な要因だというふうに言われているんですけれども、これについて厚労省はどのように分析しているのか、ちょっとお伺いしたいんですが。
○国務大臣(塩崎恭久君) 不眠症の原因についてお尋ねをいただいたと思いますが、不眠とは、寝付きの悪い入眠障害、それから眠りが浅くて途中で目が覚めちゃうという中途覚醒、それから早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒、ある程度眠ってもぐっすり眠れないという、眠れたという満足感とか休養感が得られないという熟眠障害など、睡眠の問題を抱えた状態をいうわけでございまして、このような不眠の状態が一か月以上続いて、日中、精神や身体の不調が出ると、こういう状態になると不眠症ということに相なるようでございます。
不眠の原因は、ストレスから、あるいは体の病気、それから心の病気、薬の副作用、いろいろあるわけでございまして、不眠が続くと眠れないことへの恐怖が生じることで更に不眠が悪化するという悪循環もあるということのようでありまして、不眠症と睡眠時間との関係につきましては、平均睡眠時間に比べて短い時間でも十分な睡眠だと感じる方もいれば、平均睡眠時間に比べて長い時間でも不十分な睡眠だと、こう感じる方もおられるなど、必要な睡眠時間には個人差があることから、両者の関係は必ずしも明確ではないわけでありまして、個々人が必要な睡眠時間を確保した上で、併せて質の向上を図ることが重要であると、このように考えております。
○片山大介君 ありがとうございます。まさにストレスなんですよね、だから。
それで、じゃ実際に不眠症になった人への治療行為って今何しているかというと、もう基本的には睡眠薬の服用になっているんですよね。これ、具体的に言うとベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬で、これを主治医の指示の下で飲んでいくということになるんですが、ただ、この睡眠薬は、御存じのように、耐性が形成されるとか、あとは依存性が出てくるだとか、あと服用した後の記憶障害といった問題があるんですが、厚労省としては、こうした服用による影響ってどう認識していて、何か対策を取っているのかどうか、これをお伺いしたいんですが。
○政府参考人(武田俊彦君) 御指摘のとおり、医薬品でございますので、治療に有効である一方で副作用も一定の頻度で発現をいたします。
ただいま御指摘ありましたように、このベンゾジアゼピン系の睡眠薬につきましては、これまでも大量の連用により耐性が生じて依存性又は離脱症状などが発生することが知られており、添付文書で大量連用により薬物依存を生じることがあるというふうに注意喚起をしてまいりました。
最近になりまして、PMDA、医薬品医療機器総合機構の調査によりまして、承認用量の範囲の中でも連用により薬物依存が生じることが明らかになってまいりましたので、本年三月に、用量及び使用期間に注意して、漫然とした継続投与による長期使用を避けるように添付文書を改訂し、注意喚起をしているところでございます。
今後とも、必要な注意喚起を医療現場にしてまいりたいと思っております。
○片山大介君 そうなんです。それで、次に聞きたかったのが、その薬物依存についてちょっと聞きたかったんですが、その睡眠薬の処方が実は日本はほかの国に比べてとても多くなっているんです。それがまず配付資料の一枚目なんですが、これは国連機関の国際麻薬統制委員会というところが調査した二〇一〇年の調査報告書なんですが、これだと日本はベルギーに次いで多くなっているんです。それで、これ五年前ですから、今もっとこれより多くなってきているんじゃないか、これ、人口一千人当たりの処方量のデータなんですけれども。ヨーロッパはすごく抑制を始めているというので、だから、もしかしたら日本の方が抜いている可能性もあるんじゃないかというふうにも言われているんですけれども。
それで、この統制委員会が言うには、やっぱり日本は不適切な処方パターンが多いと、それから乱用が反映されているというような指摘があるんですけれども、これについて、厚労省、認識しているかどうか、お答えください。
○政府参考人(堀江裕君) 二〇一〇年の国連麻薬統制委員会の報告書におきまして、日本でのベンゾジアゼピン系薬剤の処方の仕方が不適切でございまして、その結果、アジアの他の国と比較して使用量が多くなっていると指摘しているということについては承知してございまして、日本においてベンゾジアゼピン系薬剤の使用量が多い原因は、委員御指摘ございましたように、睡眠障害の治療において従来は薬物療法が中心となってきたことが考えられ、ベンゾジアゼピン系睡眠薬などにつきまして、添付文書、先ほど回答ございましたけれども、添付文書により漫然とした長期使用を避けることが医療現場で注意喚起されているところでございます。
今年度から厚生労働科学研究を実施してございまして、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方実態を把握しまして、適正処方を実施するための薬物療法のガイドラインに関して研究を行っておりまして、そうした医療現場からの情報収集に努めまして必要な対応を検討していきたいと考えてございます。
○片山大介君 是非それを進めてもらいたいと思うんですが、実は厚労省は二〇〇〇年から健康日本21という取組をやっているんですよね。これが、十年やった後の二〇一一年にその第一次の評価報告というのを行っているんですが、これで、眠りを助けるための睡眠薬などの睡眠補助品ですか、やアルコールを使う人の割合が悪化しているというデータが出ているんだけれども、その二年後に始まった第二次の取組の中ではこれ取り下げちゃっているんですよ、この数値目標を。だから、これはどういうことなのかなというふうに思うんですが、これは何でなんでしょうか。
○政府参考人(福島靖正君) お答えいたします。
第一次の健康日本21におきましては、休養・こころの健康づくりの指標の一つとして、睡眠の確保のために睡眠補助品やアルコールを使うことのある人の減少、これを指標として用いておりまして、策定時のデータで一四・一%だったものが、最終評価時には御指摘のように一九・五%と増加をしておりました。
この目標については、その第一次の健康日本21の最終評価の際に、睡眠薬の使用が必要な方もいることや、睡眠補助品の使用者が増えたことは睡眠補助品が入手しやすくなったことも影響している可能性があるということで、この目標の設定そのものが、目標が妥当かどうかという指摘もございました。
また、第一次の健康日本21の際には、目標とする指標が非常に多くて目標相互の関連が整理し切れていなかったということで、第二次の目標設定におきましては、実行可能性のある目標をできるだけ少ない数で設定するべきという、そういう指摘がございまして、こういう指摘を踏まえて、既存の調査で評価することが可能である、あるいは過去の疫学データの集積がある、あるいは睡眠習慣を有する個人差についても対応可能であるということを考慮して、休養の指標としては、先ほどの睡眠補助品やアルコールを使うことのある人の減少という指標ではなく、睡眠による休養を十分取れていない者の減少、これを目標として設定をしたと、そういう経緯でございます。
○片山大介君 項目が多いからといっても、データが悪化しているんだったらそれを取り下げるのはどうかなと思いますし、委員会からのそういう指摘もあったのならそれを取り下げる必要がなかったのかなというように思います。
それと、あともう一つ、診療報酬も睡眠薬の適正化に向けた減算の改定を実は三年前に行っているんですけれども、ここでもちょっと一つ気になるというか、聞きたいんですけれども、これ具体的には、睡眠薬及び抗不安薬をそれぞれ三種類以上処方した場合には減算するというような改定だったんですけれども、だから、それぞれ三種類以上ということは、二種類ずつの併用だったら可能ということになるんですけれども、ただ、この睡眠薬も抗不安薬も先ほど言ったベンゾジアゼピン系なんですよね。
それで、統制委員会から指摘されているのは、このベンゾジアゼピン系の薬が多いということで指摘をされているわけだから、何でこの診療報酬の改定でもそれぞれを分けるやり方をしたのか、これ気になっているんですが、これはどのようにお考えなんでしょうか。
○政府参考人(鈴木康裕君) 診療報酬における睡眠薬の多剤投与に対する対策についてお尋ねがございました。
御指摘のとおり、平成二十四年度の診療報酬改定で、抗不安薬又は睡眠薬を三剤以上処方した場合に、精神科継続外来支援・指導料の点数を二〇%減算するという仕組みを導入しました。この対象の薬剤若しくは剤数につきましては、専門家の御意見、それから診療現場の状況等を踏まえまして中医協で議論をして決定をしたということでございます。
御指摘は、恐らくベンゾジアゼピンについては、抗不安薬として二剤、睡眠薬として二剤処方しても、結局四剤処方しているのではないかということだと思いますが、御指摘のような内容も含めて、三十年の改定に向けまして、関係者の御意見を踏まえてしっかりと検討したいというふうに思います。
○片山大介君 それは是非やっていただきたいと思います。
例えば、現場の医師なんかに話を聞くと、抗不安薬として処方しても睡眠薬として使われているケースがあったりとか、あとは、減算しないようにあえて組み合わせて使っているようなケースもあるというのは聞いているんですよね。だから、それは改定した方がいいと思いますし、それで、実際にその三年前の改定で処方量が減っているのかどうか、これも確認をしておきたいんですが。
○政府参考人(鈴木康裕君) 効果について御質問がございました。
抗不安薬、睡眠薬の多剤処方については、先ほど申し上げましたように、二十四年の診療報酬改定で精神科継続外来支援・指導料の減算の仕組みを入れまして、二十六年改定でこれを拡大をいたしまして、処方箋料にも拡大をいたしました。
この結果でございますけれども、二十六年度に実施した調査によりますと、二十六年度改定の前後で抗不安薬を三種類以上処方された患者の割合が一・五%から一・二%、まあ二割減ったということです。それから、睡眠薬を三種類以上処方された患者の割合、これが七・六%から三・九%に、約半分になっております。一定の効果はあったのではないかというふうに思っております。
○片山大介君 では、是非その効果を更に深くするために改定していっていただきたいと思います。
それで、できる限り睡眠薬に頼らない代替策というのを今後考えていくべきなのかなというふうに思うんですが、これがアメリカの国立衛生研究所のNIHだと、睡眠薬よりも認知行動療法というものを第一、ファーストチョイスとして推奨しているんですよね。
それがどういうものかというのをちょっと二枚目の配付資料でお配りしているんですが、この療法は、認知療法と行動療法と二つに分かれていて、まず、その認知療法というのが認知のゆがみをなくしていく、要は睡眠に対する不安をカウンセリングなどによって取り除いていこうという、これが上のやり方で、下のやり方が、行動のゆがみといって、入眠時間を規則正しくするだとか、規則正しい生活によって徐々に生活のリズムを整えていくと。この上下二つのやり方を組み合わせることによって睡眠薬を減らしていこうというのが認知行動療法なんですが、これはなかなか私も聞き慣れていない言葉だったんですけれども。
じゃ、日本はどうなっているのかなというふうに思ったら、それが配付資料の三枚目の資料なんですが、これ厚労省の研究事業、研究班とそれから日本睡眠学会が作ったガイドラインなんですが、これにはその認知行動療法の記載があって、有効性は実証されている、入眠困難の改善に関しては薬物療法よりも効果が高いと考えられる、ここまで書いていて、その推奨グレードもAなんですよね。だけど、実際には余り普及していないというのがあるというふうに思うんですけれども。
まず、この認知行動療法についての評価というのは厚労省はどう考えていて、更に言えば、これなかなか普及していない、普及に当たっての課題は何だと考えているのか、これも併せてお伺いしたいんですが。
○政府参考人(堀江裕君) 睡眠障害は、心身の生理的な理由によるもの、それから今委員御指摘の仕事などによりますストレスが大きいような場合の一時的なもの、外部要因、環境によるものといろいろあるんだと思いますが、急性的なものは薬物が中心かもしれませんけれども、やはり慢性的になってきたような場合に認知行動療法を用いまして、不眠になりやすい考え方とか生活リズム、あるいは生活習慣を変化させることによりまして一定の治療効果が期待できるものだというふうに認識しているところでございまして、厚生労働科学研究の二十五年から二十七年に行いましたものにもよりますと、認知行動療法の有効性を評価するために複数の臨床試験を解析したところ、不眠症状の改善が認められたというようなことであるところでございます。
それで、普及していない理由、課題についても併せてお尋ねでございましたのでお答えさせていただきますけれども、先ほども申しましたが、我が国の従来の睡眠障害の治療においては薬物療法が中心になってきていて、認知行動療法を用いた治療というのが十分に行われてこなかったということがあって、そうした医療関係者の理解を深めていくということが課題なのではないかというふうに考えているところでございます。
○片山大介君 そうすると、今後、この認知行動療法とかをもうちょっと普及させていく必要性というか、取り組んでいくおつもりなのかどうなのか、それはどうですか。
○政府参考人(堀江裕君) 睡眠障害の治療において認知行動療法の十分な普及が進んでいないというのがあるというのをまず基本に持った上で、二十八年度から日本医療研究開発機構、AMEDにおきまして、精神障害に対する認知行動療法の普及プログラムの開発を開始しているところでございまして、厚生労働省といたしまして、厚生労働省が運営しますみんなのメンタルヘルス総合サイトというのがあるんですけど、そうしたところにこの研究成果を医療関係者に普及する。あわせまして、睡眠障害を有する方に対して、薬物療法だけではなくて、認知行動療法の活用、先ほど図でお示しいただいたようなことで、認知療法、行動療法、そうしたことで生活のリズム、生活習慣の改善が図られるように啓発していくこと、こうしたことが考えられるのではないかというふうに考えてございまして、そのように進めていきたいというふうに考えてございます。
○片山大介君 是非進めていただきたいと思います。
それで、これは単に不眠症だけというんじゃなくて、実は、これから話そうと思っているのは、ほかの病気との併発で不眠症をしている人ってすごく実は多いんですね。例えばがん患者、がんの就労支援やっていますけれども、がん患者で実は不眠を併せ持っている人ってすごく多いというふうに言われているんです。例えばアメリカの国立がん研究所だと、がん患者は不眠症のリスクが高いという報告もあったりして、実際にがん患者の八割は不眠症を併発しているというような調査結果も出ているわけなんですよね。
政府は今、一億総活躍社会を目指していますし、厚労省は治療と仕事の両立というのを進めているわけじゃないですか。そのためにも私はこの不眠症対策というのはしっかりやった方がいいと思っています。
それで、なおかつ、介護の面からいうと、今、お年寄りの睡眠障害というのが実は多くて、それは、睡眠時間が昼夜逆転しちゃって、在宅介護をしている人なんかの家族の場合は、それに付き合わされることによって自分の睡眠時間もおかしくなって、それが介護うつだとか介護疲れとかにつながっているわけなんですよね。
ですから、不眠は、そうしたあらゆることにつながっているのと、それから併発というのも持っているんですから、もっとこれをしっかり取り組んでいった方が政府が掲げる一億総活躍社会や介護離職ゼロやそうしたものにつながっていくかと思うんですが、最後に大臣、考えをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 本年三月の働き方改革実行計画におきまして、治療と仕事の両立支援というテーマをまとめておりまして、施策の充実強化を図るということとしております。具体的には、会社の意識改革と受入れ体制の整備、それから、主治医、会社・産業医、そして両立支援コーディネーター、これによるトライアングル型の支援の推進ということを取り組むこととしているわけでありまして、今お話がございましたが、治療と仕事の両立支援におきましても、例えば、がん患者の中には疼痛などの身体的な原因や抑うつなどの精神医学的な要因などによって睡眠に問題を抱えているという方も大勢おられるわけで、治療面、就労面、この両面で十分な配慮が必要だというふうに認識をしております。
厚労省としては、今後、会社向けの疾患別のサポートマニュアルというのを作る予定にしておりまして、両立支援コーディネーターの育成にも取り組むわけでございますが、御指摘の不眠症を含めて、様々な状況に対して的確な配慮やサポートがなされるように十分留意をしてまいりたいと思います。
○片山大介君 是非しっかり取り組んでいただきたいと思います。
終わります。
<後略>
○片山大介君 ありがとうございます。まさにストレスなんですよね、だから。
それで、じゃ実際に不眠症になった人への治療行為って今何しているかというと、もう基本的には睡眠薬の服用になっているんですよね。これ、具体的に言うとベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬で、これを主治医の指示の下で飲んでいくということになるんですが、ただ、この睡眠薬は、御存じのように、耐性が形成されるとか、あとは依存性が出てくるだとか、あと服用した後の記憶障害といった問題があるんですが、厚労省としては、こうした服用による影響ってどう認識していて、何か対策を取っているのかどうか、これをお伺いしたいんですが。
○政府参考人(武田俊彦君) 御指摘のとおり、医薬品でございますので、治療に有効である一方で副作用も一定の頻度で発現をいたします。
ただいま御指摘ありましたように、このベンゾジアゼピン系の睡眠薬につきましては、これまでも大量の連用により耐性が生じて依存性又は離脱症状などが発生することが知られており、添付文書で大量連用により薬物依存を生じることがあるというふうに注意喚起をしてまいりました。
最近になりまして、PMDA、医薬品医療機器総合機構の調査によりまして、承認用量の範囲の中でも連用により薬物依存が生じることが明らかになってまいりましたので、本年三月に、用量及び使用期間に注意して、漫然とした継続投与による長期使用を避けるように添付文書を改訂し、注意喚起をしているところでございます。
今後とも、必要な注意喚起を医療現場にしてまいりたいと思っております。
○片山大介君 そうなんです。それで、次に聞きたかったのが、その薬物依存についてちょっと聞きたかったんですが、その睡眠薬の処方が実は日本はほかの国に比べてとても多くなっているんです。それがまず配付資料の一枚目なんですが、これは国連機関の国際麻薬統制委員会というところが調査した二〇一〇年の調査報告書なんですが、これだと日本はベルギーに次いで多くなっているんです。それで、これ五年前ですから、今もっとこれより多くなってきているんじゃないか、これ、人口一千人当たりの処方量のデータなんですけれども。ヨーロッパはすごく抑制を始めているというので、だから、もしかしたら日本の方が抜いている可能性もあるんじゃないかというふうにも言われているんですけれども。
それで、この統制委員会が言うには、やっぱり日本は不適切な処方パターンが多いと、それから乱用が反映されているというような指摘があるんですけれども、これについて、厚労省、認識しているかどうか、お答えください。
○政府参考人(堀江裕君) 二〇一〇年の国連麻薬統制委員会の報告書におきまして、日本でのベンゾジアゼピン系薬剤の処方の仕方が不適切でございまして、その結果、アジアの他の国と比較して使用量が多くなっていると指摘しているということについては承知してございまして、日本においてベンゾジアゼピン系薬剤の使用量が多い原因は、委員御指摘ございましたように、睡眠障害の治療において従来は薬物療法が中心となってきたことが考えられ、ベンゾジアゼピン系睡眠薬などにつきまして、添付文書、先ほど回答ございましたけれども、添付文書により漫然とした長期使用を避けることが医療現場で注意喚起されているところでございます。
今年度から厚生労働科学研究を実施してございまして、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方実態を把握しまして、適正処方を実施するための薬物療法のガイドラインに関して研究を行っておりまして、そうした医療現場からの情報収集に努めまして必要な対応を検討していきたいと考えてございます。
○片山大介君 是非それを進めてもらいたいと思うんですが、実は厚労省は二〇〇〇年から健康日本21という取組をやっているんですよね。これが、十年やった後の二〇一一年にその第一次の評価報告というのを行っているんですが、これで、眠りを助けるための睡眠薬などの睡眠補助品ですか、やアルコールを使う人の割合が悪化しているというデータが出ているんだけれども、その二年後に始まった第二次の取組の中ではこれ取り下げちゃっているんですよ、この数値目標を。だから、これはどういうことなのかなというふうに思うんですが、これは何でなんでしょうか。
○政府参考人(福島靖正君) お答えいたします。
第一次の健康日本21におきましては、休養・こころの健康づくりの指標の一つとして、睡眠の確保のために睡眠補助品やアルコールを使うことのある人の減少、これを指標として用いておりまして、策定時のデータで一四・一%だったものが、最終評価時には御指摘のように一九・五%と増加をしておりました。
この目標については、その第一次の健康日本21の最終評価の際に、睡眠薬の使用が必要な方もいることや、睡眠補助品の使用者が増えたことは睡眠補助品が入手しやすくなったことも影響している可能性があるということで、この目標の設定そのものが、目標が妥当かどうかという指摘もございました。
また、第一次の健康日本21の際には、目標とする指標が非常に多くて目標相互の関連が整理し切れていなかったということで、第二次の目標設定におきましては、実行可能性のある目標をできるだけ少ない数で設定するべきという、そういう指摘がございまして、こういう指摘を踏まえて、既存の調査で評価することが可能である、あるいは過去の疫学データの集積がある、あるいは睡眠習慣を有する個人差についても対応可能であるということを考慮して、休養の指標としては、先ほどの睡眠補助品やアルコールを使うことのある人の減少という指標ではなく、睡眠による休養を十分取れていない者の減少、これを目標として設定をしたと、そういう経緯でございます。
○片山大介君 項目が多いからといっても、データが悪化しているんだったらそれを取り下げるのはどうかなと思いますし、委員会からのそういう指摘もあったのならそれを取り下げる必要がなかったのかなというように思います。
それと、あともう一つ、診療報酬も睡眠薬の適正化に向けた減算の改定を実は三年前に行っているんですけれども、ここでもちょっと一つ気になるというか、聞きたいんですけれども、これ具体的には、睡眠薬及び抗不安薬をそれぞれ三種類以上処方した場合には減算するというような改定だったんですけれども、だから、それぞれ三種類以上ということは、二種類ずつの併用だったら可能ということになるんですけれども、ただ、この睡眠薬も抗不安薬も先ほど言ったベンゾジアゼピン系なんですよね。
それで、統制委員会から指摘されているのは、このベンゾジアゼピン系の薬が多いということで指摘をされているわけだから、何でこの診療報酬の改定でもそれぞれを分けるやり方をしたのか、これ気になっているんですが、これはどのようにお考えなんでしょうか。
○政府参考人(鈴木康裕君) 診療報酬における睡眠薬の多剤投与に対する対策についてお尋ねがございました。
御指摘のとおり、平成二十四年度の診療報酬改定で、抗不安薬又は睡眠薬を三剤以上処方した場合に、精神科継続外来支援・指導料の点数を二〇%減算するという仕組みを導入しました。この対象の薬剤若しくは剤数につきましては、専門家の御意見、それから診療現場の状況等を踏まえまして中医協で議論をして決定をしたということでございます。
御指摘は、恐らくベンゾジアゼピンについては、抗不安薬として二剤、睡眠薬として二剤処方しても、結局四剤処方しているのではないかということだと思いますが、御指摘のような内容も含めて、三十年の改定に向けまして、関係者の御意見を踏まえてしっかりと検討したいというふうに思います。
○片山大介君 それは是非やっていただきたいと思います。
例えば、現場の医師なんかに話を聞くと、抗不安薬として処方しても睡眠薬として使われているケースがあったりとか、あとは、減算しないようにあえて組み合わせて使っているようなケースもあるというのは聞いているんですよね。だから、それは改定した方がいいと思いますし、それで、実際にその三年前の改定で処方量が減っているのかどうか、これも確認をしておきたいんですが。
○政府参考人(鈴木康裕君) 効果について御質問がございました。
抗不安薬、睡眠薬の多剤処方については、先ほど申し上げましたように、二十四年の診療報酬改定で精神科継続外来支援・指導料の減算の仕組みを入れまして、二十六年改定でこれを拡大をいたしまして、処方箋料にも拡大をいたしました。
この結果でございますけれども、二十六年度に実施した調査によりますと、二十六年度改定の前後で抗不安薬を三種類以上処方された患者の割合が一・五%から一・二%、まあ二割減ったということです。それから、睡眠薬を三種類以上処方された患者の割合、これが七・六%から三・九%に、約半分になっております。一定の効果はあったのではないかというふうに思っております。
○片山大介君 では、是非その効果を更に深くするために改定していっていただきたいと思います。
それで、できる限り睡眠薬に頼らない代替策というのを今後考えていくべきなのかなというふうに思うんですが、これがアメリカの国立衛生研究所のNIHだと、睡眠薬よりも認知行動療法というものを第一、ファーストチョイスとして推奨しているんですよね。
それがどういうものかというのをちょっと二枚目の配付資料でお配りしているんですが、この療法は、認知療法と行動療法と二つに分かれていて、まず、その認知療法というのが認知のゆがみをなくしていく、要は睡眠に対する不安をカウンセリングなどによって取り除いていこうという、これが上のやり方で、下のやり方が、行動のゆがみといって、入眠時間を規則正しくするだとか、規則正しい生活によって徐々に生活のリズムを整えていくと。この上下二つのやり方を組み合わせることによって睡眠薬を減らしていこうというのが認知行動療法なんですが、これはなかなか私も聞き慣れていない言葉だったんですけれども。
じゃ、日本はどうなっているのかなというふうに思ったら、それが配付資料の三枚目の資料なんですが、これ厚労省の研究事業、研究班とそれから日本睡眠学会が作ったガイドラインなんですが、これにはその認知行動療法の記載があって、有効性は実証されている、入眠困難の改善に関しては薬物療法よりも効果が高いと考えられる、ここまで書いていて、その推奨グレードもAなんですよね。だけど、実際には余り普及していないというのがあるというふうに思うんですけれども。
まず、この認知行動療法についての評価というのは厚労省はどう考えていて、更に言えば、これなかなか普及していない、普及に当たっての課題は何だと考えているのか、これも併せてお伺いしたいんですが。
○政府参考人(堀江裕君) 睡眠障害は、心身の生理的な理由によるもの、それから今委員御指摘の仕事などによりますストレスが大きいような場合の一時的なもの、外部要因、環境によるものといろいろあるんだと思いますが、急性的なものは薬物が中心かもしれませんけれども、やはり慢性的になってきたような場合に認知行動療法を用いまして、不眠になりやすい考え方とか生活リズム、あるいは生活習慣を変化させることによりまして一定の治療効果が期待できるものだというふうに認識しているところでございまして、厚生労働科学研究の二十五年から二十七年に行いましたものにもよりますと、認知行動療法の有効性を評価するために複数の臨床試験を解析したところ、不眠症状の改善が認められたというようなことであるところでございます。
それで、普及していない理由、課題についても併せてお尋ねでございましたのでお答えさせていただきますけれども、先ほども申しましたが、我が国の従来の睡眠障害の治療においては薬物療法が中心になってきていて、認知行動療法を用いた治療というのが十分に行われてこなかったということがあって、そうした医療関係者の理解を深めていくということが課題なのではないかというふうに考えているところでございます。
○片山大介君 そうすると、今後、この認知行動療法とかをもうちょっと普及させていく必要性というか、取り組んでいくおつもりなのかどうなのか、それはどうですか。
○政府参考人(堀江裕君) 睡眠障害の治療において認知行動療法の十分な普及が進んでいないというのがあるというのをまず基本に持った上で、二十八年度から日本医療研究開発機構、AMEDにおきまして、精神障害に対する認知行動療法の普及プログラムの開発を開始しているところでございまして、厚生労働省といたしまして、厚生労働省が運営しますみんなのメンタルヘルス総合サイトというのがあるんですけど、そうしたところにこの研究成果を医療関係者に普及する。あわせまして、睡眠障害を有する方に対して、薬物療法だけではなくて、認知行動療法の活用、先ほど図でお示しいただいたようなことで、認知療法、行動療法、そうしたことで生活のリズム、生活習慣の改善が図られるように啓発していくこと、こうしたことが考えられるのではないかというふうに考えてございまして、そのように進めていきたいというふうに考えてございます。
○片山大介君 是非進めていただきたいと思います。
それで、これは単に不眠症だけというんじゃなくて、実は、これから話そうと思っているのは、ほかの病気との併発で不眠症をしている人ってすごく実は多いんですね。例えばがん患者、がんの就労支援やっていますけれども、がん患者で実は不眠を併せ持っている人ってすごく多いというふうに言われているんです。例えばアメリカの国立がん研究所だと、がん患者は不眠症のリスクが高いという報告もあったりして、実際にがん患者の八割は不眠症を併発しているというような調査結果も出ているわけなんですよね。
政府は今、一億総活躍社会を目指していますし、厚労省は治療と仕事の両立というのを進めているわけじゃないですか。そのためにも私はこの不眠症対策というのはしっかりやった方がいいと思っています。
それで、なおかつ、介護の面からいうと、今、お年寄りの睡眠障害というのが実は多くて、それは、睡眠時間が昼夜逆転しちゃって、在宅介護をしている人なんかの家族の場合は、それに付き合わされることによって自分の睡眠時間もおかしくなって、それが介護うつだとか介護疲れとかにつながっているわけなんですよね。
ですから、不眠は、そうしたあらゆることにつながっているのと、それから併発というのも持っているんですから、もっとこれをしっかり取り組んでいった方が政府が掲げる一億総活躍社会や介護離職ゼロやそうしたものにつながっていくかと思うんですが、最後に大臣、考えをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(塩崎恭久君) 本年三月の働き方改革実行計画におきまして、治療と仕事の両立支援というテーマをまとめておりまして、施策の充実強化を図るということとしております。具体的には、会社の意識改革と受入れ体制の整備、それから、主治医、会社・産業医、そして両立支援コーディネーター、これによるトライアングル型の支援の推進ということを取り組むこととしているわけでありまして、今お話がございましたが、治療と仕事の両立支援におきましても、例えば、がん患者の中には疼痛などの身体的な原因や抑うつなどの精神医学的な要因などによって睡眠に問題を抱えているという方も大勢おられるわけで、治療面、就労面、この両面で十分な配慮が必要だというふうに認識をしております。
厚労省としては、今後、会社向けの疾患別のサポートマニュアルというのを作る予定にしておりまして、両立支援コーディネーターの育成にも取り組むわけでございますが、御指摘の不眠症を含めて、様々な状況に対して的確な配慮やサポートがなされるように十分留意をしてまいりたいと思います。
○片山大介君 是非しっかり取り組んでいただきたいと思います。
終わります。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/193/0062/19306080062023a.html
衆議院
第181回国会 厚生労働委員会 第2号
平成二十四年十一月七日(水曜日)
<前略>
○柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。
三井大臣、御就任おめでとうございます。
覚えていらっしゃると思いますけれども、私、数年前、都議会議員のころに、三井大臣に一つの案件を持ち込んだことがあります。精神科、心療内科における向精神薬の処方に関する問題です。
当時、抗うつ剤として処方されていたリタリンについて、塩酸メチルフェニデートを成分として中枢神経興奮作用を持つ、要するに覚醒剤と同じものだという ことで、精神科や心療内科に通ってリタリンの処方を受けて、大量に服用して薬物依存に陥り、自殺や他害に及ぶ事例が相次いでいる、精神科受診でかえって薬 物依存者を生み出している、こういう現状を何とかすべきだ、こういうふうに訴えました。
欲しがる患者に大量のリタリンをばらまく、インターネットではリタリン販売所と呼ばれていた特に悪質な新宿区のクリニックの存在、これを都議会で指摘さ せていただいて、それを受けて東京都の立入調査が入るなどした結果、この問題に対する批判が高まって、リタリンの適用からうつが外されて、容易に入手でき ない、こういう薬になりました。あのとき、たしか民主党の部会にお邪魔したんだと思いますけれども、櫻井副大臣も御同席されていたかというふうに思いま す。
これをきっかけに、私は、日本の精神医療に内在する問題について大変強い問題意識を持つようになりました。
精神科、心療内科等において単剤処方が主流となる中で、日本では世界的に見て特異なまでの多剤大量処方が行われてきた、このように言われています。私が 見た中では、一どきに十二種類もの向精神薬を二週間分ずつ、つまり、十二種類、一日三十四錠ずつ長期にわたって処方し続けている。これは調剤明細書がイン ターネット上で公開されているんですけれども、こういうものもありました。これは本当に異常な量だというふうに思います。
日本の精神医療における薬物処方の多さは数字でも裏づけられつつありまして、例えば、抗不安薬や睡眠薬として使われるベンゾジアゼピン系の薬剤、これは 長期に服用すると適量でも依存症状を来すと言われているものですけれども、国連の国際麻薬統制委員会の二〇一〇年の報告では、日本ではこのベンゾジアゼピ ン系の薬剤使用量がアメリカの六倍も多いということが報告、指摘されています。
一昨年、二〇一〇年八月三日の厚生労働委員会において、自殺・うつ病等対策プロジェクトチームを省内に立ち上げて取り組んでおられる長妻厚労大臣に対し て、この問題について質問をさせていただきました。そして、添付文書や適正量を踏み外したこのような多剤大量処方は、支払い審査機関におけるレセプト チェックを強化することで排除できるはずではないかということを申し上げました。
その結果もあり、「過量服薬への取組」というのがまとめられて、向精神薬の処方に関する実態調査というものが行われて、一回の処方で抗不安薬または睡眠 薬が三種類以上処方されている場合には、その必要性について十分な考慮が求められる、こういう趣旨の注意喚起が支払い審査機関に対してもなされることとな りました。これまで問題そのものの存在がほとんど認められてこなかったということと比べると、大変大きな前進だというふうに思っています。
しかし、一方で、注意喚起は注意喚起にすぎないわけでありまして、実効が上がらなければ、これは意味がありません。しかも、同時に、向精神薬の処方に関 する実態調査の報告では、レセプトを調べたところ、三種類以上のいわゆる多剤処方は、抗不安薬で一・九%、睡眠薬で六・一%にすぎなかったとも言ってい る。それほど問題はなかったと言っているようにもこれは聞こえるわけであります。
三井厚労大臣にまずお聞きしたいと思うんですけれども、向精神薬の日本における処方のあり方について、現状はいかがだというふうに考えているか。おおむ ね適正に処方が行われているというふうに考えているのか、お伺いをしたい。また、この問題について厚労省がどのような取り組みを行ってきたのか、あわせて お伺いをしたいというふうに思います。
○三井国務大臣 柿澤先生が都議会議員のときにいらしたことは、鮮明に記憶しております。
今まさにお話がございましたように、向精神薬の大量処方については、これは私も大変問題ありと思っております。処方の状況を調べた調査結果によりますと、一部の患者で、多種類の薬剤が処方されているケースもたくさんございました。
しかし、九割以上のケースで二種類以下の処方でありましたし、また、多種類の薬剤を処方されていても、患者の病状等により必要な場合もあると思いますし、一概に不適切とは言えないとも考えております。
そこで、厚生労働省といたしましては、引き続き、医師や薬剤師に対して向精神薬に関する研修を行ったり、あるいは治療ガイドラインを作成するなどいたしまして、向精神薬の適切な処方を推進するための取り組みを現在行っているところでございます。
○柿澤委員 九割は適正であったし、また、多剤処方といっても、患者の状況によってはこれは不適切とも言えない場合がある、こういうお話 で、それはそうだろうなというふうにも思うわけですけれども、こうした取り組みが進められて、はて、実態が本当に変わってきているのかどうかということに ついて、いささか疑問を抱かせるような事例を最近お聞きしましたので、お話をさせていただきたいと思います。
これはことしの話です。幻聴が聞こえるということで精神科を受診したというんですね。女性です。統合失調症ということで診断をされて、なかなか効かない ということで薬を変えたりして治療を続けていた結果、一時は四種類の効果の異なる向精神薬を一日当たり十六錠処方され、しかも、精神を鎮静化する薬を二種 類と、その副作用をおさめるためとして、精神の働きを不活発にするアセチルコリンを抑える薬、いわば、落ちつかせる薬と、どちらかといえば精神を上げる 薬、同時に処方されるということになっていました。
その結果どうなったか。呼吸が荒くなって行動が抑えられなくなり、奇声を発し、ばたっと倒れる、最終的には、救急で運ばれた病院でこれは薬が多過ぎますよということを言われて、今は自宅で減薬、断薬に取り組んでいる、こういうことだそうであります。
これは、最も多いときは、CP換算、クロルプロマジン換算ですね、向精神薬の量をはかる一般的な指標ですけれども、このCP換算で七百五十ミリグラムの 向精神薬を処方されていたというんです。錐体外路症状という筋緊張低下の症状があらわれるのが六百ミリグラム、どんなに多くても八百ミリグラムが限界と言 われている中で、七百五十ミリグラムです。
このような処方がやはり行われているんです。これは適正なものだというふうに思われるでしょうか。御答弁お願いします。
○櫻井副大臣 現場で治療している人間の立場でちょっとお話をさせていただきたいと思います。
私も、これは兼業禁止ですので誤解のないように申し上げますが、患者さんの御了解をいただいて今月で私は診療をやめますけれども、その中で、やはり、向 精神薬を相当複数飲まれて私のところに来られた方もいらっしゃいます。千鳥足状態で、びっくりしたのは車を運転してきたということでして、もう二度と車を 運転しないようにということをお願いいたしました。
私がやったのは、減量を少しずつ行っていって、普通に歩けるようになり、ただし、必要だったのは何かというと、カウンセリングをきちんとやらなければい けないということなんです。残念ながら、しかし、カウンセリングを行うとなると、診療報酬点数上、とてもじゃないけれども病院経営が成り立たないという状 況も、これまたしかりなんです。
済みませんが、若干長くなって恐縮ですが、今、認知行動療法を行って幾らかというと、三十分以上カウンセリングをやって、やっと我々心療内科医は四千二 百円の病院の収入になります。これは患者負担ではありません。これにプラス再診料です。ですから、一時間診療して約一万円程度の収入しかない。ですから、 勢い薬物療法に頼らざるを得ないような状況になってきていることも、これは紛れもない事実でございます。
ですから、治療者側からしてみると、今度は、薬を投じてみたけれども症状が改善しないので、そうするとまた今ある症状を抑え込まなければいけないという ことがあって、これで薬で治療してくるというような形で診療されている先生方も随分いっぱいいらっしゃいます。ですから、これを不適切な診療と言ってくる のかどうかというのは、個々の症例で見てみない限りはなかなか難しいところがあるのではないかと思っているんです。
逆の例を御紹介したいと思いますが、私は基本的に余り薬を使うのは好みではありませんで、この人は、診療が終わって、過食症の治療も終わって、現在働い ております。今は別な地域で働いていて、ぐあいが悪くなって向精神薬を結局は処方されて、本人はこう言っていましたが、私の考えは何も変わっていないんだ けれども薬を飲んで非常によくなった、こういう例もございます。
ですから、全てのものが、現場でやっていて全てが悪ではないし、それから効果のあるものもある、ただし、ここのところについてはさまざまな複合的な要因がある。
それからもう一つは、日本の精神医療というんでしょうか、診療内科も含めてですが、もう少し本質的なところから考えてこないと、今の先生が御指摘、これは本当に大事な問題だと思いますが、根本的に解決できない点があるのではないかというふうに思っております。
○梅村大臣政務官 今、クロルプロマジン換算で七百五十ミリが適正かどうかという御質問ですが、このクロルプロマジンの精神科領域における 承認用法、用量は、一日五十ミリから四百五十ミリグラムです。年齢、症状により適宜増減ということにされていますから、この数字と単純に比べて多いか少な いかという判断でいえば、多いというカテゴリーに入ります。
ただ、今副大臣からもお話ありましたように、これは個別のさまざまな関係がありますから、場合によってはこれを上回る処方をすることもあり得るというこ とですから、この数字との大小を比べれば多いんですけれども、適正かどうかということについては、これは一概には判断できないものと思っております。個別 の事案だと思います。
○柿澤委員 櫻井副大臣には、数年前にお伺いをした際に非常に似たお話をいただいて、また、きょうの議論の、何となく結論というかコンク ルージョンをいただいてしまったような感じもするんですけれども、しかし、本当に根深い問題だという認識を共有できたことは大きい。しかも、その方が厚生 労働省で今副大臣をやっているということは大変大きなことだというふうに思います。
さて、精神科受診者は三百万超というふうに推計されていまして、うつ病患者は、一九九九年の二十四万人から、二〇〇八年には七十万人台、それに伴い、同 じ期間に、精神科や心療内科は二・四倍、開業数がふえています。そして、年間の自殺者数は、皆さん御存じのとおり、十四年間続けて三万人台ということに なっているわけです。そんな中で、二〇一三年、来年には、精神保健福祉法の改正が予定をされている。
心の健康の問題は、間違いなく重要な政策課題であり、また、精神医療も含めて適切に対処されなければいけないというふうに思いますが、早期介入、早期発 見、早期治療、こう言われるように、早い段階での精神科受診を促していくことでこの問題を解決できるのか、精神科、心療内科等で行われている治療の実態も 見ながら、私は、慎重に見ていかなければならない、こういう側面もあるのではないかというふうに思っております。
繰り返し申し上げますが、先ほど櫻井副大臣もおっしゃったように、私は、適切な治療を受けることの重要性そのものを否定しているものではありません。こ のタイミングでこういう質問を投げかけようと思ったのは、もちろん、三井大臣、櫻井福大臣が御就任されたということもあるんですけれども、もう一つ、子供 に対する向精神薬の処方のあり方が問題になりつつあるからです。
ことし六月、ごらんになった方もいらっしゃると思いますが、NHKの「クローズアップ現代」で、「薬漬けになりたくない 向精神薬をのむ子ども」というのが放送されました。そこで放送されたのは、これは衝撃的とも言える実態でありました。
発達障害という症状のある子供への向精神薬の処方が行われている。中枢神経の興奮を抑える抗精神病薬を三歳、四歳から処方していたという医師。睡眠障害 を抑える向精神薬を一歳から二歳で投与した医師。小二で、学校で落ちつかないということで精神科の受診を勧められて向精神薬を投与され、だんだんだんだん 能面のように表情をなくしていって、そして重い副作用に陥っていった、こういうケースもこの番組で放送されていました。
精神及び行動の障害ということで精神科を受診している未成年の患者数は、平成二十年の調査で約十五万人、十年前に比べて倍増しています。不登校のような学校に通えない子供の実に七割が精神科を受診し、さらに、その七割が向精神薬を服用している、こういう数字もあります。
国立精神・神経医療研究センターの中川栄二医師がこの番組でおっしゃられていましたが、向精神薬が子供の脳に与える影響は、長期的には全く解明されていない、慎重な投薬が必要なのではないか、こういうふうにおっしゃっていました。
つい最近、十月も、岐阜県で日本脳炎ワクチンの予防接種を受けた十歳の男の子が急死した、こういう事例が起きました。この男の子が、発達障害と診断をさ れて、児童精神科から、自閉症の薬ピモジドと、抗うつ剤の塩酸セルトラリン、併用が禁忌されている薬を同時に処方されていたということがわかりました。こ れら二つを同時服用すると不整脈等により死に至る危険性がある、もちろん因果関係はわかりませんけれども、こういうことが添付文書に書いてあるということ であります。それに加えて、抗精神病薬のアリピプラゾール、同時に三種類処方されていました。
この塩酸セルトラリンとアリピプラゾールというのは、小児への使用が承認されていない向精神薬でもあります。これについて、処方した児童精神科医は、報 道に対して、少量なら安全だと思った、こういうふうに語っているというわけであります。こうした現状が、今回、日本脳炎の接種を受けた直後の男児の死亡例 ということに付随して明らかになりました。
問題は、子供への向精神薬の処方の実態そのものもそもそも明らかではない、また、その処方がいかにあるべきかということについてのガイドラインも存在し ていない、こういう現状にあるのではないかと思います。そういった点で、私は、こうした子供への向精神薬の投与が進んでいる、そして、今回のような、これ は因果関係は本当にわかりませんけれども、ちょっと私から見れば、はっきり言えば、この投薬が行き過ぎだったかは、因果関係を抜きにしても疑問だと思いま す、こうした事例も報じられている。
こうした中で、やはり子供への向精神薬の処方実態について調査を行ってみる必要があるのではないかというふうに思います。御見解をお尋ね申し上げたいと思います。
○梅村大臣政務官 今、調査とガイドラインというお話をいただきましたが、現時点では、児童青年期の精神疾患について、その診断、治療の標準化を図るためのガイドラインの作成に関する調査研究というのを行ってきております。
この調査研究というのは、統合失調症あるいは気分障害などの診断、治療の標準化等についての研究を行っています。精神療法や薬物療法を含めた全体的な診断、治療法の確立というものを目指しているわけであります。
一方、先生が今おっしゃいましたような薬物療法に特化した調査というのは、現時点で行っておりません。したがいまして、これは専門家の方の御意見もしっ かり聞きながら、全体としてどのように対応が可能なのか、そのことについては検討していきたい、このように思っております。
○柿澤委員 突っ込むようですけれども、全体としてどのようなことが可能なのか考えていきたいというのは、どういう意味ですか。(発言する者あり)
○梅村大臣政務官 今、薬物に特化した御質問をいただきましたので、処方の実態の、そういうことも含めた、要は精神科領域の治療法でありま すとか、これは薬物だけではありません、精神療法も入ってまいりますから、そういったもの全体を含めた対応について検討していきたい、そういう話でござい ます。
○柿澤委員 委員の方からも、これは調べるべきだよという声が飛んでいる中でありますので、そこにはやはり処方実態の調査も含まれるというふうに理解をしていいでしょうか、しつこいですけれども。
○櫻井副大臣 まず必要なことは一体何かというと、患者さんの分析なんだと思っているんです。要するに、必ずしも私は正しく診断されていない場合があるのではないのかと。
つまり、基礎疾患があって、例えば、今出ていました統合失調症のような病気があって学校に行けなくなっているような人たちがどの程度いるのかどうかから 始まって、それから、家族関係の悪化によって悩みを抱えていて学校に来られなくなるとか、それから、物の考え方が、前向き、後ろ向きという表現がいいかど うかわかりませんが、そういうことでなかなか学校に行けなくなっているような子とか。
実際のことを言いますと、不登校といっても随分原因が違ってきております。その原因がまずきちんとはっきりした上で、次のステップとしてどういう治療を 行ってくるのかということをやっていかないと、これはなかなか解決しない問題だと思っているんです。そのことを、現場でずっと治療をさせていただいてい て、こういうプログラムをきちんとつくっていかないと、つまり、箱だけつくっても、ソフトがきちんとなっていかないと、今先生が御懸念されているような問 題は解決していかないものだと思っているんです。
ですから、そういう意味で、今は治療の方のお話がございましたが、治療の前に、まず今のようなことについてきちんと精査し、そして、今後、治療の全体的 なあり方、薬だけではなくてカウンセリングも含め、しかもそのカウンセリングというのは、患者さん本人だけではなくて家族全体を含めてどういうふうな形で やっていくのかとか、そういうことをこれから調査もしなければいけないと思っていますし、それから、こういったことについての手当て、措置をどうするのか という研究もしていかなければいけないのではないか。
済みませんが、これは現場で携わっている人間としての個人的な感想もございますが、私はそう感じているところでございます。
○柿澤委員 お二人の御答弁をぜひ信頼して、これからの取り組みを期待したいというふうに思います。
昨年の二月に、私、実は、今までは報道されていた、こんなことが報じられていたという話だったんですけれども、直接御家族からお話を聞く機会がありました。
十五歳の娘さんを持っているお母さんですけれども、娘がADHDということで診断をされて、病院に行ったら即入院してくださいと言われた。九カ月後退院 をしたんですけれども、その時点で、さっきのCP換算でいうと二千三百ミリグラムという異常な量の向精神薬を処方されていたというんですね。
同じ会に集まられていた親御さんで、やはり子供がCP換算二千ミリグラム、こういう多剤大量処方を受けて副作用と離脱症状に悩まされた、こういう方々が実は何人も集まっていました。
子供の状況を説明していただきましたが、ちょっと皆さんが聞いても胸が痛むような表現になりますけれども、目はうつろ、よだれを流して、廃人同然だっ た。それをお医者さんは、この子は薬の効かないタイプの子ですといって電気ショックを与える、こういうことをやっていた。これはおかしいといって家に連れ て帰って、減薬、断薬に取り組んだけれども、治りかけても離脱症状で、真冬に水風呂に飛び込んで、裸で外に飛び出して、女の子ですよ、壁に頭を打ちつけ て、血だらけで近所に飛び込んで、警察を呼んでください、こういうふうに叫ぶ、こういうことが完全に抜けるまで七年かかったということでした。
実は、こうした事例に共通をしているのは、学校の担任の先生や養護教諭の勧めで精神科を受診している。つまり、学校が窓口になっていることなんです。し かも、向精神薬の服用で一旦問題行動が落ちついたりもしますので、意欲の低下や身体の硬直、認知機能の低下等、重い副作用があらわれても、学校の側は、落 ちついていますから、これは副作用じゃないかと思うと家族が訴えても、できたらこのままの状態を維持してほしい、こういうふうに学校から頼まれるケースも あるんだそうです。
不登校の子供が、例えば学校の養護教諭や保健室経由で精神科を受診し、処方された向精神薬等の副作用等で心身に重大な変調を来していく、こういう事例について今まで調べたケース、把握したケースがあれば教えてください。
○梅村大臣政務官 御指摘のような形の調査というのは、これは事例としては行っておりません。
今お話をお聞かせいただくと、本来、建前上は、これは副作用という扱いで情報が上がってくるという形なんでしょうが、さっきの答弁ともつながりますけれ ども、どういう形でこれに取り組んでいかなければいけないのかということについては、考えさせていただきたいと思います。
○柿澤委員 一方で、児童養護施設においても、早期投薬によって症状を落ちつかせるかわりに向精神薬の重い副作用に陥る、こういう事例が見られるということであります。
これは読売新聞の連載記事の精神医療ルネサンスで紹介されているケースですけれども、四国地方の児童養護施設に入所した兄弟が、入所後たった二週間で、 行ってみたら、中学二年の兄がよだれを垂らし、また、小学六年の弟が失禁でズボンをぬらしていた。明らかに向精神薬の副作用で、面会に行った精神科医が、 余りの変わりように愕然としたというのが報告をされています。
この精神科医の方と私もちょっと直接話す機会がありましたが、児童養護施設において、こういう問題行動を抑えるために精神科の方の処方に従って向精神薬を投与する、こういうケースは結構あるんだそうです。
こうしたことを行うことによって、かえって深刻な心の傷跡を子供に残して、子供の人生を台なしにしてしまう、こうしたことが児童養護施設でも起こってい るんではないかというふうに思えますけれども、児童養護施設における処方の実態については、何か皆さん調べたことはあるでしょうか。
○梅村大臣政務官 児童養護施設に特化した実態調査というのは行っておりません。
これは御参考までというか、児童思春期の患者さん一般についてのデータを少し御紹介したいと思うんですが、これは発達障害を専門に診療する医師に対する 使用薬剤に関するアンケートなんですけれども、この中で、薬物療法を行っている医師が七割です。その医師が使っている薬剤としては、向精神薬のリスペリド ン、あるいはピモジド、それからADHD治療薬のメチルフェニデート、抗てんかん薬、睡眠薬であった、こういう報告はございます。
○柿澤委員 長々いろいろと具体的な事例を紹介してきましたが、何が言いたいかというと、早期発見、早期治療というこれまでの目指してきた 方向性が、本当に、心の病気の傾向を発症している、こうした子供も含めた人々を救うことになるのかどうか、そうならなければいけないけれども、現状の精神 医療は本当にその方向性に合致しているのかどうかということを感じてしまうからであります。
日本は自殺者三万人の、世界最悪の自殺大国だ、こういうふうに言われる一方で、自殺の原因の一つとされるうつ病等の精神疾患は早期受診、早期治療で治せ る、うつ病は薬で治る等々、喧伝されてきました。しかし、一方で、精神科や心療内科で処方される向精神薬の多剤大量の服用が自殺を引き起こす原因にもなっ ているのではないか、こういう研究結果も出てきています。
きょうは資料でお配りさせていただきましたが、これは一昨年の八月に長妻大臣に御質問させていただいたときのデータで、三百十七例の薬物関連の自殺のうち、二百八十九例までが、やはり処方薬の成分が検出をされているというケースであります。
いずれにしても、こうしたことを踏まえて、裏面を見ていただくと、厚生労働省も、向精神薬の過量服薬によって自殺が引き起こされている可能性があるとい うことを注意喚起しています。本当にこういう中で早期発見、早期治療というのが、心の病を、ある意味では日本全体で取り組んでいく上での有用なアプローチ と言えるのかどうか、最後にぜひ厚生労働大臣の御見解を伺って、終わりたいと思います。
○櫻井副大臣 大臣の前に一言だけ。
例えば、不登校の子供さんでいうと、不登校ぎみのところで来ていただければ本当に早く治ります。ですから、私は、早期発見して、そしてもう一つ、先生の言葉どおり申し上げれば、適切な治療を行っていくのであれば、これは間違いなく有効だ、そう思っております。
今の対応の仕方が果たして適切だったのかどうかという検証は、これから、今政務官もお答えしておりましたが、検討していく必要性があるのではないのか、そう思います。
それから、例えば今度、がん対策で、がんの心のケア対策を行いますが、がんと診断された後に、これは外国の文献ですが、自殺の割合が十二・六倍にふえる というふうにも言われております。直後一週間です。ですから、そういう点でいうと、何かのことがあった際に早期に介入していくということは、私は有効では ないのかというふうに感じます。
○三井国務大臣 うつ病に起因する自殺予防対策といたしましては、早期介入、それから今先生がおっしゃいました早期発見、早期治療のアプローチは大変有用と考えておりますし、そのためには、やはり適正な精神医療が行われることが必要だと思っております。
また、早期治療を適切に行うためには、やはり医師の診断それから治療能力の向上に向けた研修等を充実させていきたい、このように考えております。
○柿澤委員 時間も来ましたので終わりますが、大変バランスのとれた、よい御答弁をいただいたというふうに思います。このラインナップであ れば、この野田内閣がちょっと長く続いてほしいなというような感じも持ちましたけれども、そうばかりも言ってはいられませんが、質問は終わらせていただき ます。
ありがとうございます。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/181/0097/18111070097002a.html
第181回国会 厚生労働委員会 第2号
平成二十四年十一月七日(水曜日)
<前略>
○柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。
三井大臣、御就任おめでとうございます。
覚えていらっしゃると思いますけれども、私、数年前、都議会議員のころに、三井大臣に一つの案件を持ち込んだことがあります。精神科、心療内科における向精神薬の処方に関する問題です。
当時、抗うつ剤として処方されていたリタリンについて、塩酸メチルフェニデートを成分として中枢神経興奮作用を持つ、要するに覚醒剤と同じものだという ことで、精神科や心療内科に通ってリタリンの処方を受けて、大量に服用して薬物依存に陥り、自殺や他害に及ぶ事例が相次いでいる、精神科受診でかえって薬 物依存者を生み出している、こういう現状を何とかすべきだ、こういうふうに訴えました。
欲しがる患者に大量のリタリンをばらまく、インターネットではリタリン販売所と呼ばれていた特に悪質な新宿区のクリニックの存在、これを都議会で指摘さ せていただいて、それを受けて東京都の立入調査が入るなどした結果、この問題に対する批判が高まって、リタリンの適用からうつが外されて、容易に入手でき ない、こういう薬になりました。あのとき、たしか民主党の部会にお邪魔したんだと思いますけれども、櫻井副大臣も御同席されていたかというふうに思いま す。
これをきっかけに、私は、日本の精神医療に内在する問題について大変強い問題意識を持つようになりました。
精神科、心療内科等において単剤処方が主流となる中で、日本では世界的に見て特異なまでの多剤大量処方が行われてきた、このように言われています。私が 見た中では、一どきに十二種類もの向精神薬を二週間分ずつ、つまり、十二種類、一日三十四錠ずつ長期にわたって処方し続けている。これは調剤明細書がイン ターネット上で公開されているんですけれども、こういうものもありました。これは本当に異常な量だというふうに思います。
日本の精神医療における薬物処方の多さは数字でも裏づけられつつありまして、例えば、抗不安薬や睡眠薬として使われるベンゾジアゼピン系の薬剤、これは 長期に服用すると適量でも依存症状を来すと言われているものですけれども、国連の国際麻薬統制委員会の二〇一〇年の報告では、日本ではこのベンゾジアゼピ ン系の薬剤使用量がアメリカの六倍も多いということが報告、指摘されています。
一昨年、二〇一〇年八月三日の厚生労働委員会において、自殺・うつ病等対策プロジェクトチームを省内に立ち上げて取り組んでおられる長妻厚労大臣に対し て、この問題について質問をさせていただきました。そして、添付文書や適正量を踏み外したこのような多剤大量処方は、支払い審査機関におけるレセプト チェックを強化することで排除できるはずではないかということを申し上げました。
その結果もあり、「過量服薬への取組」というのがまとめられて、向精神薬の処方に関する実態調査というものが行われて、一回の処方で抗不安薬または睡眠 薬が三種類以上処方されている場合には、その必要性について十分な考慮が求められる、こういう趣旨の注意喚起が支払い審査機関に対してもなされることとな りました。これまで問題そのものの存在がほとんど認められてこなかったということと比べると、大変大きな前進だというふうに思っています。
しかし、一方で、注意喚起は注意喚起にすぎないわけでありまして、実効が上がらなければ、これは意味がありません。しかも、同時に、向精神薬の処方に関 する実態調査の報告では、レセプトを調べたところ、三種類以上のいわゆる多剤処方は、抗不安薬で一・九%、睡眠薬で六・一%にすぎなかったとも言ってい る。それほど問題はなかったと言っているようにもこれは聞こえるわけであります。
三井厚労大臣にまずお聞きしたいと思うんですけれども、向精神薬の日本における処方のあり方について、現状はいかがだというふうに考えているか。おおむ ね適正に処方が行われているというふうに考えているのか、お伺いをしたい。また、この問題について厚労省がどのような取り組みを行ってきたのか、あわせて お伺いをしたいというふうに思います。
○三井国務大臣 柿澤先生が都議会議員のときにいらしたことは、鮮明に記憶しております。
今まさにお話がございましたように、向精神薬の大量処方については、これは私も大変問題ありと思っております。処方の状況を調べた調査結果によりますと、一部の患者で、多種類の薬剤が処方されているケースもたくさんございました。
しかし、九割以上のケースで二種類以下の処方でありましたし、また、多種類の薬剤を処方されていても、患者の病状等により必要な場合もあると思いますし、一概に不適切とは言えないとも考えております。
そこで、厚生労働省といたしましては、引き続き、医師や薬剤師に対して向精神薬に関する研修を行ったり、あるいは治療ガイドラインを作成するなどいたしまして、向精神薬の適切な処方を推進するための取り組みを現在行っているところでございます。
○柿澤委員 九割は適正であったし、また、多剤処方といっても、患者の状況によってはこれは不適切とも言えない場合がある、こういうお話 で、それはそうだろうなというふうにも思うわけですけれども、こうした取り組みが進められて、はて、実態が本当に変わってきているのかどうかということに ついて、いささか疑問を抱かせるような事例を最近お聞きしましたので、お話をさせていただきたいと思います。
これはことしの話です。幻聴が聞こえるということで精神科を受診したというんですね。女性です。統合失調症ということで診断をされて、なかなか効かない ということで薬を変えたりして治療を続けていた結果、一時は四種類の効果の異なる向精神薬を一日当たり十六錠処方され、しかも、精神を鎮静化する薬を二種 類と、その副作用をおさめるためとして、精神の働きを不活発にするアセチルコリンを抑える薬、いわば、落ちつかせる薬と、どちらかといえば精神を上げる 薬、同時に処方されるということになっていました。
その結果どうなったか。呼吸が荒くなって行動が抑えられなくなり、奇声を発し、ばたっと倒れる、最終的には、救急で運ばれた病院でこれは薬が多過ぎますよということを言われて、今は自宅で減薬、断薬に取り組んでいる、こういうことだそうであります。
これは、最も多いときは、CP換算、クロルプロマジン換算ですね、向精神薬の量をはかる一般的な指標ですけれども、このCP換算で七百五十ミリグラムの 向精神薬を処方されていたというんです。錐体外路症状という筋緊張低下の症状があらわれるのが六百ミリグラム、どんなに多くても八百ミリグラムが限界と言 われている中で、七百五十ミリグラムです。
このような処方がやはり行われているんです。これは適正なものだというふうに思われるでしょうか。御答弁お願いします。
○櫻井副大臣 現場で治療している人間の立場でちょっとお話をさせていただきたいと思います。
私も、これは兼業禁止ですので誤解のないように申し上げますが、患者さんの御了解をいただいて今月で私は診療をやめますけれども、その中で、やはり、向 精神薬を相当複数飲まれて私のところに来られた方もいらっしゃいます。千鳥足状態で、びっくりしたのは車を運転してきたということでして、もう二度と車を 運転しないようにということをお願いいたしました。
私がやったのは、減量を少しずつ行っていって、普通に歩けるようになり、ただし、必要だったのは何かというと、カウンセリングをきちんとやらなければい けないということなんです。残念ながら、しかし、カウンセリングを行うとなると、診療報酬点数上、とてもじゃないけれども病院経営が成り立たないという状 況も、これまたしかりなんです。
済みませんが、若干長くなって恐縮ですが、今、認知行動療法を行って幾らかというと、三十分以上カウンセリングをやって、やっと我々心療内科医は四千二 百円の病院の収入になります。これは患者負担ではありません。これにプラス再診料です。ですから、一時間診療して約一万円程度の収入しかない。ですから、 勢い薬物療法に頼らざるを得ないような状況になってきていることも、これは紛れもない事実でございます。
ですから、治療者側からしてみると、今度は、薬を投じてみたけれども症状が改善しないので、そうするとまた今ある症状を抑え込まなければいけないという ことがあって、これで薬で治療してくるというような形で診療されている先生方も随分いっぱいいらっしゃいます。ですから、これを不適切な診療と言ってくる のかどうかというのは、個々の症例で見てみない限りはなかなか難しいところがあるのではないかと思っているんです。
逆の例を御紹介したいと思いますが、私は基本的に余り薬を使うのは好みではありませんで、この人は、診療が終わって、過食症の治療も終わって、現在働い ております。今は別な地域で働いていて、ぐあいが悪くなって向精神薬を結局は処方されて、本人はこう言っていましたが、私の考えは何も変わっていないんだ けれども薬を飲んで非常によくなった、こういう例もございます。
ですから、全てのものが、現場でやっていて全てが悪ではないし、それから効果のあるものもある、ただし、ここのところについてはさまざまな複合的な要因がある。
それからもう一つは、日本の精神医療というんでしょうか、診療内科も含めてですが、もう少し本質的なところから考えてこないと、今の先生が御指摘、これは本当に大事な問題だと思いますが、根本的に解決できない点があるのではないかというふうに思っております。
○梅村大臣政務官 今、クロルプロマジン換算で七百五十ミリが適正かどうかという御質問ですが、このクロルプロマジンの精神科領域における 承認用法、用量は、一日五十ミリから四百五十ミリグラムです。年齢、症状により適宜増減ということにされていますから、この数字と単純に比べて多いか少な いかという判断でいえば、多いというカテゴリーに入ります。
ただ、今副大臣からもお話ありましたように、これは個別のさまざまな関係がありますから、場合によってはこれを上回る処方をすることもあり得るというこ とですから、この数字との大小を比べれば多いんですけれども、適正かどうかということについては、これは一概には判断できないものと思っております。個別 の事案だと思います。
○柿澤委員 櫻井副大臣には、数年前にお伺いをした際に非常に似たお話をいただいて、また、きょうの議論の、何となく結論というかコンク ルージョンをいただいてしまったような感じもするんですけれども、しかし、本当に根深い問題だという認識を共有できたことは大きい。しかも、その方が厚生 労働省で今副大臣をやっているということは大変大きなことだというふうに思います。
さて、精神科受診者は三百万超というふうに推計されていまして、うつ病患者は、一九九九年の二十四万人から、二〇〇八年には七十万人台、それに伴い、同 じ期間に、精神科や心療内科は二・四倍、開業数がふえています。そして、年間の自殺者数は、皆さん御存じのとおり、十四年間続けて三万人台ということに なっているわけです。そんな中で、二〇一三年、来年には、精神保健福祉法の改正が予定をされている。
心の健康の問題は、間違いなく重要な政策課題であり、また、精神医療も含めて適切に対処されなければいけないというふうに思いますが、早期介入、早期発 見、早期治療、こう言われるように、早い段階での精神科受診を促していくことでこの問題を解決できるのか、精神科、心療内科等で行われている治療の実態も 見ながら、私は、慎重に見ていかなければならない、こういう側面もあるのではないかというふうに思っております。
繰り返し申し上げますが、先ほど櫻井副大臣もおっしゃったように、私は、適切な治療を受けることの重要性そのものを否定しているものではありません。こ のタイミングでこういう質問を投げかけようと思ったのは、もちろん、三井大臣、櫻井福大臣が御就任されたということもあるんですけれども、もう一つ、子供 に対する向精神薬の処方のあり方が問題になりつつあるからです。
ことし六月、ごらんになった方もいらっしゃると思いますが、NHKの「クローズアップ現代」で、「薬漬けになりたくない 向精神薬をのむ子ども」というのが放送されました。そこで放送されたのは、これは衝撃的とも言える実態でありました。
発達障害という症状のある子供への向精神薬の処方が行われている。中枢神経の興奮を抑える抗精神病薬を三歳、四歳から処方していたという医師。睡眠障害 を抑える向精神薬を一歳から二歳で投与した医師。小二で、学校で落ちつかないということで精神科の受診を勧められて向精神薬を投与され、だんだんだんだん 能面のように表情をなくしていって、そして重い副作用に陥っていった、こういうケースもこの番組で放送されていました。
精神及び行動の障害ということで精神科を受診している未成年の患者数は、平成二十年の調査で約十五万人、十年前に比べて倍増しています。不登校のような学校に通えない子供の実に七割が精神科を受診し、さらに、その七割が向精神薬を服用している、こういう数字もあります。
国立精神・神経医療研究センターの中川栄二医師がこの番組でおっしゃられていましたが、向精神薬が子供の脳に与える影響は、長期的には全く解明されていない、慎重な投薬が必要なのではないか、こういうふうにおっしゃっていました。
つい最近、十月も、岐阜県で日本脳炎ワクチンの予防接種を受けた十歳の男の子が急死した、こういう事例が起きました。この男の子が、発達障害と診断をさ れて、児童精神科から、自閉症の薬ピモジドと、抗うつ剤の塩酸セルトラリン、併用が禁忌されている薬を同時に処方されていたということがわかりました。こ れら二つを同時服用すると不整脈等により死に至る危険性がある、もちろん因果関係はわかりませんけれども、こういうことが添付文書に書いてあるということ であります。それに加えて、抗精神病薬のアリピプラゾール、同時に三種類処方されていました。
この塩酸セルトラリンとアリピプラゾールというのは、小児への使用が承認されていない向精神薬でもあります。これについて、処方した児童精神科医は、報 道に対して、少量なら安全だと思った、こういうふうに語っているというわけであります。こうした現状が、今回、日本脳炎の接種を受けた直後の男児の死亡例 ということに付随して明らかになりました。
問題は、子供への向精神薬の処方の実態そのものもそもそも明らかではない、また、その処方がいかにあるべきかということについてのガイドラインも存在し ていない、こういう現状にあるのではないかと思います。そういった点で、私は、こうした子供への向精神薬の投与が進んでいる、そして、今回のような、これ は因果関係は本当にわかりませんけれども、ちょっと私から見れば、はっきり言えば、この投薬が行き過ぎだったかは、因果関係を抜きにしても疑問だと思いま す、こうした事例も報じられている。
こうした中で、やはり子供への向精神薬の処方実態について調査を行ってみる必要があるのではないかというふうに思います。御見解をお尋ね申し上げたいと思います。
○梅村大臣政務官 今、調査とガイドラインというお話をいただきましたが、現時点では、児童青年期の精神疾患について、その診断、治療の標準化を図るためのガイドラインの作成に関する調査研究というのを行ってきております。
この調査研究というのは、統合失調症あるいは気分障害などの診断、治療の標準化等についての研究を行っています。精神療法や薬物療法を含めた全体的な診断、治療法の確立というものを目指しているわけであります。
一方、先生が今おっしゃいましたような薬物療法に特化した調査というのは、現時点で行っておりません。したがいまして、これは専門家の方の御意見もしっ かり聞きながら、全体としてどのように対応が可能なのか、そのことについては検討していきたい、このように思っております。
○柿澤委員 突っ込むようですけれども、全体としてどのようなことが可能なのか考えていきたいというのは、どういう意味ですか。(発言する者あり)
○梅村大臣政務官 今、薬物に特化した御質問をいただきましたので、処方の実態の、そういうことも含めた、要は精神科領域の治療法でありま すとか、これは薬物だけではありません、精神療法も入ってまいりますから、そういったもの全体を含めた対応について検討していきたい、そういう話でござい ます。
○柿澤委員 委員の方からも、これは調べるべきだよという声が飛んでいる中でありますので、そこにはやはり処方実態の調査も含まれるというふうに理解をしていいでしょうか、しつこいですけれども。
○櫻井副大臣 まず必要なことは一体何かというと、患者さんの分析なんだと思っているんです。要するに、必ずしも私は正しく診断されていない場合があるのではないのかと。
つまり、基礎疾患があって、例えば、今出ていました統合失調症のような病気があって学校に行けなくなっているような人たちがどの程度いるのかどうかから 始まって、それから、家族関係の悪化によって悩みを抱えていて学校に来られなくなるとか、それから、物の考え方が、前向き、後ろ向きという表現がいいかど うかわかりませんが、そういうことでなかなか学校に行けなくなっているような子とか。
実際のことを言いますと、不登校といっても随分原因が違ってきております。その原因がまずきちんとはっきりした上で、次のステップとしてどういう治療を 行ってくるのかということをやっていかないと、これはなかなか解決しない問題だと思っているんです。そのことを、現場でずっと治療をさせていただいてい て、こういうプログラムをきちんとつくっていかないと、つまり、箱だけつくっても、ソフトがきちんとなっていかないと、今先生が御懸念されているような問 題は解決していかないものだと思っているんです。
ですから、そういう意味で、今は治療の方のお話がございましたが、治療の前に、まず今のようなことについてきちんと精査し、そして、今後、治療の全体的 なあり方、薬だけではなくてカウンセリングも含め、しかもそのカウンセリングというのは、患者さん本人だけではなくて家族全体を含めてどういうふうな形で やっていくのかとか、そういうことをこれから調査もしなければいけないと思っていますし、それから、こういったことについての手当て、措置をどうするのか という研究もしていかなければいけないのではないか。
済みませんが、これは現場で携わっている人間としての個人的な感想もございますが、私はそう感じているところでございます。
○柿澤委員 お二人の御答弁をぜひ信頼して、これからの取り組みを期待したいというふうに思います。
昨年の二月に、私、実は、今までは報道されていた、こんなことが報じられていたという話だったんですけれども、直接御家族からお話を聞く機会がありました。
十五歳の娘さんを持っているお母さんですけれども、娘がADHDということで診断をされて、病院に行ったら即入院してくださいと言われた。九カ月後退院 をしたんですけれども、その時点で、さっきのCP換算でいうと二千三百ミリグラムという異常な量の向精神薬を処方されていたというんですね。
同じ会に集まられていた親御さんで、やはり子供がCP換算二千ミリグラム、こういう多剤大量処方を受けて副作用と離脱症状に悩まされた、こういう方々が実は何人も集まっていました。
子供の状況を説明していただきましたが、ちょっと皆さんが聞いても胸が痛むような表現になりますけれども、目はうつろ、よだれを流して、廃人同然だっ た。それをお医者さんは、この子は薬の効かないタイプの子ですといって電気ショックを与える、こういうことをやっていた。これはおかしいといって家に連れ て帰って、減薬、断薬に取り組んだけれども、治りかけても離脱症状で、真冬に水風呂に飛び込んで、裸で外に飛び出して、女の子ですよ、壁に頭を打ちつけ て、血だらけで近所に飛び込んで、警察を呼んでください、こういうふうに叫ぶ、こういうことが完全に抜けるまで七年かかったということでした。
実は、こうした事例に共通をしているのは、学校の担任の先生や養護教諭の勧めで精神科を受診している。つまり、学校が窓口になっていることなんです。し かも、向精神薬の服用で一旦問題行動が落ちついたりもしますので、意欲の低下や身体の硬直、認知機能の低下等、重い副作用があらわれても、学校の側は、落 ちついていますから、これは副作用じゃないかと思うと家族が訴えても、できたらこのままの状態を維持してほしい、こういうふうに学校から頼まれるケースも あるんだそうです。
不登校の子供が、例えば学校の養護教諭や保健室経由で精神科を受診し、処方された向精神薬等の副作用等で心身に重大な変調を来していく、こういう事例について今まで調べたケース、把握したケースがあれば教えてください。
○梅村大臣政務官 御指摘のような形の調査というのは、これは事例としては行っておりません。
今お話をお聞かせいただくと、本来、建前上は、これは副作用という扱いで情報が上がってくるという形なんでしょうが、さっきの答弁ともつながりますけれ ども、どういう形でこれに取り組んでいかなければいけないのかということについては、考えさせていただきたいと思います。
○柿澤委員 一方で、児童養護施設においても、早期投薬によって症状を落ちつかせるかわりに向精神薬の重い副作用に陥る、こういう事例が見られるということであります。
これは読売新聞の連載記事の精神医療ルネサンスで紹介されているケースですけれども、四国地方の児童養護施設に入所した兄弟が、入所後たった二週間で、 行ってみたら、中学二年の兄がよだれを垂らし、また、小学六年の弟が失禁でズボンをぬらしていた。明らかに向精神薬の副作用で、面会に行った精神科医が、 余りの変わりように愕然としたというのが報告をされています。
この精神科医の方と私もちょっと直接話す機会がありましたが、児童養護施設において、こういう問題行動を抑えるために精神科の方の処方に従って向精神薬を投与する、こういうケースは結構あるんだそうです。
こうしたことを行うことによって、かえって深刻な心の傷跡を子供に残して、子供の人生を台なしにしてしまう、こうしたことが児童養護施設でも起こってい るんではないかというふうに思えますけれども、児童養護施設における処方の実態については、何か皆さん調べたことはあるでしょうか。
○梅村大臣政務官 児童養護施設に特化した実態調査というのは行っておりません。
これは御参考までというか、児童思春期の患者さん一般についてのデータを少し御紹介したいと思うんですが、これは発達障害を専門に診療する医師に対する 使用薬剤に関するアンケートなんですけれども、この中で、薬物療法を行っている医師が七割です。その医師が使っている薬剤としては、向精神薬のリスペリド ン、あるいはピモジド、それからADHD治療薬のメチルフェニデート、抗てんかん薬、睡眠薬であった、こういう報告はございます。
○柿澤委員 長々いろいろと具体的な事例を紹介してきましたが、何が言いたいかというと、早期発見、早期治療というこれまでの目指してきた 方向性が、本当に、心の病気の傾向を発症している、こうした子供も含めた人々を救うことになるのかどうか、そうならなければいけないけれども、現状の精神 医療は本当にその方向性に合致しているのかどうかということを感じてしまうからであります。
日本は自殺者三万人の、世界最悪の自殺大国だ、こういうふうに言われる一方で、自殺の原因の一つとされるうつ病等の精神疾患は早期受診、早期治療で治せ る、うつ病は薬で治る等々、喧伝されてきました。しかし、一方で、精神科や心療内科で処方される向精神薬の多剤大量の服用が自殺を引き起こす原因にもなっ ているのではないか、こういう研究結果も出てきています。
きょうは資料でお配りさせていただきましたが、これは一昨年の八月に長妻大臣に御質問させていただいたときのデータで、三百十七例の薬物関連の自殺のうち、二百八十九例までが、やはり処方薬の成分が検出をされているというケースであります。
いずれにしても、こうしたことを踏まえて、裏面を見ていただくと、厚生労働省も、向精神薬の過量服薬によって自殺が引き起こされている可能性があるとい うことを注意喚起しています。本当にこういう中で早期発見、早期治療というのが、心の病を、ある意味では日本全体で取り組んでいく上での有用なアプローチ と言えるのかどうか、最後にぜひ厚生労働大臣の御見解を伺って、終わりたいと思います。
○櫻井副大臣 大臣の前に一言だけ。
例えば、不登校の子供さんでいうと、不登校ぎみのところで来ていただければ本当に早く治ります。ですから、私は、早期発見して、そしてもう一つ、先生の言葉どおり申し上げれば、適切な治療を行っていくのであれば、これは間違いなく有効だ、そう思っております。
今の対応の仕方が果たして適切だったのかどうかという検証は、これから、今政務官もお答えしておりましたが、検討していく必要性があるのではないのか、そう思います。
それから、例えば今度、がん対策で、がんの心のケア対策を行いますが、がんと診断された後に、これは外国の文献ですが、自殺の割合が十二・六倍にふえる というふうにも言われております。直後一週間です。ですから、そういう点でいうと、何かのことがあった際に早期に介入していくということは、私は有効では ないのかというふうに感じます。
○三井国務大臣 うつ病に起因する自殺予防対策といたしましては、早期介入、それから今先生がおっしゃいました早期発見、早期治療のアプローチは大変有用と考えておりますし、そのためには、やはり適正な精神医療が行われることが必要だと思っております。
また、早期治療を適切に行うためには、やはり医師の診断それから治療能力の向上に向けた研修等を充実させていきたい、このように考えております。
○柿澤委員 時間も来ましたので終わりますが、大変バランスのとれた、よい御答弁をいただいたというふうに思います。このラインナップであ れば、この野田内閣がちょっと長く続いてほしいなというような感じも持ちましたけれども、そうばかりも言ってはいられませんが、質問は終わらせていただき ます。
ありがとうございます。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/181/0097/18111070097002a.html
参議院
第183回国会 厚生労働委員会 第9号
平成二十五年五月二十八日(火曜日)
<前略>
○川田龍平君 よろしくお願いいたします。今日、座って質問させていただきます。よろしくお願いします。みんなの党の川田龍平です。
私も、先ほど石橋委員からお話ありましたこの過労死の問題について、私も過労死対策基本法若しくは過労死予防法のようなものをやっぱり是非作るべきではないかと思いますし、過労死に対する対策を一日も早く厚生労働省の方にも取っていただくように私も要望いたします。
それでは、質問に入ります。
精神保健法改正法案において論点となるのは、既に罹患してしまった方のケア、家族の関与の在り方です。最も重要な対策の一つは病状を悪化させないことであり、精神的な健康を維持し、精神疾患にかかる前に未然に防げる環境をつくっていくことも重要です。
そこで、予防と重症化予防について確認させていただきます。
そもそも精神疾患の主たる原因は、多くが労働環境によるものだと思いますが、働く環境とメンタルヘルス問題の関係について現状はどのようになっているの でしょうか。労働者の精神保健環境に重点を置く労働安全衛生法が政権交代されてからなかなか提出されませんが、どのようになっているのでしょうか。
○政府参考人(宮野甚一君) お答えをいたします。
先生御指摘の働く環境とメンタルヘルスの関係でございますけれども、労働者のメンタルヘルスの不調につきましては様々な要因があると考えられますが、働く環境がメンタルヘルスに与える影響は少なくないと私どもも認識をしております。
このため、職場におけるメンタルヘルス対策の一環として、労働者のストレスの程度を検査し、必要な場合には就業上の措置につなげる等の対策を盛り込んだ 労働安全衛生法の改正案を一昨年の臨時国会に提出をいたしましたけれども、残念ながら昨年の臨時国会において廃案となっております。
この法案については、メンタルヘルス対策を含めまして重要な課題が含まれていると認識をしておりますけれども、国会への提出から時間もたち、本年二月に は第十二次労働災害防止計画が策定されるなど状況の変化もあることから、メンタルヘルス以外の内容についても改めて検討した上で再提出を目指したいという ふうに考えております。具体的には、十二次防の検討事項について法案に追加すべきものがないかなど、この六月から労働政策審議会において議論をお願いした いと考えております。
○川田龍平君 この法案提出は来年の通常国会を目指すということも聞いておりますが、法律が未整備の状態で放置しているとなれば、その間に心の病に苦しむ国民がどんどん増えていくことになるんではないでしょうか。
この法案は、言わば既に罹患している患者さんをケアする法案ですが、それだけでは不十分です。心の問題、精神疾患への入口の部分でしっかりとシャットア ウトをして、心の健康に常日ごろから関心を払うことができる社会環境を今から用意しておかなければなりません。この法律を適用しなければならない国民をど んどん増やしていくことになりかねません。心と労働の問題を直視して、労働環境の改善とメンタルヘルスの問題を早期からきちんと対処できるような抜本的な 精神保健事業の改革が必要です。
その意味でも労働者の心の健康管理は重要だと思いますが、現在のメンタルヘルス対策に併せて、来年の法案提出までに具体的にどのようなことを考えているのかお示しください。
○政府参考人(宮野甚一君) お答え申し上げます。
厚生労働省では、平成十八年に労働者の心の健康の保持増進のための指針を策定し、不調者の早期発見、適切な対応、職場復帰支援等、一次予防から三次予防 まで事業場における基本的なメンタルヘルスの取組事項を示しております。この指針に基づきまして、職場におけるメンタルヘルス対策を推進するため、都道府 県労働局、労働基準監督署による事業場に対する指導等の実施、全国のメンタルヘルス対策支援センターにおける相談対応、個別事業場に対する訪問支援等の実 施、ポータルサイトこころの耳を通じた情報提供等の取組を行っております。さらに、今年度は産業医を対象とした研修を実施することとしております。
今後とも、こうした取組を進めまして、職場におけるメンタルヘルス対策を推進してまいりたいと考えております。
○川田龍平君 労働安全衛生法では産業医の活用がうたわれていますが、産業医が十分にメンタルヘルスの知識があるかどうか疑問です。産業医のメンタルヘルス対策についてどのような研修体制が用意されているのかお示しください。
○政府参考人(宮野甚一君) 職場のメンタルヘルス対策を推進する上では、産業医等が適切な役割を果たすことが重要であると認識をしており ます。このため、産業保健推進センターを設置して、産業医を含む産業保健スタッフに対してメンタルヘルス対策等の具体的な取組手法に関する研修を実施をし ております。さらに、先ほど申しましたとおり、今年度はこれに加えて、産業医に対してストレス症状を有する労働者への面接、指導の実施方法等の研修を全国 で実施することとしております。
厚生労働省としては、産業医等に対しこれらの研修の受講を勧め、今後とも産業医等のメンタルヘルスに関する知識の向上を図ってまいりたいと考えております。
○川田龍平君 産業医にはゲートキーパー的な役割を期待しているということだと思いますが、そうであれば、産業医にはきめ細やかな気遣いが 必要でしょうし、過重労働が続いているような場合には、心の健康が損なわれないように使用者に毅然と物を言えるようにしなければいけません。また、使用者 もそういった配慮ができるようにしていただきたいと思います。
さて、現在、産業医の数は十分とは言えません。産業医が十分に機能できないのであれば開業医や専門医の活用も考えているのでしょうけれども、メンタルヘ ルス専門医の開業数が十分ではなく、いわゆる一般に開業されている診療所などでメンタルヘルスの問題を解決しようとする国民が多いのが現状だと思います。
しかし、こうした精神科を本来専門としていない開業医の医師が安易に精神科の薬剤を処方している現状は好ましい状態とは言えないのではないでしょうか。 ベンゾジアゼピン系の薬剤などは習慣性、依存性が高く、耐性が現れやすい場合もあり、十分な経験と臨床知識がなければ上手に使えないこともあるのではない かと思います。また、臨床の現場で安易にこうした薬剤を処方してしまう傾向があるのではないでしょうか。睡眠導入剤もそうですが、患者がつらいので処方す るのでしょうけれども、必要なものを必要なだけにしなければ、薬剤に依存してしまう国民をどんどんつくり出してしまいます。
メンタルヘルス系の薬剤を安易に処方できる現状を何とかできないものなのか、大臣の答弁を求めます。
○政府参考人(岡田太造君) 我が国の精神科医療では、諸外国に比べて多種類の薬剤が大量投与されている実態があると指摘されているところでございまして、厚生労働省としても問題意識を持っているところでございます。
このため、一般診療所を含みますレセプトデータを対象に向精神薬の処方状況を調べた調査を行ったところでございまして、その結果、一部の患者で多種類の 薬剤が処方されるケースがある、一方で九割以上のケースで二種類以下の処方であったというような結果が出ているところでございます。患者さんの病状により まして使われる薬というのは多種類の薬剤が必要な場合もありますので、この結果から一概に適切、不適切ということを判断するのは非常に難しいのではないか と考えております。
なお、平成二十四年度の診療報酬改定におきまして、睡眠薬又は抗不安薬を三種類以上処方した場合には診療報酬を減算するということとして適正な処方を促しているというようなところでございます。
また、今年度、向精神薬の処方実態について更に調査を行うこととしまして、その結果を踏まえて必要な対応について検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○国務大臣(田村憲久君) 答弁、全部答えられちゃったんですけれども、要は、薬というのは、効くのは効くんだと思います。ただ、問題はそ の使い方の問題であって、今委員おっしゃられたとおり、耐性のあるものを余り使っちゃいますともうそれで効かなくなってくると。そうすると、また大量に使 うか違う薬を使うということで多剤投与だとか大量投与につながっていくわけでございますので、そこも含めて、本当にどういう使い方がいいのかということは これは研究をしなければならないというふうに思いますし、今答弁にありましたとおり、実態調査をちょっとさせていただきながら対応の方を考えさせていただ きたいというふうに思います。
こういう問題があるという認識は厚生労働省も持っておりますので、しっかりとした対応をさせていただきたいというふうに思っております。
○川田龍平君 薬剤投与によって副次的に精神疾患が生み出されるようなことは絶対にあってはならないことです。医師が処方した薬剤が原因と なってメンタルヘルス問題が悪化したり発病したりするのは最もひどいことです。ここはしっかりと教育研修制度を充実させるとともに、使用の適正化に向けて 努力を怠らないように政府にお願いしたいと思います。
レセプト上で少なくとも常習性や依存性が疑われるものや明らかな倍量投与などは、診療報酬上の返戻措置をとっています。少なくとも、よほどの理由がある 場合にはレセプト上に特記事項として医師が記載したりするべきでしょうし、それがない明らかな過剰投与が疑われる場合にはきちんと対処するように何らかの 処置をとっているのかどうかをお答えください。
○政府参考人(木倉敬之君) お答え申し上げます。
先生御指摘のように、レセプトにおきまして医学的に明らかに過剰な投与あるいは不適切な投与ということにつきましては、審査支払機関におきまして査定を行って返戻をさせていただくということは当然であります。
また、患者さんが複数の医療機関を重複受診をされておるような場合にはなかなか審査上それが不適切と一概に言えないと、その一個一個のレセプトを見た場 合はですね、そういう場合もあろうかと思います。こういう場合につきましても、今度は、保険者の側におきましては、まだ取組が始まったばかりではございま すが、加入されている被保険者さんのレセプトを分析をいたしまして、やっぱり不適切な受診をなされている、あるいは投薬に重複が見られるというふうなこと につきましては、その方の健康上の問題、保健指導の問題として適切な受診を促すというふうなことの取組も始まっておるところでございますが、まだこれから でございます。
このようなものにつきましても、我々も積極的な事例を普及させるなどによって取組を促してまいりたいというふうに思っております。
○川田龍平君 次に、降圧剤バルサルタン、商品名ディオバンの論文問題について関連して質問いたします。
先ほどから繰り返し申し上げていますように、昨今の精神科治療においては薬剤の担う役割は重要性を増しております。効き目の鋭い新薬もどんどん投入さ れ、患者さんのQOLも向上しているという話も聞かれるようになりました。つまり、薬剤が正しく使われる環境が用意されなくては患者の予後は決して良くな らないということになります。
そうした観点から見ますと、今回のディオバンの論文の問題は、治療薬の使用の前提となる臨床研究の信頼性を失墜させ、薬剤使用のバイブルといってもよい 添付文書の中身にも影響を及ぼしかねません。そうなれば、臨床現場で何を信じて治療薬を選べばよいのか分からなくなってしまうのではないでしょうか。そう なれば、精神を病んでしまってもなかなか良い薬に出会うことができないようになり、結果的に患者の不利益につながりかねないのです。
まずは、事実関係として、厚生省はどういった指導をされたのでしょうか。昨日、医政局の研発課と経済課が当該製薬会社を呼んで注意喚起を行ったというよ うな話も聞いておりますが、当該研究論文を発表した京都府立医科大学への指導があったのかなかったのかも含めて教えてください。
○政府参考人(原徳壽君) お答え申し上げます。
昨日十六時から、ノバルティスファーマ株式会社の担当者を厚生労働省に呼びまして事情をお聞きいたしました。その事情を聞いた後、同社に対して、現時点 で判明している利益相反の問題についての厳重注意、また、今回の事案に関する全体像の更なる検証、再発防止策の策定、また、検証結果と再発防止策の厚生労 働省に対する早期の報告について、担当課より口頭で指導を行ったところでございます。今後新たな事実が判明すれば、それを踏まえ、また必要な対応を検討す ることとしております。
また、京都府立医科大学においては今回の事業について更なる調査を実施していると聞いており、まずはその調査結果の報告を聞いた上で、今後の対応について検討していきたいと考えております。
○川田龍平君 製薬企業が意図的に関与し、結果を何らかの形で捏造したり有意なものにしたりするような統計的処理を行ったなどということになれば、それは犯罪ですし、日本の臨床研究自体をおとしめる行為ですから看過できません。
このディオバン臨床研究については、いわゆる製薬企業などが主導する臨床研究とは異なり、医師が主導して実施する臨床研究として意味のあるものであり、 また日本初の大規模臨床研究だったと聞いています。つまり、日本の治験を変えると言っても過言ではない第一歩のはずでした。その第一歩からしてこういう不 手際があったとなると、臨床研究を活発化させ日本発の創薬を推進していくと政府は言っていますが、本当に大丈夫なのかと言いたくもなります。
当該製薬会社が意図して関与をしたのかどうかということも気になりますが、それ以上に、この臨床研究を主導した京都府立医科大病院の無責任さは、命を預 かる医師を養成する大学としてこれで良いのかと怒りを感じます。京都府立医科大学では、このディオバン問題を理由にしてディオバンを製造して販売している 会社を取引停止にしたといいますが、そもそも問題となった論文を公表したのはこの大学の教授です。この大学の教授が自らの責任で行った臨床研究において利 益相反の開示義務違反があったのであって、どうして被害者のように振る舞って、あたかも製薬企業に責任があるかのような顔をするのは、余りに当事者意識が なさ過ぎるのではないでしょうか。
医師主導の臨床研究なのですから、研究グループの誰がどのようにかかわっているかを把握するべきなのは当然のことではないでしょうか。それとも、どこの 誰だか分からないような人に研究の中核部分である統計解析を任せた結果を学会誌に発表したとでも言うのでしょうか。仮にそうだとすれば、そんな臨床研究で いいのでしょうか。京都府立医科大学の当該製薬会社への取引停止勧告は、日本医学会の高久会長も京都府立医大の行為は行き過ぎと断じており、京都府立医科 大学のような大学が臨床研究をしていくことは将来的に大きな禍根を残すのではないかと不安に思います。
そもそも医師は、臨床研究の手順や治験の手順などは国際ルールを含めて熟知しているのでしょうか。手順も知らない状態で臨床研究をやられては人体実験で す。世界標準のルールを遵守して行った臨床研究だからこそ、世界的に評価され、その結果を用いて医学が発展していくのです。
京都府立医科大は当然ですが、過去に臨床研究の手順がきちんと理解されていなかった慶應義塾大学病院なども含めて、学内や病院内における臨床研究や治験に対する理解が深まっているのか再点検をしっかりしていただきたいと思いますが、政府の答弁を求めます。
○政府参考人(原徳壽君) 早期・探索的臨床試験拠点に選定されております慶應義塾大学病院におきまして、昨年、患者の同意を得ずに三十一 名から手術中に骨髄液を採取するという臨床研究に関する倫理指針に反する研究が実施されていたことが判明いたしました。これを受けまして慶應義塾大学病院 では、関係職員の教育や同意書の電子的確認システムの導入などの再発防止策を取りまとめたところでありまして、厚生労働省ではその進捗を確認することとし ております。
また、他の早期・探索的臨床試験拠点や臨床研究中核病院に対しても、この臨床研究に関する倫理指針を遵守した臨床研究が実施されているかの調査を実施いたしましたが、その他のところでは特段の問題は認められなかったところでございます。
これらの医療機関におきましても、適切に臨床研究が実施されるよう、今後とも進捗管理をしっかりと行っていきたいと考えております。
○川田龍平君 さて、医学教育において臨床研究や治験がどのように扱われているかについても併せて質問いたします。
政府も臨床研究を推進する施策を進めていますから、当然、次世代教育という意味で、学部教育でも臨床研究の手順や治験の在り方などについて一定の配慮がされているかと思いますが、現状はどのようになっているのでしょうか。文部科学省の見解をお答え願います。
○政府参考人(山野智寛君) お答えいたします。
委員御指摘のように、やっぱり医学部の教育の中で治験の在り方であるとか臨床研究のやり方とか、その際にやっぱり留意すべきことであるとか倫理性ということについてきちんと教育するということは非常に重要なことだと思っています。
それで、医学部の教育、医学部というのはいろいろな大学あるわけなんですが、やっぱりそれぞれの大学で教え方については創意工夫はあるものの、全ての大 学の医学部生がきちんとこのことについては勉強するんだというベースになるものとして、医学教育モデル・コア・カリキュラムというものを作ってございま す。その中で、御指摘のような医療と医学研究における倫理の重要性であるとか、治験を含めた研究目的での診療行為に要求される倫理性等についてきちんと学 ぶということが明記されてございまして、委員御指摘のように、この分野、重要ですので、各大学がきちんと取り組むように促していきたいと思っています。
○川田龍平君 医師については、理念としてきちんと教えていると理解をしました。若い医師が高い意識を持って医師主導臨床研究や治験を担える知識と高い倫理観を持ってくれれば、彼らが卒業して現場に立ち、数年がたてば状況は改善してくると信じています。
ただ、文部科学省も、京都府立医科大学のように当事者意識の欠けている大学もあるのですから、こういった大学にはしっかりと指導をしていただきたいと思 います。コアカリキュラムがしっかりしていても、教える者の意識が低ければ、学生は十分な学習機会を得たとは言えません。この分野は、日本が創薬・医療イ ノベーション立国を目指すのであれば核となる分野の一つですから、文部科学省としてしっかりとフォローアップをお願いしたいと思います。
併せて確認しますが、現在策定中の薬学コアカリキュラムでは、臨床研究、治験などレギュラトリーサイエンス分野の取扱いはどうなっていますか。今回の京 都府立医大の取引停止問題でも、薬剤部長が談話を発表されたり、あるいは治験や臨床研究の評価を担当するPMDAなどには薬剤師が多く勤務し、審査体制の 強化を図っているようですから、今回のような事例を未然に防ぐような厳しい目を持った薬剤師養成を企図されていると考えてよろしいでしょうか。文部科学省 の答弁をお願いいたします。
○政府参考人(山野智寛君) お答えいたします。
今、医学部のコアカリキュラムの説明をしましたが、薬学部についても同様のコアカリキュラムを作ってございます。
それで、今、特に薬学部は六年制になったということで今改訂作業を進めてございまして、その中で御指摘のような項目につきましては、例えば大きな項目と して、薬剤師に求められる倫理観というような項でありますとか、臨床研究デザインと解析というような一つの項目を作りまして、その中で一連の物事を教えて いくというようなことを考えてございます。また、そういう医薬品とかに係る法規範という中でも、レギュラトリーサイエンスの必要性と意義について説明でき るというような内容まで書いてございまして、今この改訂中のものは、今ドラフトができて、今各大学であるとか薬剤師会とか関係機関に意見を求めているとこ ろでございますが、そこで必要な修正をして、今後はまた広く国民の意見をパブコメで求めることによって内容の充実したものを作っていきたいというふうに考 えてございます。
○川田龍平君 医師養成教育ではその重要性を認められ、医師主導治験という方向性を敏感に感じられてコアカリキュラムにしっかりと導入して いるようですが、薬剤師については、通称コアカリ検討会における議論の推移を見ていると、アカデミアから消極的な話ばかりが出ているようです。医師養成教 育とは異なり、国家戦略が全く見えていないのではないかと思うような発言だと気になりました。これから薬事法の改正もあり、審査の迅速化と安全性評価の充 実が図られるのですから、ますますこの分野の知見を有した専門家が必要になってくるのです。薬学でもきちんと教えていただくようにお願いしたいと思いま す。
ところで、今回のノバルティス問題では、論文の共著者の所属大学に臨床研究中核病院に指定されている病院も入っているようですが、国家戦略として指定さ れている病院については、早期・探索的臨床試験拠点病院も含めて、こういう病院群では医師の教育や倫理委員会の独立性の担保などは大丈夫なのでしょうか。 政府の答弁を求めます。
○政府参考人(原徳壽君) 厚生労働省としましては、日本発の医薬品、医療機器の創出などを目的として臨床研究中核病院や早期・探索的臨床 試験拠点の整備事業を進めております。これらの整備事業では、その補助要件の中で、まず臨床研究に係る専門職種の配置のほか、臨床研究を実施する医師等の 関係者へ必要な教育を行うこと、これは倫理のことや、あるいは臨床研究を進める具体的な話、それから倫理性、科学性、安全性、信頼性の観点から、適切かつ 透明性の高い倫理審査ができることを要件として求めております。
これらの医療機関において適切に教育がなされ、また透明で独立性が担保された倫理審査が実施されるよう、今後とも進捗管理をしっかりと行っていきたいと考えております。
○川田龍平君 ところで、この論文問題なのですが、文部科学省に確認させていただきますが、そもそもこういった不手際やプロトコル違反のあ る臨床研究を実施しているような大学のアカデミアとしての信頼性についてどうお考えなのでしょうか。今回の事例は日本の研究の信頼性を失墜させるものであ り、日本の国際競争力をおとしめる恥ずかしい行為です。利益相反を開示しなかった大学側の責任は責任として十分に処理した上で、製薬企業の関与がどれほど あったのかを検証し、そこに捏造などの行為があったと認定された場合には、製薬企業の利益優先のための行為を非難するべきだと考えます。
ですから、データの捏造や解析における恣意的な介入の有無が確認されていない現状では製薬会社を責めることはできないと考えていますが、その上で大学と 研究の在り方について文部科学省にお尋ねしますが、医学論文や薬学論文というのはおよそ国際的に信頼できるものなのでしょうか。
例えば、病院薬剤部長が学位を取得して大学薬学部で教員になる例が多いと聞きます。今回のような事例を見ていると、これは、医薬業界、医療業界全体の構 図ではないかと不安になります。人の命にかかわる分野です。不正が横行して、名義貸しのような研究が医師主導研究という名の下で実行されては困ります。医 学・薬学分野の研究論文の質の確保という点から、また学位取得の公正性という面からも、文部科学省の見解を求めます。
○政府参考人(山野智寛君) お答えいたします。
まず、一般論でございますけど、今回の医療とか薬学にかかわらず、全ての分野の研究者には高い倫理性、具体的に言いますと、例えば研究論文を書くときに はデータを捏造したら駄目だとか盗用したら駄目だとか、あと、それとか、利益相反には適切に対応しないと駄目だとか、あと、医学系の論文であれば患者のプ ライバシーをきちんと守るとか、そのような高い倫理性が全ての研究者に求められてございまして、それは今までのそういう研究者のいろいろな分野の歴史の中 で、研究者コミュニティーを中心に、国内だけじゃなくて国際的にもやっぱりきちんとしたガイドラインを作るとか、そのようなところでそういうことの徹底と いうのが図られてきておるところでございます。
そのような中で、もう委員御指摘のように、特に医学の研究とか薬学の研究はやっぱり命に直結する部分があるということですから、より一層やっぱりそうい う高い倫理性が求められるんだと思います。そういう意味で、今回、このような事案が起きたということは、全体のそういう信頼性を損なう、臨床研究の、損な わせるということで、非常に遺憾であるというふうに考えています。
ただ、若干、委員が言われたのでちょっと申し上げますと、我が国の医学の研究者とか薬学の研究者が、先生の言葉で言うと、やっぱり基本的にはほとんどの 人は真面目に研究しておる研究者でございますので、日本のそういう医学論文が国際的に信用されないというようなことはないというふうに考えています。た だ、今回の事例は事例としてきちんと調査をして、こういう物事に対する対応は、原則はまず研究者がきちんと自浄作業をやるんだというのがあって、その周り の、当然、研究者コミュニティーであるとか大学とかが自律に基づいて自浄作用を発揮してやっぱりきちんとやっていくということで、そういうことで各大学と か関係企業なんかにおいて今調査が行われてございますけど、そこらの結果も踏まえて、やっぱり教訓にすべき内容、改善すべきポイントとかにつきましては各 大学、各研究コミュニティーなんかに周知して、やっぱり適切な対応を今後取っていきたいというふうに考えてございます。
○川田龍平君 やはり臨床研究の倫理指針、指針という段階では、やっぱりこれが非常にまだ問題があることが繰り返されているという段階におきましては、やはり法制化も含めてしっかりやっていくべきだと思います。
次に、精神保健改正法案について、さっきの議論の繰り返しになる部分もあるかと思いますが、幾つか原則的なことを再度確認させていただきます。
まず、任意入院が原則であり、強制入院は例外であるということをきちんと認識されているでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 精神疾患は本人に病識がないことも多いという特性がございまして、本人の同意に基づかない医療保護入院や措置 入院という制度が設けられているところでございます。このような本人の意思によらない入院については、患者本人の権利擁護の観点を踏まえて、最も適切な形 態で行われるように留意が必要だというふうに考えています。
こうした観点から、これまでの法改正におきましても、できるだけ本人の同意により入院させるよう努めるとともに、任意入院が難しい場合に初めて医療保護入院が行われることを法律上明確化させていただいているところでございます。
また、今回の法改正では、医療保護入院が本人の意思によらない入院であることを踏まえまして、その入院期間の短縮化を図るという観点から、精神科病院の管理者に新たに早期退院を促すための各種義務を課しているところでございます。
引き続き、措置入院や医療保護入院に関する法令の適切な運用に努めてまいりたいと考えています。
○川田龍平君 障害を理由に強制入院させられることと障害者権利条約十四条との整合性は付くのでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 障害者権利条約第十四条は、自由の剥奪が障害の存在により正当化されないことを確保することを規定しているというふうに承知しています。
精神保健福祉法に置かれています非自発的入院に関しましては、措置入院は、自傷他害のおそれがある患者に対する医療の提供や保護を通じて、他害を防止し たり患者本人の自傷を防止するという本人の利益の保護を図るためのものでございます。また、医療保護入院も、入院の必要性について本人が適切な判断をする ことができない状態の場合に、あくまで本人の医療及び保護を図るためのものだというふうなことで考えております。
精神障害者であることのみを理由として適用されるわけではないというようなことでありますので、権利条約の十四条上問題はないというふうに考えているところでございます。
○川田龍平君 今回の改正案で、より医療保護入院その他の入院数についてそれぞれ減少すると想定しているのでしょうか。数字的目標があれば、それもお示しください。
○政府参考人(岡田太造君) 今回の改正で保護者制度を廃止することに伴いまして、医療保護入院につきましては、精神保健指定医の一名の診断に加え、保護者ではなく家族などのうちいずれかの者の同意で入院を開始できるという形にさせていただいているところでございます。
このように、改正前は保護者一人の同意でございましたが、改正後は家族などであれば医療保護入院の同意ができるということになりますが、精神保健指定医 の診断が必要だということは改正の前後で変わらないということでございますので、真に入院治療が必要な患者が医療保護入院により入院することになるという ふうに考えているところでございます。
医療保護入院に当たりましては、患者本人に病識がないという特性からなかなか医療機関の受診につながりにくいという状況がございまして、今回の改正によ りまして医療保護入院となる患者が格段に増えることは考えづらいんじゃないかというふうに考えているところでございます。
○川田龍平君 厚労省としては入院を減らしていくという方針のはずですが、違いますでしょうか。減らすための改正になっていないんではないでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 世界的に見て入院の期間が長いという現状があります。そうはいいながらも、入院期間は若干なりとも短縮はしてお るわけでありますけれども、そういう長期入院患者が多いという現状においてどう対応していくかということで、例えば、急性期のところに手厚い対応ができる ように精神病床の機能分化というものを図っていく、これにおいて急性期のところに手厚い医療を提供できるようにしていく。それからまた、患者の家族だけで はなくて、地域で支えられる、こういう仕組みをつくっていくということも大変重要であります。
あわせて、退院をしたときにやはり、先ほど来お話が出ておりますとおり、多職種の方々がかかわり合って、そこで例えば、もちろん外来医療もそうでありま すけれども、訪問支援等々をしっかりとしていくと。そういう体制整備を整えることによって、一度入った方々が早く退院してそして地域で生活できる、地域移 行ができる、こういう準備を進めていくことも大変重要でありまして、そういうものも含めて、今後、指針をこの法改正の中において策定するということになっ ておりまして、これは、先ほど言いましたような機能分化、病床の機能分化でありますとか、多職種の方々の一つの方針みたいなもの、指針みたいなものを作っ ていくと。
いずれにいたしましても、先ほど来話が出ておりますとおり、保護者制度というものはこれを廃止をする、それはいろんな御意見はあられるんだというふうに 思いますけれども、保護者の方一人の責任というものをこれを解放するといいますか、そうじゃなくて家族全体でしっかりと受皿になっていただけるというよう なことを進める中において家族の方の中の同意というような形を進めるということでありますが、一方で、退院に対しましては、逆に家族の方々の方から申出が あればこれは審査会の方で議論をしていただきながら退院ということもございます。
先ほど来話出ておりますとおり、精神科病院の管理者には、これはやはり早期退院というものの義務といいますか、各種義務を課しているわけでございますか ら、先ほど来言っておりますとおり、入院は、それは医療にアクセスするという意味では入院という方法もあるわけであります。それは保護入院という方法もあ るわけでありますけれども、入ったらやはりなるべく早く退院をいただいて病気を治していただく、若しくは軽くしていただいて地域で生活をいただくというの がこの法律の趣旨でもございますから、そのような形で体制を整えてまいりたいというふうに思っております。
○川田龍平君 OECDの国際的なデータにおける精神病院の平均在院日数と人口千人当たりの精神病床数について、一九六〇年代からの推移、 そして最新データについて、各国と日本の状況を示していただこうと思っていたのですが、石橋委員の資料にも、ここにありますとおり、ここに十か国の精神医 療の国際比較のグラフを石橋委員がお示ししてくださっておりますが、日本の精神科病院は強制入院が乱発されていることが分かったと思います。
強制入院として、主に措置入院と医療保護入院がありますが、全精神科医療のうち強制入院が占める割合は四〇%以上で、そのほとんどが医療保護入院となっており、先進各国がおおむね一〇%程度なのに対して、強制的入院の発動が乱発されている状況と言わざるを得ません。
日本にだけ強制入院が必要な重症の人が多いのでしょうか。大臣の見解を伺います。
○国務大臣(田村憲久君) 日本だけ多いかどうかといいますと、それはそのようなことを十分に検証したわけではないわけでありますけれども、実態といたしまして、非自発的な入院というもの、これが多いということは事実でございます。
そういう状況の中において、とはいいながら、今、更に大きな問題として入院期間が長いという問題がございますから、これに対してしっかりと対応していくということを念頭に置いておるわけでございます。
なお、先ほど来申し上げておりますとおり、悪化させないためにも早く医療機関にアクセスしていただくということは大事でございますから、これは保護入院 にかかわらず、やはり医療機関にアクセスするためのいろんな我々は対応をしていかなければならないというふうに考えております。
○川田龍平君 OECDの中でも日本がぬきんでてやっぱり在院日数と病床数共に多いという中で、この保護者制度を廃止したことは一定の前進だと評価できますが、廃止によって家族の負担はどう変わると見ているんでしょうか。負担は減るのでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 外国との比較で先生から御指摘がございますが、歴史的な背景もあろうかと思いますが、保護者制度につきまして は、保護者制度は明治時代におきましては精神病者監護法で監護義務者というものに端を発して、保護義務者となりましたのは、さきの昭和二十五年に法律がで きまして、そういう形で保護者が、一人の家族のみが保護者として様々な義務を負うという制度が設けられていたところでございまして、これは他の障害者や他 の疾病の患者さんにはない精神障害者の独自の制度でございます。
この保護者が担う義務は、治療を受けさせる義務であるとか医師の診断に協力する義務、医師の指示に従う義務、財産上の利益を保護する義務などがありまし て、精神障害者の家族の高齢化に伴いまして、家族の方々が非常に負担感が高まっているというようなことでございます。今回の改正では、こうした精神保健福 祉法に規定されています義務に関する規定を含め、保護者に関する規定を全て削除させていただくということにさせていただいております。
しかし、精神障害者の家族の方々には、法改正後も引き続き、一般の医療であるとか他の障害者の方の御家族と同じように治療や社会復帰について重要な役割を果たしていただくことになると考えているところでございます。
○川田龍平君 精神科医療は、病院内精神医療から地域精神医療へと展開するのが国際的な常識となっており、厚生労働省もそれを目指している はずです。精神障害者も、障害者総合支援法の下ではサポートを受けながらも、自己決定によって自立すべき存在です。日本の現状はこれと懸け離れています。
そこで、新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム第三ラウンドが設けられ、精神保健福祉法から保護者の義務規定を全て削除すべきだとし、さ らに、強制入院としての医療保護入院を保護者の同意を要件としない入院制度に改めるべきだという結論を昨年六月に出しています。
ところが、この度の改正法案では、医療保護入院に家族等のうちいずれかの者の同意を必要とし、現行二十条で保護者となり得る者を家族等としています。こ れは検討チーム第三ラウンドの結論とは全く異なるものです。従来は保護者に限定されていた同意者が家族等のうちの誰でも同意できることになって、その負担 を負う者が拡張される結果となっています。結果として、強制入院を発動しやすい形に制度を変えてしまっているのです。これでは、日本の精神科医療の問題を 更に悪化させ、国際的にも日本の精神科医療の異常性が更に際立つものになってしまうことが予想されます。
そのため、検討チームのメンバーが座長の町野上智大学教授を筆頭に田村大臣にあてて意見書を提出するという前代未聞の事態となっていますが、意見書を受け取った大臣はこの事態をどうお考えでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 検討チームの報告ですね、昨年六月に、今委員がおっしゃられたように、保護者制度を廃止した上で精神保健指定医 一名の診断で入院ができるようにするというような、そのようなことを提案をいただいたわけでありますけれども、一方で、やはり一般の医療でもインフォーム ド・コンセント等々言われる中において、やはり今どういう状況なのかということを、御本人がなかなか自分の病状等々御理解をいただけないという障害の特性 がある中において、やはり御家族にはそれはちゃんと御理解をいただく必要があるのであろうと。そうなったときに、やはり御家族のどなたかにはやはりそこの ところの御理解をいただく中での入院という、そこは担保を取らないと、一方で、患者の方が自発的に入院されるわけではございませんので、ある意味、権利の 擁護という問題もございます。
今までは、そういう中において、保護者制度でありましたからお一方に全て責任が行っていたわけでありますが、それは家族の中のどなたかということにおい てはそこはちょっと薄まったんだろうとは思うわけでありますけれども、いずれにいたしましても、そのような問題があることは我々も認識しつつも、措置入院 であっても二名、これは指定医の方々が入院の診断をされるわけでありますから、そこをこの医療保護入院で指定医の方々一名の診断でという部分もどうなのか なという部分もございまして、最終的に、退院した後の対応のこともございますから、やはり御家族に御理解をいただくという意味で、今回、御家族の同意とい うものを入れさせていただいたということでございまして、私に対していただいた内容に関しましては真摯に受け止めさせていただきますけれども、三年後の見 直しに向かっていろんな御議論をさせていただきたいというふうに思っております。
○川田龍平君 次に参考人の質疑もあって、その後質疑もありますので、内容については次の質疑にまたやりたいと思いますが、最後に、この改正法案は精神科病院の経営安定のためのものではないかというふうに考えてしまいます。
といいますのは、日本精神科病院協会の山崎会長は、民主党政権下において、日本精神科病院協会は野党になった自由民主党の先生方と精神医療保健福祉を考 える議員懇談会を通して地道に精神科医療提供体制に関する議論を重ね、今回、安倍内閣で重要な役職を務めることになり、安倍晋三内閣総理大臣、田村憲久厚 生労働大臣ら、これまでの精神科病院協会の歴史にないような豪華な顔ぶれが政府・自由民主党の要職に就任しており、日本精神科病院協会アドバイザリーボー ドメンバーである飯島先生と丹呉先生も内閣官房参与として参画されて、頼もしい限りと述べておられます。
協会からは、この政治団体からは総理や大臣にも数百万円の献金がありますが、患者の立場を考えない癒着の構造があるのではないかと疑われても仕方がないように見えますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) もうこれは御承知のとおり、我々が政権を握っておる前に検討会を打ち立てていただいて骨格をお作りをいただいた 案でございます。そういう意味では、どういうおつもりでそういう文章をお書きになられたか分かりませんけれども、少なくとも、退院を早期にするための各種 の義務を課すなどというのは、多分、自由度という意味からすれば、どういう思いの中でその条文をお読みになられておられるか分かりませんけれども、そうウ エルカムじゃないと言うとこれまた問題が起こるのでそうは言えませんから難しいわけでありますが、そこは公平なる法案審査をいただく中において御理解をい ただける部分ではないのかなというふうに思っておりますので、決してそのようなことはございませんので、御安心をいただきますようによろしくお願いいたし たいと思います。
○川田龍平君 ありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/183/0062/18305280062009a.html
第183回国会 厚生労働委員会 第9号
平成二十五年五月二十八日(火曜日)
<前略>
○川田龍平君 よろしくお願いいたします。今日、座って質問させていただきます。よろしくお願いします。みんなの党の川田龍平です。
私も、先ほど石橋委員からお話ありましたこの過労死の問題について、私も過労死対策基本法若しくは過労死予防法のようなものをやっぱり是非作るべきではないかと思いますし、過労死に対する対策を一日も早く厚生労働省の方にも取っていただくように私も要望いたします。
それでは、質問に入ります。
精神保健法改正法案において論点となるのは、既に罹患してしまった方のケア、家族の関与の在り方です。最も重要な対策の一つは病状を悪化させないことであり、精神的な健康を維持し、精神疾患にかかる前に未然に防げる環境をつくっていくことも重要です。
そこで、予防と重症化予防について確認させていただきます。
そもそも精神疾患の主たる原因は、多くが労働環境によるものだと思いますが、働く環境とメンタルヘルス問題の関係について現状はどのようになっているの でしょうか。労働者の精神保健環境に重点を置く労働安全衛生法が政権交代されてからなかなか提出されませんが、どのようになっているのでしょうか。
○政府参考人(宮野甚一君) お答えをいたします。
先生御指摘の働く環境とメンタルヘルスの関係でございますけれども、労働者のメンタルヘルスの不調につきましては様々な要因があると考えられますが、働く環境がメンタルヘルスに与える影響は少なくないと私どもも認識をしております。
このため、職場におけるメンタルヘルス対策の一環として、労働者のストレスの程度を検査し、必要な場合には就業上の措置につなげる等の対策を盛り込んだ 労働安全衛生法の改正案を一昨年の臨時国会に提出をいたしましたけれども、残念ながら昨年の臨時国会において廃案となっております。
この法案については、メンタルヘルス対策を含めまして重要な課題が含まれていると認識をしておりますけれども、国会への提出から時間もたち、本年二月に は第十二次労働災害防止計画が策定されるなど状況の変化もあることから、メンタルヘルス以外の内容についても改めて検討した上で再提出を目指したいという ふうに考えております。具体的には、十二次防の検討事項について法案に追加すべきものがないかなど、この六月から労働政策審議会において議論をお願いした いと考えております。
○川田龍平君 この法案提出は来年の通常国会を目指すということも聞いておりますが、法律が未整備の状態で放置しているとなれば、その間に心の病に苦しむ国民がどんどん増えていくことになるんではないでしょうか。
この法案は、言わば既に罹患している患者さんをケアする法案ですが、それだけでは不十分です。心の問題、精神疾患への入口の部分でしっかりとシャットア ウトをして、心の健康に常日ごろから関心を払うことができる社会環境を今から用意しておかなければなりません。この法律を適用しなければならない国民をど んどん増やしていくことになりかねません。心と労働の問題を直視して、労働環境の改善とメンタルヘルスの問題を早期からきちんと対処できるような抜本的な 精神保健事業の改革が必要です。
その意味でも労働者の心の健康管理は重要だと思いますが、現在のメンタルヘルス対策に併せて、来年の法案提出までに具体的にどのようなことを考えているのかお示しください。
○政府参考人(宮野甚一君) お答え申し上げます。
厚生労働省では、平成十八年に労働者の心の健康の保持増進のための指針を策定し、不調者の早期発見、適切な対応、職場復帰支援等、一次予防から三次予防 まで事業場における基本的なメンタルヘルスの取組事項を示しております。この指針に基づきまして、職場におけるメンタルヘルス対策を推進するため、都道府 県労働局、労働基準監督署による事業場に対する指導等の実施、全国のメンタルヘルス対策支援センターにおける相談対応、個別事業場に対する訪問支援等の実 施、ポータルサイトこころの耳を通じた情報提供等の取組を行っております。さらに、今年度は産業医を対象とした研修を実施することとしております。
今後とも、こうした取組を進めまして、職場におけるメンタルヘルス対策を推進してまいりたいと考えております。
○川田龍平君 労働安全衛生法では産業医の活用がうたわれていますが、産業医が十分にメンタルヘルスの知識があるかどうか疑問です。産業医のメンタルヘルス対策についてどのような研修体制が用意されているのかお示しください。
○政府参考人(宮野甚一君) 職場のメンタルヘルス対策を推進する上では、産業医等が適切な役割を果たすことが重要であると認識をしており ます。このため、産業保健推進センターを設置して、産業医を含む産業保健スタッフに対してメンタルヘルス対策等の具体的な取組手法に関する研修を実施をし ております。さらに、先ほど申しましたとおり、今年度はこれに加えて、産業医に対してストレス症状を有する労働者への面接、指導の実施方法等の研修を全国 で実施することとしております。
厚生労働省としては、産業医等に対しこれらの研修の受講を勧め、今後とも産業医等のメンタルヘルスに関する知識の向上を図ってまいりたいと考えております。
○川田龍平君 産業医にはゲートキーパー的な役割を期待しているということだと思いますが、そうであれば、産業医にはきめ細やかな気遣いが 必要でしょうし、過重労働が続いているような場合には、心の健康が損なわれないように使用者に毅然と物を言えるようにしなければいけません。また、使用者 もそういった配慮ができるようにしていただきたいと思います。
さて、現在、産業医の数は十分とは言えません。産業医が十分に機能できないのであれば開業医や専門医の活用も考えているのでしょうけれども、メンタルヘ ルス専門医の開業数が十分ではなく、いわゆる一般に開業されている診療所などでメンタルヘルスの問題を解決しようとする国民が多いのが現状だと思います。
しかし、こうした精神科を本来専門としていない開業医の医師が安易に精神科の薬剤を処方している現状は好ましい状態とは言えないのではないでしょうか。 ベンゾジアゼピン系の薬剤などは習慣性、依存性が高く、耐性が現れやすい場合もあり、十分な経験と臨床知識がなければ上手に使えないこともあるのではない かと思います。また、臨床の現場で安易にこうした薬剤を処方してしまう傾向があるのではないでしょうか。睡眠導入剤もそうですが、患者がつらいので処方す るのでしょうけれども、必要なものを必要なだけにしなければ、薬剤に依存してしまう国民をどんどんつくり出してしまいます。
メンタルヘルス系の薬剤を安易に処方できる現状を何とかできないものなのか、大臣の答弁を求めます。
○政府参考人(岡田太造君) 我が国の精神科医療では、諸外国に比べて多種類の薬剤が大量投与されている実態があると指摘されているところでございまして、厚生労働省としても問題意識を持っているところでございます。
このため、一般診療所を含みますレセプトデータを対象に向精神薬の処方状況を調べた調査を行ったところでございまして、その結果、一部の患者で多種類の 薬剤が処方されるケースがある、一方で九割以上のケースで二種類以下の処方であったというような結果が出ているところでございます。患者さんの病状により まして使われる薬というのは多種類の薬剤が必要な場合もありますので、この結果から一概に適切、不適切ということを判断するのは非常に難しいのではないか と考えております。
なお、平成二十四年度の診療報酬改定におきまして、睡眠薬又は抗不安薬を三種類以上処方した場合には診療報酬を減算するということとして適正な処方を促しているというようなところでございます。
また、今年度、向精神薬の処方実態について更に調査を行うこととしまして、その結果を踏まえて必要な対応について検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○国務大臣(田村憲久君) 答弁、全部答えられちゃったんですけれども、要は、薬というのは、効くのは効くんだと思います。ただ、問題はそ の使い方の問題であって、今委員おっしゃられたとおり、耐性のあるものを余り使っちゃいますともうそれで効かなくなってくると。そうすると、また大量に使 うか違う薬を使うということで多剤投与だとか大量投与につながっていくわけでございますので、そこも含めて、本当にどういう使い方がいいのかということは これは研究をしなければならないというふうに思いますし、今答弁にありましたとおり、実態調査をちょっとさせていただきながら対応の方を考えさせていただ きたいというふうに思います。
こういう問題があるという認識は厚生労働省も持っておりますので、しっかりとした対応をさせていただきたいというふうに思っております。
○川田龍平君 薬剤投与によって副次的に精神疾患が生み出されるようなことは絶対にあってはならないことです。医師が処方した薬剤が原因と なってメンタルヘルス問題が悪化したり発病したりするのは最もひどいことです。ここはしっかりと教育研修制度を充実させるとともに、使用の適正化に向けて 努力を怠らないように政府にお願いしたいと思います。
レセプト上で少なくとも常習性や依存性が疑われるものや明らかな倍量投与などは、診療報酬上の返戻措置をとっています。少なくとも、よほどの理由がある 場合にはレセプト上に特記事項として医師が記載したりするべきでしょうし、それがない明らかな過剰投与が疑われる場合にはきちんと対処するように何らかの 処置をとっているのかどうかをお答えください。
○政府参考人(木倉敬之君) お答え申し上げます。
先生御指摘のように、レセプトにおきまして医学的に明らかに過剰な投与あるいは不適切な投与ということにつきましては、審査支払機関におきまして査定を行って返戻をさせていただくということは当然であります。
また、患者さんが複数の医療機関を重複受診をされておるような場合にはなかなか審査上それが不適切と一概に言えないと、その一個一個のレセプトを見た場 合はですね、そういう場合もあろうかと思います。こういう場合につきましても、今度は、保険者の側におきましては、まだ取組が始まったばかりではございま すが、加入されている被保険者さんのレセプトを分析をいたしまして、やっぱり不適切な受診をなされている、あるいは投薬に重複が見られるというふうなこと につきましては、その方の健康上の問題、保健指導の問題として適切な受診を促すというふうなことの取組も始まっておるところでございますが、まだこれから でございます。
このようなものにつきましても、我々も積極的な事例を普及させるなどによって取組を促してまいりたいというふうに思っております。
○川田龍平君 次に、降圧剤バルサルタン、商品名ディオバンの論文問題について関連して質問いたします。
先ほどから繰り返し申し上げていますように、昨今の精神科治療においては薬剤の担う役割は重要性を増しております。効き目の鋭い新薬もどんどん投入さ れ、患者さんのQOLも向上しているという話も聞かれるようになりました。つまり、薬剤が正しく使われる環境が用意されなくては患者の予後は決して良くな らないということになります。
そうした観点から見ますと、今回のディオバンの論文の問題は、治療薬の使用の前提となる臨床研究の信頼性を失墜させ、薬剤使用のバイブルといってもよい 添付文書の中身にも影響を及ぼしかねません。そうなれば、臨床現場で何を信じて治療薬を選べばよいのか分からなくなってしまうのではないでしょうか。そう なれば、精神を病んでしまってもなかなか良い薬に出会うことができないようになり、結果的に患者の不利益につながりかねないのです。
まずは、事実関係として、厚生省はどういった指導をされたのでしょうか。昨日、医政局の研発課と経済課が当該製薬会社を呼んで注意喚起を行ったというよ うな話も聞いておりますが、当該研究論文を発表した京都府立医科大学への指導があったのかなかったのかも含めて教えてください。
○政府参考人(原徳壽君) お答え申し上げます。
昨日十六時から、ノバルティスファーマ株式会社の担当者を厚生労働省に呼びまして事情をお聞きいたしました。その事情を聞いた後、同社に対して、現時点 で判明している利益相反の問題についての厳重注意、また、今回の事案に関する全体像の更なる検証、再発防止策の策定、また、検証結果と再発防止策の厚生労 働省に対する早期の報告について、担当課より口頭で指導を行ったところでございます。今後新たな事実が判明すれば、それを踏まえ、また必要な対応を検討す ることとしております。
また、京都府立医科大学においては今回の事業について更なる調査を実施していると聞いており、まずはその調査結果の報告を聞いた上で、今後の対応について検討していきたいと考えております。
○川田龍平君 製薬企業が意図的に関与し、結果を何らかの形で捏造したり有意なものにしたりするような統計的処理を行ったなどということになれば、それは犯罪ですし、日本の臨床研究自体をおとしめる行為ですから看過できません。
このディオバン臨床研究については、いわゆる製薬企業などが主導する臨床研究とは異なり、医師が主導して実施する臨床研究として意味のあるものであり、 また日本初の大規模臨床研究だったと聞いています。つまり、日本の治験を変えると言っても過言ではない第一歩のはずでした。その第一歩からしてこういう不 手際があったとなると、臨床研究を活発化させ日本発の創薬を推進していくと政府は言っていますが、本当に大丈夫なのかと言いたくもなります。
当該製薬会社が意図して関与をしたのかどうかということも気になりますが、それ以上に、この臨床研究を主導した京都府立医科大病院の無責任さは、命を預 かる医師を養成する大学としてこれで良いのかと怒りを感じます。京都府立医科大学では、このディオバン問題を理由にしてディオバンを製造して販売している 会社を取引停止にしたといいますが、そもそも問題となった論文を公表したのはこの大学の教授です。この大学の教授が自らの責任で行った臨床研究において利 益相反の開示義務違反があったのであって、どうして被害者のように振る舞って、あたかも製薬企業に責任があるかのような顔をするのは、余りに当事者意識が なさ過ぎるのではないでしょうか。
医師主導の臨床研究なのですから、研究グループの誰がどのようにかかわっているかを把握するべきなのは当然のことではないでしょうか。それとも、どこの 誰だか分からないような人に研究の中核部分である統計解析を任せた結果を学会誌に発表したとでも言うのでしょうか。仮にそうだとすれば、そんな臨床研究で いいのでしょうか。京都府立医科大学の当該製薬会社への取引停止勧告は、日本医学会の高久会長も京都府立医大の行為は行き過ぎと断じており、京都府立医科 大学のような大学が臨床研究をしていくことは将来的に大きな禍根を残すのではないかと不安に思います。
そもそも医師は、臨床研究の手順や治験の手順などは国際ルールを含めて熟知しているのでしょうか。手順も知らない状態で臨床研究をやられては人体実験で す。世界標準のルールを遵守して行った臨床研究だからこそ、世界的に評価され、その結果を用いて医学が発展していくのです。
京都府立医科大は当然ですが、過去に臨床研究の手順がきちんと理解されていなかった慶應義塾大学病院なども含めて、学内や病院内における臨床研究や治験に対する理解が深まっているのか再点検をしっかりしていただきたいと思いますが、政府の答弁を求めます。
○政府参考人(原徳壽君) 早期・探索的臨床試験拠点に選定されております慶應義塾大学病院におきまして、昨年、患者の同意を得ずに三十一 名から手術中に骨髄液を採取するという臨床研究に関する倫理指針に反する研究が実施されていたことが判明いたしました。これを受けまして慶應義塾大学病院 では、関係職員の教育や同意書の電子的確認システムの導入などの再発防止策を取りまとめたところでありまして、厚生労働省ではその進捗を確認することとし ております。
また、他の早期・探索的臨床試験拠点や臨床研究中核病院に対しても、この臨床研究に関する倫理指針を遵守した臨床研究が実施されているかの調査を実施いたしましたが、その他のところでは特段の問題は認められなかったところでございます。
これらの医療機関におきましても、適切に臨床研究が実施されるよう、今後とも進捗管理をしっかりと行っていきたいと考えております。
○川田龍平君 さて、医学教育において臨床研究や治験がどのように扱われているかについても併せて質問いたします。
政府も臨床研究を推進する施策を進めていますから、当然、次世代教育という意味で、学部教育でも臨床研究の手順や治験の在り方などについて一定の配慮がされているかと思いますが、現状はどのようになっているのでしょうか。文部科学省の見解をお答え願います。
○政府参考人(山野智寛君) お答えいたします。
委員御指摘のように、やっぱり医学部の教育の中で治験の在り方であるとか臨床研究のやり方とか、その際にやっぱり留意すべきことであるとか倫理性ということについてきちんと教育するということは非常に重要なことだと思っています。
それで、医学部の教育、医学部というのはいろいろな大学あるわけなんですが、やっぱりそれぞれの大学で教え方については創意工夫はあるものの、全ての大 学の医学部生がきちんとこのことについては勉強するんだというベースになるものとして、医学教育モデル・コア・カリキュラムというものを作ってございま す。その中で、御指摘のような医療と医学研究における倫理の重要性であるとか、治験を含めた研究目的での診療行為に要求される倫理性等についてきちんと学 ぶということが明記されてございまして、委員御指摘のように、この分野、重要ですので、各大学がきちんと取り組むように促していきたいと思っています。
○川田龍平君 医師については、理念としてきちんと教えていると理解をしました。若い医師が高い意識を持って医師主導臨床研究や治験を担える知識と高い倫理観を持ってくれれば、彼らが卒業して現場に立ち、数年がたてば状況は改善してくると信じています。
ただ、文部科学省も、京都府立医科大学のように当事者意識の欠けている大学もあるのですから、こういった大学にはしっかりと指導をしていただきたいと思 います。コアカリキュラムがしっかりしていても、教える者の意識が低ければ、学生は十分な学習機会を得たとは言えません。この分野は、日本が創薬・医療イ ノベーション立国を目指すのであれば核となる分野の一つですから、文部科学省としてしっかりとフォローアップをお願いしたいと思います。
併せて確認しますが、現在策定中の薬学コアカリキュラムでは、臨床研究、治験などレギュラトリーサイエンス分野の取扱いはどうなっていますか。今回の京 都府立医大の取引停止問題でも、薬剤部長が談話を発表されたり、あるいは治験や臨床研究の評価を担当するPMDAなどには薬剤師が多く勤務し、審査体制の 強化を図っているようですから、今回のような事例を未然に防ぐような厳しい目を持った薬剤師養成を企図されていると考えてよろしいでしょうか。文部科学省 の答弁をお願いいたします。
○政府参考人(山野智寛君) お答えいたします。
今、医学部のコアカリキュラムの説明をしましたが、薬学部についても同様のコアカリキュラムを作ってございます。
それで、今、特に薬学部は六年制になったということで今改訂作業を進めてございまして、その中で御指摘のような項目につきましては、例えば大きな項目と して、薬剤師に求められる倫理観というような項でありますとか、臨床研究デザインと解析というような一つの項目を作りまして、その中で一連の物事を教えて いくというようなことを考えてございます。また、そういう医薬品とかに係る法規範という中でも、レギュラトリーサイエンスの必要性と意義について説明でき るというような内容まで書いてございまして、今この改訂中のものは、今ドラフトができて、今各大学であるとか薬剤師会とか関係機関に意見を求めているとこ ろでございますが、そこで必要な修正をして、今後はまた広く国民の意見をパブコメで求めることによって内容の充実したものを作っていきたいというふうに考 えてございます。
○川田龍平君 医師養成教育ではその重要性を認められ、医師主導治験という方向性を敏感に感じられてコアカリキュラムにしっかりと導入して いるようですが、薬剤師については、通称コアカリ検討会における議論の推移を見ていると、アカデミアから消極的な話ばかりが出ているようです。医師養成教 育とは異なり、国家戦略が全く見えていないのではないかと思うような発言だと気になりました。これから薬事法の改正もあり、審査の迅速化と安全性評価の充 実が図られるのですから、ますますこの分野の知見を有した専門家が必要になってくるのです。薬学でもきちんと教えていただくようにお願いしたいと思いま す。
ところで、今回のノバルティス問題では、論文の共著者の所属大学に臨床研究中核病院に指定されている病院も入っているようですが、国家戦略として指定さ れている病院については、早期・探索的臨床試験拠点病院も含めて、こういう病院群では医師の教育や倫理委員会の独立性の担保などは大丈夫なのでしょうか。 政府の答弁を求めます。
○政府参考人(原徳壽君) 厚生労働省としましては、日本発の医薬品、医療機器の創出などを目的として臨床研究中核病院や早期・探索的臨床 試験拠点の整備事業を進めております。これらの整備事業では、その補助要件の中で、まず臨床研究に係る専門職種の配置のほか、臨床研究を実施する医師等の 関係者へ必要な教育を行うこと、これは倫理のことや、あるいは臨床研究を進める具体的な話、それから倫理性、科学性、安全性、信頼性の観点から、適切かつ 透明性の高い倫理審査ができることを要件として求めております。
これらの医療機関において適切に教育がなされ、また透明で独立性が担保された倫理審査が実施されるよう、今後とも進捗管理をしっかりと行っていきたいと考えております。
○川田龍平君 ところで、この論文問題なのですが、文部科学省に確認させていただきますが、そもそもこういった不手際やプロトコル違反のあ る臨床研究を実施しているような大学のアカデミアとしての信頼性についてどうお考えなのでしょうか。今回の事例は日本の研究の信頼性を失墜させるものであ り、日本の国際競争力をおとしめる恥ずかしい行為です。利益相反を開示しなかった大学側の責任は責任として十分に処理した上で、製薬企業の関与がどれほど あったのかを検証し、そこに捏造などの行為があったと認定された場合には、製薬企業の利益優先のための行為を非難するべきだと考えます。
ですから、データの捏造や解析における恣意的な介入の有無が確認されていない現状では製薬会社を責めることはできないと考えていますが、その上で大学と 研究の在り方について文部科学省にお尋ねしますが、医学論文や薬学論文というのはおよそ国際的に信頼できるものなのでしょうか。
例えば、病院薬剤部長が学位を取得して大学薬学部で教員になる例が多いと聞きます。今回のような事例を見ていると、これは、医薬業界、医療業界全体の構 図ではないかと不安になります。人の命にかかわる分野です。不正が横行して、名義貸しのような研究が医師主導研究という名の下で実行されては困ります。医 学・薬学分野の研究論文の質の確保という点から、また学位取得の公正性という面からも、文部科学省の見解を求めます。
○政府参考人(山野智寛君) お答えいたします。
まず、一般論でございますけど、今回の医療とか薬学にかかわらず、全ての分野の研究者には高い倫理性、具体的に言いますと、例えば研究論文を書くときに はデータを捏造したら駄目だとか盗用したら駄目だとか、あと、それとか、利益相反には適切に対応しないと駄目だとか、あと、医学系の論文であれば患者のプ ライバシーをきちんと守るとか、そのような高い倫理性が全ての研究者に求められてございまして、それは今までのそういう研究者のいろいろな分野の歴史の中 で、研究者コミュニティーを中心に、国内だけじゃなくて国際的にもやっぱりきちんとしたガイドラインを作るとか、そのようなところでそういうことの徹底と いうのが図られてきておるところでございます。
そのような中で、もう委員御指摘のように、特に医学の研究とか薬学の研究はやっぱり命に直結する部分があるということですから、より一層やっぱりそうい う高い倫理性が求められるんだと思います。そういう意味で、今回、このような事案が起きたということは、全体のそういう信頼性を損なう、臨床研究の、損な わせるということで、非常に遺憾であるというふうに考えています。
ただ、若干、委員が言われたのでちょっと申し上げますと、我が国の医学の研究者とか薬学の研究者が、先生の言葉で言うと、やっぱり基本的にはほとんどの 人は真面目に研究しておる研究者でございますので、日本のそういう医学論文が国際的に信用されないというようなことはないというふうに考えています。た だ、今回の事例は事例としてきちんと調査をして、こういう物事に対する対応は、原則はまず研究者がきちんと自浄作業をやるんだというのがあって、その周り の、当然、研究者コミュニティーであるとか大学とかが自律に基づいて自浄作用を発揮してやっぱりきちんとやっていくということで、そういうことで各大学と か関係企業なんかにおいて今調査が行われてございますけど、そこらの結果も踏まえて、やっぱり教訓にすべき内容、改善すべきポイントとかにつきましては各 大学、各研究コミュニティーなんかに周知して、やっぱり適切な対応を今後取っていきたいというふうに考えてございます。
○川田龍平君 やはり臨床研究の倫理指針、指針という段階では、やっぱりこれが非常にまだ問題があることが繰り返されているという段階におきましては、やはり法制化も含めてしっかりやっていくべきだと思います。
次に、精神保健改正法案について、さっきの議論の繰り返しになる部分もあるかと思いますが、幾つか原則的なことを再度確認させていただきます。
まず、任意入院が原則であり、強制入院は例外であるということをきちんと認識されているでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 精神疾患は本人に病識がないことも多いという特性がございまして、本人の同意に基づかない医療保護入院や措置 入院という制度が設けられているところでございます。このような本人の意思によらない入院については、患者本人の権利擁護の観点を踏まえて、最も適切な形 態で行われるように留意が必要だというふうに考えています。
こうした観点から、これまでの法改正におきましても、できるだけ本人の同意により入院させるよう努めるとともに、任意入院が難しい場合に初めて医療保護入院が行われることを法律上明確化させていただいているところでございます。
また、今回の法改正では、医療保護入院が本人の意思によらない入院であることを踏まえまして、その入院期間の短縮化を図るという観点から、精神科病院の管理者に新たに早期退院を促すための各種義務を課しているところでございます。
引き続き、措置入院や医療保護入院に関する法令の適切な運用に努めてまいりたいと考えています。
○川田龍平君 障害を理由に強制入院させられることと障害者権利条約十四条との整合性は付くのでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 障害者権利条約第十四条は、自由の剥奪が障害の存在により正当化されないことを確保することを規定しているというふうに承知しています。
精神保健福祉法に置かれています非自発的入院に関しましては、措置入院は、自傷他害のおそれがある患者に対する医療の提供や保護を通じて、他害を防止し たり患者本人の自傷を防止するという本人の利益の保護を図るためのものでございます。また、医療保護入院も、入院の必要性について本人が適切な判断をする ことができない状態の場合に、あくまで本人の医療及び保護を図るためのものだというふうなことで考えております。
精神障害者であることのみを理由として適用されるわけではないというようなことでありますので、権利条約の十四条上問題はないというふうに考えているところでございます。
○川田龍平君 今回の改正案で、より医療保護入院その他の入院数についてそれぞれ減少すると想定しているのでしょうか。数字的目標があれば、それもお示しください。
○政府参考人(岡田太造君) 今回の改正で保護者制度を廃止することに伴いまして、医療保護入院につきましては、精神保健指定医の一名の診断に加え、保護者ではなく家族などのうちいずれかの者の同意で入院を開始できるという形にさせていただいているところでございます。
このように、改正前は保護者一人の同意でございましたが、改正後は家族などであれば医療保護入院の同意ができるということになりますが、精神保健指定医 の診断が必要だということは改正の前後で変わらないということでございますので、真に入院治療が必要な患者が医療保護入院により入院することになるという ふうに考えているところでございます。
医療保護入院に当たりましては、患者本人に病識がないという特性からなかなか医療機関の受診につながりにくいという状況がございまして、今回の改正によ りまして医療保護入院となる患者が格段に増えることは考えづらいんじゃないかというふうに考えているところでございます。
○川田龍平君 厚労省としては入院を減らしていくという方針のはずですが、違いますでしょうか。減らすための改正になっていないんではないでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 世界的に見て入院の期間が長いという現状があります。そうはいいながらも、入院期間は若干なりとも短縮はしてお るわけでありますけれども、そういう長期入院患者が多いという現状においてどう対応していくかということで、例えば、急性期のところに手厚い対応ができる ように精神病床の機能分化というものを図っていく、これにおいて急性期のところに手厚い医療を提供できるようにしていく。それからまた、患者の家族だけで はなくて、地域で支えられる、こういう仕組みをつくっていくということも大変重要であります。
あわせて、退院をしたときにやはり、先ほど来お話が出ておりますとおり、多職種の方々がかかわり合って、そこで例えば、もちろん外来医療もそうでありま すけれども、訪問支援等々をしっかりとしていくと。そういう体制整備を整えることによって、一度入った方々が早く退院してそして地域で生活できる、地域移 行ができる、こういう準備を進めていくことも大変重要でありまして、そういうものも含めて、今後、指針をこの法改正の中において策定するということになっ ておりまして、これは、先ほど言いましたような機能分化、病床の機能分化でありますとか、多職種の方々の一つの方針みたいなもの、指針みたいなものを作っ ていくと。
いずれにいたしましても、先ほど来話が出ておりますとおり、保護者制度というものはこれを廃止をする、それはいろんな御意見はあられるんだというふうに 思いますけれども、保護者の方一人の責任というものをこれを解放するといいますか、そうじゃなくて家族全体でしっかりと受皿になっていただけるというよう なことを進める中において家族の方の中の同意というような形を進めるということでありますが、一方で、退院に対しましては、逆に家族の方々の方から申出が あればこれは審査会の方で議論をしていただきながら退院ということもございます。
先ほど来話出ておりますとおり、精神科病院の管理者には、これはやはり早期退院というものの義務といいますか、各種義務を課しているわけでございますか ら、先ほど来言っておりますとおり、入院は、それは医療にアクセスするという意味では入院という方法もあるわけであります。それは保護入院という方法もあ るわけでありますけれども、入ったらやはりなるべく早く退院をいただいて病気を治していただく、若しくは軽くしていただいて地域で生活をいただくというの がこの法律の趣旨でもございますから、そのような形で体制を整えてまいりたいというふうに思っております。
○川田龍平君 OECDの国際的なデータにおける精神病院の平均在院日数と人口千人当たりの精神病床数について、一九六〇年代からの推移、 そして最新データについて、各国と日本の状況を示していただこうと思っていたのですが、石橋委員の資料にも、ここにありますとおり、ここに十か国の精神医 療の国際比較のグラフを石橋委員がお示ししてくださっておりますが、日本の精神科病院は強制入院が乱発されていることが分かったと思います。
強制入院として、主に措置入院と医療保護入院がありますが、全精神科医療のうち強制入院が占める割合は四〇%以上で、そのほとんどが医療保護入院となっており、先進各国がおおむね一〇%程度なのに対して、強制的入院の発動が乱発されている状況と言わざるを得ません。
日本にだけ強制入院が必要な重症の人が多いのでしょうか。大臣の見解を伺います。
○国務大臣(田村憲久君) 日本だけ多いかどうかといいますと、それはそのようなことを十分に検証したわけではないわけでありますけれども、実態といたしまして、非自発的な入院というもの、これが多いということは事実でございます。
そういう状況の中において、とはいいながら、今、更に大きな問題として入院期間が長いという問題がございますから、これに対してしっかりと対応していくということを念頭に置いておるわけでございます。
なお、先ほど来申し上げておりますとおり、悪化させないためにも早く医療機関にアクセスしていただくということは大事でございますから、これは保護入院 にかかわらず、やはり医療機関にアクセスするためのいろんな我々は対応をしていかなければならないというふうに考えております。
○川田龍平君 OECDの中でも日本がぬきんでてやっぱり在院日数と病床数共に多いという中で、この保護者制度を廃止したことは一定の前進だと評価できますが、廃止によって家族の負担はどう変わると見ているんでしょうか。負担は減るのでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 外国との比較で先生から御指摘がございますが、歴史的な背景もあろうかと思いますが、保護者制度につきまして は、保護者制度は明治時代におきましては精神病者監護法で監護義務者というものに端を発して、保護義務者となりましたのは、さきの昭和二十五年に法律がで きまして、そういう形で保護者が、一人の家族のみが保護者として様々な義務を負うという制度が設けられていたところでございまして、これは他の障害者や他 の疾病の患者さんにはない精神障害者の独自の制度でございます。
この保護者が担う義務は、治療を受けさせる義務であるとか医師の診断に協力する義務、医師の指示に従う義務、財産上の利益を保護する義務などがありまし て、精神障害者の家族の高齢化に伴いまして、家族の方々が非常に負担感が高まっているというようなことでございます。今回の改正では、こうした精神保健福 祉法に規定されています義務に関する規定を含め、保護者に関する規定を全て削除させていただくということにさせていただいております。
しかし、精神障害者の家族の方々には、法改正後も引き続き、一般の医療であるとか他の障害者の方の御家族と同じように治療や社会復帰について重要な役割を果たしていただくことになると考えているところでございます。
○川田龍平君 精神科医療は、病院内精神医療から地域精神医療へと展開するのが国際的な常識となっており、厚生労働省もそれを目指している はずです。精神障害者も、障害者総合支援法の下ではサポートを受けながらも、自己決定によって自立すべき存在です。日本の現状はこれと懸け離れています。
そこで、新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム第三ラウンドが設けられ、精神保健福祉法から保護者の義務規定を全て削除すべきだとし、さ らに、強制入院としての医療保護入院を保護者の同意を要件としない入院制度に改めるべきだという結論を昨年六月に出しています。
ところが、この度の改正法案では、医療保護入院に家族等のうちいずれかの者の同意を必要とし、現行二十条で保護者となり得る者を家族等としています。こ れは検討チーム第三ラウンドの結論とは全く異なるものです。従来は保護者に限定されていた同意者が家族等のうちの誰でも同意できることになって、その負担 を負う者が拡張される結果となっています。結果として、強制入院を発動しやすい形に制度を変えてしまっているのです。これでは、日本の精神科医療の問題を 更に悪化させ、国際的にも日本の精神科医療の異常性が更に際立つものになってしまうことが予想されます。
そのため、検討チームのメンバーが座長の町野上智大学教授を筆頭に田村大臣にあてて意見書を提出するという前代未聞の事態となっていますが、意見書を受け取った大臣はこの事態をどうお考えでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 検討チームの報告ですね、昨年六月に、今委員がおっしゃられたように、保護者制度を廃止した上で精神保健指定医 一名の診断で入院ができるようにするというような、そのようなことを提案をいただいたわけでありますけれども、一方で、やはり一般の医療でもインフォーム ド・コンセント等々言われる中において、やはり今どういう状況なのかということを、御本人がなかなか自分の病状等々御理解をいただけないという障害の特性 がある中において、やはり御家族にはそれはちゃんと御理解をいただく必要があるのであろうと。そうなったときに、やはり御家族のどなたかにはやはりそこの ところの御理解をいただく中での入院という、そこは担保を取らないと、一方で、患者の方が自発的に入院されるわけではございませんので、ある意味、権利の 擁護という問題もございます。
今までは、そういう中において、保護者制度でありましたからお一方に全て責任が行っていたわけでありますが、それは家族の中のどなたかということにおい てはそこはちょっと薄まったんだろうとは思うわけでありますけれども、いずれにいたしましても、そのような問題があることは我々も認識しつつも、措置入院 であっても二名、これは指定医の方々が入院の診断をされるわけでありますから、そこをこの医療保護入院で指定医の方々一名の診断でという部分もどうなのか なという部分もございまして、最終的に、退院した後の対応のこともございますから、やはり御家族に御理解をいただくという意味で、今回、御家族の同意とい うものを入れさせていただいたということでございまして、私に対していただいた内容に関しましては真摯に受け止めさせていただきますけれども、三年後の見 直しに向かっていろんな御議論をさせていただきたいというふうに思っております。
○川田龍平君 次に参考人の質疑もあって、その後質疑もありますので、内容については次の質疑にまたやりたいと思いますが、最後に、この改正法案は精神科病院の経営安定のためのものではないかというふうに考えてしまいます。
といいますのは、日本精神科病院協会の山崎会長は、民主党政権下において、日本精神科病院協会は野党になった自由民主党の先生方と精神医療保健福祉を考 える議員懇談会を通して地道に精神科医療提供体制に関する議論を重ね、今回、安倍内閣で重要な役職を務めることになり、安倍晋三内閣総理大臣、田村憲久厚 生労働大臣ら、これまでの精神科病院協会の歴史にないような豪華な顔ぶれが政府・自由民主党の要職に就任しており、日本精神科病院協会アドバイザリーボー ドメンバーである飯島先生と丹呉先生も内閣官房参与として参画されて、頼もしい限りと述べておられます。
協会からは、この政治団体からは総理や大臣にも数百万円の献金がありますが、患者の立場を考えない癒着の構造があるのではないかと疑われても仕方がないように見えますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) もうこれは御承知のとおり、我々が政権を握っておる前に検討会を打ち立てていただいて骨格をお作りをいただいた 案でございます。そういう意味では、どういうおつもりでそういう文章をお書きになられたか分かりませんけれども、少なくとも、退院を早期にするための各種 の義務を課すなどというのは、多分、自由度という意味からすれば、どういう思いの中でその条文をお読みになられておられるか分かりませんけれども、そうウ エルカムじゃないと言うとこれまた問題が起こるのでそうは言えませんから難しいわけでありますが、そこは公平なる法案審査をいただく中において御理解をい ただける部分ではないのかなというふうに思っておりますので、決してそのようなことはございませんので、御安心をいただきますようによろしくお願いいたし たいと思います。
○川田龍平君 ありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/183/0062/18305280062009a.html
衆議院
第186回国会 予算委員会第五分科会 第1号
本分科会は平成二十六年二月二十四日(月曜日)
<前略>
○小池(政)分科員 結いの党の小池政就です。
大臣以下、きょうは朝から、どうもお疲れさまでございます。
私は、いつもはまた別の常任委員会で審議しているんですが、なかなか田村厚生労働大臣には質疑をさせていただく機会がないので、本当にきょうはありがたく思っております。
きょうは、三十分という時間でございますが、主に精神科医療の薬剤の処方についてお伺いをさせていただきたいと思います。
大臣、もう本当によく御存じだと思いますけれども、薬の効果ですとか安全性というのは単剤で確かめられているということでありまして、同じ性能の薬でも 単剤処方というのが原則ということであると思います。二剤まではあり得るとしても、三剤以上併用になると、効果も安全性も確かめる手段がほとんどないとい うところであります。
きょうお配りの資料をごらんになっていただけますでしょうか。幾つか図表をつけておりますけれども、資料の一番には、これは国際比較になりますけれども、日本が諸外国に比べ、抗精神病薬を中心に多剤併用の処方が目立つというところであります。
少し古いデータになりますが、資料の二におきましては、これは国立精神・神経医療研究センターというところが調査したものでありますが、入院中の統合失調症患者に対して、抗精
神病薬が三剤以上処方されている割合というのが四二%という結果が出ております。
その次の裏面の資料三になりますと、これはまた別の調査でありますけれども、外来も行われておりまして、外来でも抗精神病薬の処方が三剤以上の割合が二六・八%という調査もあるところでございます。
また、今度は同じページの資料四、下になります。こちらにおきましては、二〇一〇年の調査におきまして、抗うつ薬というものが三剤以上処方されていた割 合、これが、四つグラフがあるんですけれども、この右上の、抗うつ薬の一番下の二〇〇九年の七・二と一・七、これを足したのが八・九%ということになりま す。
また、睡眠薬におきましては、次のページの資料五になります。こちらの上のグラフの、さらに二つある上の部分の一番右、二〇〇九年の一番右でありますけ れども、これは睡眠薬が三剤以上処方されていた割合でございまして、これらも決して低い数値ではないというところであります。
ここで厚労大臣にお伺いさせていただきますが、多剤が処方されているというこの状況について、実際、把握されておりますでしょうか。
○佐藤副大臣 田村大臣は後ほどお答えいただくといたしまして、最初に御答弁をさせていただきたいと思うんです。
まさに小池委員が御指摘いただいた資料一に始まるこういう数値、私ども厚生労働省としても大変問題意識を共有しておりまして、結論から言うと、我が国の 精神科医療では、諸外国に比べまして多種類の薬剤が大量に投与されているという実態がある、この御指摘は、まさに本当に我々としても大変な問題があるとい う問題意識を持っているわけでございます。
厚生労働省としても、平成二十二年度に行われました向精神薬の処方実態調査によりますと、九割以上のケースで二種類以下の処方である一方、一部の患者でやはり多種類の薬剤が処方されているというケースがあった、そういう実態調査の結果も出ております。
そこで、厚生労働省では、今までも三つぐらい施策を打っておりまして、一つは、向精神薬処方実態に関する継続的な調査。要するに、平成二十二年度にやっ た後も、引き続いてこれはしっかりと調査していこうということで、調査をしているということが一つ。二つ目は、前回の平成二十四年度の診療報酬改定で、睡 眠薬または抗不安薬を三種類以上処方した場合の減算ということも入れており、その前から比べると二割減、こういう診療報酬改定で入れている。三つ目が、向 精神薬の適切な処方を促すため、かかりつけ医等を対象とした抗うつ薬の使い方等についての研修を行ってきた。そういう取り組みを行ってきたところでござい ます。
さらに、これは今答申の段階ですが、平成二十六年度の診療報酬改定において、今回、中医協の答申では、向精神薬の多剤処方を行った場合のさらなる減算規定を設けることとされております。
今後もさらに、今申し上げましたように、実態調査というものも引き続きやっておりますので、そういう結果も踏まえつつ、この向精神薬の適切な処方というものはしっかりと厚生労働省としても推進をしてまいりたい、そのように考えております。
○小池(政)分科員 ありがとうございます。
現状把握ということでお尋ねしたんですが、その先の対策の話までしていただきまして、ちょっとこれからの質問とかぶってしまうかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
今、確認及び調査の件をお伺いいたしましたが、それでは、それを踏まえて、実際、対処のタイミングでありますとかそれから中身について、改めて、今度は大臣にお伺いさせていただきたいと思うんです。
この多剤の大量処方というのは、もう大分前から問題になっていたわけでございます。報道等では二〇〇二年ぐらいからかなりクローズアップされておりまし て、その後、実際の国の対応としては、確認しているところでは、二〇〇九年九月に厚生労働省が、今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会というと ころの報告書でこの問題について指摘しております。
ちょっと読ませていただきます。「特に、統合失調症に対する抗精神病薬の多剤・大量投与について、その実態の把握に努めるとともに、例えば単剤投与や切替え・減量といった改善を促すため、情報公開や評価の方法等について検討すべきである。」と提言されております。
その先ですけれども、二〇一〇年、先ほどおっしゃられました、診療報酬等の中でこの取り組みというものが出てくるわけでございますが、二〇一〇年の診療 報酬の改定では、抗精神病薬を二剤以下にするとわずかに加算されるというような対応がなされておりまして、二〇一二年度の改定では、睡眠薬と抗不安薬につ いて、それぞれ三剤以上処方した場合に減算するという措置がとられております。
また、二〇一四年度、これからの改定におきましては、睡眠薬と抗不安薬の減算も前回と比べて厳しくなり、さらには、初めて抗うつ薬と抗精神病薬も減算の対象となったわけでございますが、ただ、こちらは四剤からということでもあります。
ようやく、こういう形で、診療報酬を含めて取り組みがされているところでございますが、いかんせん、やはりタイミング的に遅いんじゃないかということを 思ってしまうわけでございますが、ここまで対応が遅くなったその経緯、また、その理由というものはあるんでしょうか。大臣、お願いします。
○田村国務大臣 日本は、そういう意味では、他国と比べて非常に多くの薬を特に精神科の疾病に関しては使ってきた、これは向精神薬全般だと 思います。最近は、新しい、いい薬が出てきまして、多剤投与しなくてもかなり効くものが出てきておるということがあるようでありまして、新しい、いい薬を 使う、その意味では、いろいろな新しい研修という中において、そういうことも医療現場の方々はいろいろ勉強されておられるんだと思います。
実は、今般、減算をするわけでありますけれども、臨床の現場の先生方とお話ししますと、今まで幾つかの薬を使ってある程度症状を抑えてきた、そういうも のに対して、薬を変えたらどういうような影響が出るかまだわからない部分もあると。そういう部分に関して、どのように考えていくか。薬を変えたがために症 状が悪化するということもあるわけでありまして、そういう臨床での悩みもあるんだというような、本当に現場の先生方のいろいろな苦悩、お悩みも聞かせてい ただきました。
しかし一方で、いい薬も出てきておるわけでありますし、それに対する弊害というものも、確かに、先生言われるとおり、起こってきておるという話も聞くわ けでございますので。薬だけに頼らない、いろいろな療法もあります、認知行動療法等々含めて、睡眠障害に対しても対応していく、いろいろなことも含めて、 なるべくこれからは多剤投与しないような形で、それぞれの症状に対して対応していく。
そういう流れの中においての今回の診療報酬改定であったわけでございますので、方向性としては、中医協の中においても、そのような議論のもとでの今回の改定であったというふうに認識をいたしております。
○小池(政)分科員 今私が指摘しているのは、薬の性質ではなくて、多剤そのものの結果による影響というところでありまして、先ほどの国際 比較の中でも、やはり日本がずっと多剤の割合が多かったわけでもありますし、また、この期間において、その影響ということで、被害も出てきているわけでご ざいますから、もう少し早く対応すべきだったのではないかなということも思います。
また、これからの対処といたしまして、減算という話がありましたが、ただ、こちらは、抗うつ薬と抗精神病薬は四剤からの減算ということになっていまして、三剤はペナルティーがないわけでございます。
このような取り組みで本当に今十分だと思われるんでしょうか。また大臣、お願いいたします。
○田村国務大臣 これは、中医協の中において、専門的な観点から、それぞれの立場の方々の御議論をいただいたということであります。だから、三剤がいい、三剤を勧めるというわけではありません。
今も申し上げましたとおり、いい薬がたくさん出てきている中において、今までのように多剤を併用して使う、そういうような治療法だけではなくて、いい薬 の中においては、単剤でも十分に効くものも出てきておりますから、そういうものの普及も含めて、それぞれの臨床の先生方が、それぞれ自己研さんされる中に おいて、これからはそういう方向性でいっていただけるんであろうというふうに思います。
○小池(政)分科員 ぜひ原則に立ち返っていただいて、薬というのはもう単剤で処方する、それから、それについての安全性が確保されている わけでございますから、三剤以上というのはエビデンスすらまだ非常に危ういところでありまして、そこをどうにかしていくということをぜひこれからも検討し ていただきたいと思います。
次に、これはちょっと、私も、一見聞くと専門的な言葉のように思えるわけでございますが、ベンゾジアゼピンというものがありまして、ベンゾ、ベンゾとい うことで、知っている人は御存じだと思いますけれども、よく睡眠薬とか抗不安薬について処方されているものでもあります。
これについても長期の処方とか安易な処方というものが問題になっているところでございまして、こちらも、国際比較によりますと、INCBという、国際麻 薬統制委員会というところが出している調査によりますと、日本はアメリカの約六・五倍、人口当たりの消費量が多いというような調査もありますし、また、実 際にこれが入っているような睡眠薬を処方された患者の四人に一人は四年後も薬を飲み続けていて、薬の量が減っていなかった人というのは六八%に上ったとい うような調査もあるところであります。
また、処方によって依存とか離脱症状という被害の問題についても、十年以上前から指摘されてきたところでございます。
これは、国際的には、この危険性というのは一九七〇年代には明らかになっておりまして、各国では規制が進められてきたところでございます。
資料の六をごらんになっていただけますでしょうか。
資料の六はガイドラインですね。これは海外のガイドラインの例でありますけれども、アメリカと、それからイギリスです。アメリカの場合、ベンゾジアゼピ ンは依存の可能性があり、使用には注意が必要。イギリスの場合は、二週間以上のベンゾジアゼピン投与は行わないというような規制がなされております。
日本においても睡眠薬のガイドラインというのが去年から示されたということでございますが、これについても、やはり大分期間があいてしまったなという思 いがあるわけでございますが、これも、なぜここまで対応がおくれたのか、もう一度、同じような質問になりますけれども、大臣、よろしいでしょうか。
○田村国務大臣 全般的に、先ほど来申し上げていますとおり、日本の中においては、メンタル面の問題に関して、特に精神科疾病、それから睡 眠障害、こういうものに対しては、九割は二種類、二剤というような話なんですけれども、一部でそのような多種類の投与があるということであったわけであり ます。
そのような中において、やはり近年いろいろな問題点の指摘をいただいておりますので、今言われたような形で、厚生科学研究においてガイドラインをお示しするという形において、二十五年度にお示しをさせていただいたということであります。
○小池(政)分科員 答弁も戸惑っているということからは、そもそも対応はおくれていないんじゃないかという印象も受けてしまうわけでございますけれども、やはりこの期間におきましても、諸外国に比べて対応というのが後出しということになっております。
また、中身についても、処方期間の上限でありますとか、それから、今回、睡眠薬のガイドラインでありますけれども、抗不安薬についての取り組み等もこれ から考えなくてはいけないと思うんですけれども、その点について、中身について、これからまたさらに取り組むおつもりなのかどうか、お聞かせいただけます でしょうか。
○佐藤副大臣 済みません、小池委員、ちょっと質問取りのやり方がまずかったのかわかりませんが。
私の答弁で足りるかどうかわかりませんけれども、先ほど来、委員が質問の中でも言われておりますように、睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラ インは、昨年、二十五年度より、ホームページに既に決めたものを載せていただいているんですね、これは御存じだと思うんですけれども。これは国立精神・神 経医療研究センターのホームページ上で公開して、また、関係学会等を通じて周知を行うなど、このガイドラインの普及を図っている、そういうことはさせてい ただいております。
さらに、大臣も答弁の中で言われましたけれども、厚生労働科学研究におきまして、こういう薬物療法だけではなくて、認知行動療法なども活用した、そういう睡眠障害の治療のガイドラインの作成等に着手をしているところでございます。
もう一つおっしゃった、特にベンゾジアゼピン系薬剤の抗不安薬の部分、これはまた今後しっかりと検討させていただきたい、このように考えております。
○小池(政)分科員 期間の部分でありますとか、それから、ベンゾが入っている対象についても、睡眠薬だけじゃなくて、ぜひこれから考えていただきたいということが私の問題意識でございます。
今度は、関連するわけでございますけれども、過剰診断ということについてお伺いをさせていただきたいと思います。
精神医療は、基本は早期発見、早期治療ということでありまして、とにかく受診につなげるということが確かに大事なわけでございますが、ただ、一方で、受 診につなげた際に、健康な人が今度は誤って病気と診断されてしまう、過剰診断というのも精神医療の中でやはり問題になっているわけでございます。
例えば、うつ病の診断については、米国精神医学会による診断マニュアル、通称DSM、これによって行われることが多くて、それを安易に使うようなことによって、マニュアル診断がふえたことによる弊害ということもよく聞いているところでございます。
このDSMにつきましては、第四版の編集者であるアラン・フランセスさんという方がおっしゃっているんですけれども、もともとの彼らの本意というものと 少し異なった使われ方をしているということに対して警告を唱えていらっしゃいまして、ぜひこれは大臣にも読んでいただきたいんですが、この方が、「正常を 救え」という題名の本を出していらっしゃいます。二〇一三年の十一月に出版されたということでございます。彼は、このDSM第四版におきまして、過剰診断 に対する警告と、それを避けるための助言をはっきりと記すべきだったという後悔をここで示しているわけでございます。
一方で、副大臣、先ほどもおっしゃいましたけれども、かかりつけ医とか、それから今度は小児科医などにもうつ病の対策等がこれから広がっていくわけでご ざいますが、その際にも、このようなDSMを使って安易に診断が行われて、正常な方が今度はまた病気とみなされて、フランセスさんがおっしゃるような懸念 がかなり広がっていくんじゃないかなという意見もあるところでございます。
それについて、どのようにこれからDSMというものを扱って、また、このようなかかりつけ医また小児科医に対する研修等に使用されていくのか、御所見をお伺いできますでしょうか。
○田村国務大臣 非常にこれは悩ましい話でありまして、一方で、今委員おっしゃられたとおり、早くからその症状といいますか、それが把握で きれば、そして精神科医にそれがつなげられれば、当然、それよりか重症化をある程度防止していけるわけでありますから、早期発見、早期治療ということが重 要であるわけであります。
そういうところから、特に十代、二十代、若いところで、結構、病をお持ちの方々、また発症される方々が多いものでありますから、それに対応するために は、小児科また地域のかかりつけ医、こういうところでやはりしっかりとチェックできるような体制を組んでいくということは必要であります。
一方で、言われるとおり、何もわからない中で、みんながみんな、本来そうでもないのに変な形で診断されるという話になれば、それはまた問題が起こってく るわけでありまして、そこは養成研修等々含めて力を入れていかなきゃならぬわけでありまして、現状、かかりつけ医うつ病対応力向上研修、こういう研修であ りますとか、思春期精神疾患対応力向上研修、さらには精神保健福祉関係者対象研修、さまざまな、それぞれ必要な方々に対して必要な研修を取り入れている。
また、一方で、研修だけではなくて、やはり連携が大事でありますから、これは二十五年度から、精神科医とかかりつけ医等々との連携を強めるという意味 で、連携会議、こういうものを設ける等々の取り組みを始めておりまして、そういう中において、今言われたような誤った診断が起こらないような形でうまく精 神科医につなげられていく、そのような進め方、これを我々今整備をさせていただきたいというふうに思っております。
○小池(政)分科員 ぜひお願いいたします。
また、DSMにつきましては、これは幾つか要因があるとは思いますけれども、安易な診断に結びついている一つの要因として、このDSMの、果たして日本語訳もこれでいいのかどうかというような指摘もあるわけでございます。
DSMの正式名称というのは、ディアグノスティック・アンド・スタティスティカル・マニュアル・オブ・メンタル・ディスオーダーズなんですね。こちら は、日本語では、精神疾患の診断・統計マニュアルと翻訳されておりますし、厚労省が内容を指示している医薬品の添付文書の中でも同様の訳語を使っていると ころでございます。
こちらも、よく調べてみますと、DSMの第三版の編集委員長であるロバート・スピッツァーさん、この方は、多くの精神疾患はいまだに病理的根拠の確定さ れていない症候群にすぎないもので、その意味においてディジーズとは呼べず、ディスオーダーとしたというようなこともおっしゃっております。つまり、病気 とはまだ呼べないということでございまして、ディスオーダーは本来、不調や失調ということでございます。メンタルディスオーダーの意味も、精神的な不調程 度の意味合いということで、それを精神疾患と伝えるというのがかなり誤解を与えてしまうんじゃないか。
また、これが、診断・統計マニュアルということで普及したということもありまして、あたかも精神疾患の診断が確立されたかのような誤解が蔓延していった というような意見もあるわけでございまして、ここはぜひ、このDSMというのは、あくまで精神的な不調を分類するものにすぎず、診断のためのバイブルとい うか、それで診断すべきものじゃないよということを徹底していただきたいと思うんですが、大臣、どうでしょうか。
○田村国務大臣 いずれにしても、学会等々といろいろとここは相談させていただきながら、専門家の方々のしっかりした意見をいただきながら 対応しなければならぬというふうに思っておりますので、先生がおっしゃられた考え方というものも含めて、しっかり検討の中において、誤った診断が行われな いように、そのような形を我々としては確立してまいりたい、このように思っております。
○小池(政)分科員 その専門家の中の専門家であるこのDSMを編集された方が、あえてディジーズじゃなくてディスオーダーという形で明記しているわけでございますから、ぜひそのような意見をもう一度考えていただきたいと思います。
最後、ストレス検査についてでありますけれども、よろしいでしょうか。
厚労省が導入予定のストレス検査というものがあります。これは、事業者に従業員のストレス検査というものを義務づけるものでございます。これについて、 ちょっと質問主意書等で確認をさせていただこうと思ったんですが、質問の意図がよくわからないということで御回答が返ってこなかったわけでございますか ら、もう一度、具体的にお伺いさせていただきたいと思います。
そもそも、このストレス検査の意義というものはどこにあるんでしょうか。その従業員の、個人のストレス度合いをチェックするのか、もしくは、会社全体と か部署の、その働き方の環境、そういうところをチェックするものなのか。それによって、その情報を誰が受けて、それをどうやって使うということを想定され ているのか等も含めて、ちょっと意義についてお伺いさせていただけますでしょうか。
○半田政府参考人 お答えいたします。
このストレス検査は、審議会の建議に基づいて私ども検討しているところでございますが、審議会の建議では、ストレスチェックと面接指導を入れるという提言になってございます。
このストレスチェックの意義といたしましては、労働者御本人に自分のストレス状態に気づいていただくということが一番の目的でございます。また、それを 踏まえまして、事業者の方には必要な職場の改善措置などをとっていただく、こういうことを念頭に置いたものを考えているところでございます。
○小池(政)分科員 本人の気づきを促すということを今お伺いさせていただきましたが、そうしますと、その結果というのは、基本的に本人が 受けるものであって、事業者はその結果を見ることはできない、本人の同意がなければ多分できないということだと思いますけれども、それは、事業所の規模等 に関係なく、そのような理解でいいんでしょうか。
○半田政府参考人 ただいまの点も御検討を今いただいているところでございますけれども、基本的な考え方といたしましては、事業場の規模に 関係なく、このストレス制度ということを導入していきたいとは考えておりますけれども、実態に応じて、どのような制度にしていくかということを今まさに御 検討いただいているところでございます。
○小池(政)分科員 時間も来ましたので。
私のここの問題意識というのも、今までと同じように、本人の気づきということを促すわけでございますけれども、厚労省の試算によりますと、大体一回のテ ストで百億円ぐらい、それを使って、果たしてどのような効果を見込んでいるのか。また、それによって、結果として、また自分たちが、今度は精神医療に行っ て、かえって正常だったのが悪くなってしまうような、そういう可能性もなきにしもあらずでありますから、その点も踏まえて、これからしっかり検討していた だきたいと思います。
きょうはありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0035/18602260035001a.html
第186回国会 予算委員会第五分科会 第1号
本分科会は平成二十六年二月二十四日(月曜日)
<前略>
○小池(政)分科員 結いの党の小池政就です。
大臣以下、きょうは朝から、どうもお疲れさまでございます。
私は、いつもはまた別の常任委員会で審議しているんですが、なかなか田村厚生労働大臣には質疑をさせていただく機会がないので、本当にきょうはありがたく思っております。
きょうは、三十分という時間でございますが、主に精神科医療の薬剤の処方についてお伺いをさせていただきたいと思います。
大臣、もう本当によく御存じだと思いますけれども、薬の効果ですとか安全性というのは単剤で確かめられているということでありまして、同じ性能の薬でも 単剤処方というのが原則ということであると思います。二剤まではあり得るとしても、三剤以上併用になると、効果も安全性も確かめる手段がほとんどないとい うところであります。
きょうお配りの資料をごらんになっていただけますでしょうか。幾つか図表をつけておりますけれども、資料の一番には、これは国際比較になりますけれども、日本が諸外国に比べ、抗精神病薬を中心に多剤併用の処方が目立つというところであります。
少し古いデータになりますが、資料の二におきましては、これは国立精神・神経医療研究センターというところが調査したものでありますが、入院中の統合失調症患者に対して、抗精
神病薬が三剤以上処方されている割合というのが四二%という結果が出ております。
その次の裏面の資料三になりますと、これはまた別の調査でありますけれども、外来も行われておりまして、外来でも抗精神病薬の処方が三剤以上の割合が二六・八%という調査もあるところでございます。
また、今度は同じページの資料四、下になります。こちらにおきましては、二〇一〇年の調査におきまして、抗うつ薬というものが三剤以上処方されていた割 合、これが、四つグラフがあるんですけれども、この右上の、抗うつ薬の一番下の二〇〇九年の七・二と一・七、これを足したのが八・九%ということになりま す。
また、睡眠薬におきましては、次のページの資料五になります。こちらの上のグラフの、さらに二つある上の部分の一番右、二〇〇九年の一番右でありますけ れども、これは睡眠薬が三剤以上処方されていた割合でございまして、これらも決して低い数値ではないというところであります。
ここで厚労大臣にお伺いさせていただきますが、多剤が処方されているというこの状況について、実際、把握されておりますでしょうか。
○佐藤副大臣 田村大臣は後ほどお答えいただくといたしまして、最初に御答弁をさせていただきたいと思うんです。
まさに小池委員が御指摘いただいた資料一に始まるこういう数値、私ども厚生労働省としても大変問題意識を共有しておりまして、結論から言うと、我が国の 精神科医療では、諸外国に比べまして多種類の薬剤が大量に投与されているという実態がある、この御指摘は、まさに本当に我々としても大変な問題があるとい う問題意識を持っているわけでございます。
厚生労働省としても、平成二十二年度に行われました向精神薬の処方実態調査によりますと、九割以上のケースで二種類以下の処方である一方、一部の患者でやはり多種類の薬剤が処方されているというケースがあった、そういう実態調査の結果も出ております。
そこで、厚生労働省では、今までも三つぐらい施策を打っておりまして、一つは、向精神薬処方実態に関する継続的な調査。要するに、平成二十二年度にやっ た後も、引き続いてこれはしっかりと調査していこうということで、調査をしているということが一つ。二つ目は、前回の平成二十四年度の診療報酬改定で、睡 眠薬または抗不安薬を三種類以上処方した場合の減算ということも入れており、その前から比べると二割減、こういう診療報酬改定で入れている。三つ目が、向 精神薬の適切な処方を促すため、かかりつけ医等を対象とした抗うつ薬の使い方等についての研修を行ってきた。そういう取り組みを行ってきたところでござい ます。
さらに、これは今答申の段階ですが、平成二十六年度の診療報酬改定において、今回、中医協の答申では、向精神薬の多剤処方を行った場合のさらなる減算規定を設けることとされております。
今後もさらに、今申し上げましたように、実態調査というものも引き続きやっておりますので、そういう結果も踏まえつつ、この向精神薬の適切な処方というものはしっかりと厚生労働省としても推進をしてまいりたい、そのように考えております。
○小池(政)分科員 ありがとうございます。
現状把握ということでお尋ねしたんですが、その先の対策の話までしていただきまして、ちょっとこれからの質問とかぶってしまうかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
今、確認及び調査の件をお伺いいたしましたが、それでは、それを踏まえて、実際、対処のタイミングでありますとかそれから中身について、改めて、今度は大臣にお伺いさせていただきたいと思うんです。
この多剤の大量処方というのは、もう大分前から問題になっていたわけでございます。報道等では二〇〇二年ぐらいからかなりクローズアップされておりまし て、その後、実際の国の対応としては、確認しているところでは、二〇〇九年九月に厚生労働省が、今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会というと ころの報告書でこの問題について指摘しております。
ちょっと読ませていただきます。「特に、統合失調症に対する抗精神病薬の多剤・大量投与について、その実態の把握に努めるとともに、例えば単剤投与や切替え・減量といった改善を促すため、情報公開や評価の方法等について検討すべきである。」と提言されております。
その先ですけれども、二〇一〇年、先ほどおっしゃられました、診療報酬等の中でこの取り組みというものが出てくるわけでございますが、二〇一〇年の診療 報酬の改定では、抗精神病薬を二剤以下にするとわずかに加算されるというような対応がなされておりまして、二〇一二年度の改定では、睡眠薬と抗不安薬につ いて、それぞれ三剤以上処方した場合に減算するという措置がとられております。
また、二〇一四年度、これからの改定におきましては、睡眠薬と抗不安薬の減算も前回と比べて厳しくなり、さらには、初めて抗うつ薬と抗精神病薬も減算の対象となったわけでございますが、ただ、こちらは四剤からということでもあります。
ようやく、こういう形で、診療報酬を含めて取り組みがされているところでございますが、いかんせん、やはりタイミング的に遅いんじゃないかということを 思ってしまうわけでございますが、ここまで対応が遅くなったその経緯、また、その理由というものはあるんでしょうか。大臣、お願いします。
○田村国務大臣 日本は、そういう意味では、他国と比べて非常に多くの薬を特に精神科の疾病に関しては使ってきた、これは向精神薬全般だと 思います。最近は、新しい、いい薬が出てきまして、多剤投与しなくてもかなり効くものが出てきておるということがあるようでありまして、新しい、いい薬を 使う、その意味では、いろいろな新しい研修という中において、そういうことも医療現場の方々はいろいろ勉強されておられるんだと思います。
実は、今般、減算をするわけでありますけれども、臨床の現場の先生方とお話ししますと、今まで幾つかの薬を使ってある程度症状を抑えてきた、そういうも のに対して、薬を変えたらどういうような影響が出るかまだわからない部分もあると。そういう部分に関して、どのように考えていくか。薬を変えたがために症 状が悪化するということもあるわけでありまして、そういう臨床での悩みもあるんだというような、本当に現場の先生方のいろいろな苦悩、お悩みも聞かせてい ただきました。
しかし一方で、いい薬も出てきておるわけでありますし、それに対する弊害というものも、確かに、先生言われるとおり、起こってきておるという話も聞くわ けでございますので。薬だけに頼らない、いろいろな療法もあります、認知行動療法等々含めて、睡眠障害に対しても対応していく、いろいろなことも含めて、 なるべくこれからは多剤投与しないような形で、それぞれの症状に対して対応していく。
そういう流れの中においての今回の診療報酬改定であったわけでございますので、方向性としては、中医協の中においても、そのような議論のもとでの今回の改定であったというふうに認識をいたしております。
○小池(政)分科員 今私が指摘しているのは、薬の性質ではなくて、多剤そのものの結果による影響というところでありまして、先ほどの国際 比較の中でも、やはり日本がずっと多剤の割合が多かったわけでもありますし、また、この期間において、その影響ということで、被害も出てきているわけでご ざいますから、もう少し早く対応すべきだったのではないかなということも思います。
また、これからの対処といたしまして、減算という話がありましたが、ただ、こちらは、抗うつ薬と抗精神病薬は四剤からの減算ということになっていまして、三剤はペナルティーがないわけでございます。
このような取り組みで本当に今十分だと思われるんでしょうか。また大臣、お願いいたします。
○田村国務大臣 これは、中医協の中において、専門的な観点から、それぞれの立場の方々の御議論をいただいたということであります。だから、三剤がいい、三剤を勧めるというわけではありません。
今も申し上げましたとおり、いい薬がたくさん出てきている中において、今までのように多剤を併用して使う、そういうような治療法だけではなくて、いい薬 の中においては、単剤でも十分に効くものも出てきておりますから、そういうものの普及も含めて、それぞれの臨床の先生方が、それぞれ自己研さんされる中に おいて、これからはそういう方向性でいっていただけるんであろうというふうに思います。
○小池(政)分科員 ぜひ原則に立ち返っていただいて、薬というのはもう単剤で処方する、それから、それについての安全性が確保されている わけでございますから、三剤以上というのはエビデンスすらまだ非常に危ういところでありまして、そこをどうにかしていくということをぜひこれからも検討し ていただきたいと思います。
次に、これはちょっと、私も、一見聞くと専門的な言葉のように思えるわけでございますが、ベンゾジアゼピンというものがありまして、ベンゾ、ベンゾとい うことで、知っている人は御存じだと思いますけれども、よく睡眠薬とか抗不安薬について処方されているものでもあります。
これについても長期の処方とか安易な処方というものが問題になっているところでございまして、こちらも、国際比較によりますと、INCBという、国際麻 薬統制委員会というところが出している調査によりますと、日本はアメリカの約六・五倍、人口当たりの消費量が多いというような調査もありますし、また、実 際にこれが入っているような睡眠薬を処方された患者の四人に一人は四年後も薬を飲み続けていて、薬の量が減っていなかった人というのは六八%に上ったとい うような調査もあるところであります。
また、処方によって依存とか離脱症状という被害の問題についても、十年以上前から指摘されてきたところでございます。
これは、国際的には、この危険性というのは一九七〇年代には明らかになっておりまして、各国では規制が進められてきたところでございます。
資料の六をごらんになっていただけますでしょうか。
資料の六はガイドラインですね。これは海外のガイドラインの例でありますけれども、アメリカと、それからイギリスです。アメリカの場合、ベンゾジアゼピ ンは依存の可能性があり、使用には注意が必要。イギリスの場合は、二週間以上のベンゾジアゼピン投与は行わないというような規制がなされております。
日本においても睡眠薬のガイドラインというのが去年から示されたということでございますが、これについても、やはり大分期間があいてしまったなという思 いがあるわけでございますが、これも、なぜここまで対応がおくれたのか、もう一度、同じような質問になりますけれども、大臣、よろしいでしょうか。
○田村国務大臣 全般的に、先ほど来申し上げていますとおり、日本の中においては、メンタル面の問題に関して、特に精神科疾病、それから睡 眠障害、こういうものに対しては、九割は二種類、二剤というような話なんですけれども、一部でそのような多種類の投与があるということであったわけであり ます。
そのような中において、やはり近年いろいろな問題点の指摘をいただいておりますので、今言われたような形で、厚生科学研究においてガイドラインをお示しするという形において、二十五年度にお示しをさせていただいたということであります。
○小池(政)分科員 答弁も戸惑っているということからは、そもそも対応はおくれていないんじゃないかという印象も受けてしまうわけでございますけれども、やはりこの期間におきましても、諸外国に比べて対応というのが後出しということになっております。
また、中身についても、処方期間の上限でありますとか、それから、今回、睡眠薬のガイドラインでありますけれども、抗不安薬についての取り組み等もこれ から考えなくてはいけないと思うんですけれども、その点について、中身について、これからまたさらに取り組むおつもりなのかどうか、お聞かせいただけます でしょうか。
○佐藤副大臣 済みません、小池委員、ちょっと質問取りのやり方がまずかったのかわかりませんが。
私の答弁で足りるかどうかわかりませんけれども、先ほど来、委員が質問の中でも言われておりますように、睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラ インは、昨年、二十五年度より、ホームページに既に決めたものを載せていただいているんですね、これは御存じだと思うんですけれども。これは国立精神・神 経医療研究センターのホームページ上で公開して、また、関係学会等を通じて周知を行うなど、このガイドラインの普及を図っている、そういうことはさせてい ただいております。
さらに、大臣も答弁の中で言われましたけれども、厚生労働科学研究におきまして、こういう薬物療法だけではなくて、認知行動療法なども活用した、そういう睡眠障害の治療のガイドラインの作成等に着手をしているところでございます。
もう一つおっしゃった、特にベンゾジアゼピン系薬剤の抗不安薬の部分、これはまた今後しっかりと検討させていただきたい、このように考えております。
○小池(政)分科員 期間の部分でありますとか、それから、ベンゾが入っている対象についても、睡眠薬だけじゃなくて、ぜひこれから考えていただきたいということが私の問題意識でございます。
今度は、関連するわけでございますけれども、過剰診断ということについてお伺いをさせていただきたいと思います。
精神医療は、基本は早期発見、早期治療ということでありまして、とにかく受診につなげるということが確かに大事なわけでございますが、ただ、一方で、受 診につなげた際に、健康な人が今度は誤って病気と診断されてしまう、過剰診断というのも精神医療の中でやはり問題になっているわけでございます。
例えば、うつ病の診断については、米国精神医学会による診断マニュアル、通称DSM、これによって行われることが多くて、それを安易に使うようなことによって、マニュアル診断がふえたことによる弊害ということもよく聞いているところでございます。
このDSMにつきましては、第四版の編集者であるアラン・フランセスさんという方がおっしゃっているんですけれども、もともとの彼らの本意というものと 少し異なった使われ方をしているということに対して警告を唱えていらっしゃいまして、ぜひこれは大臣にも読んでいただきたいんですが、この方が、「正常を 救え」という題名の本を出していらっしゃいます。二〇一三年の十一月に出版されたということでございます。彼は、このDSM第四版におきまして、過剰診断 に対する警告と、それを避けるための助言をはっきりと記すべきだったという後悔をここで示しているわけでございます。
一方で、副大臣、先ほどもおっしゃいましたけれども、かかりつけ医とか、それから今度は小児科医などにもうつ病の対策等がこれから広がっていくわけでご ざいますが、その際にも、このようなDSMを使って安易に診断が行われて、正常な方が今度はまた病気とみなされて、フランセスさんがおっしゃるような懸念 がかなり広がっていくんじゃないかなという意見もあるところでございます。
それについて、どのようにこれからDSMというものを扱って、また、このようなかかりつけ医また小児科医に対する研修等に使用されていくのか、御所見をお伺いできますでしょうか。
○田村国務大臣 非常にこれは悩ましい話でありまして、一方で、今委員おっしゃられたとおり、早くからその症状といいますか、それが把握で きれば、そして精神科医にそれがつなげられれば、当然、それよりか重症化をある程度防止していけるわけでありますから、早期発見、早期治療ということが重 要であるわけであります。
そういうところから、特に十代、二十代、若いところで、結構、病をお持ちの方々、また発症される方々が多いものでありますから、それに対応するために は、小児科また地域のかかりつけ医、こういうところでやはりしっかりとチェックできるような体制を組んでいくということは必要であります。
一方で、言われるとおり、何もわからない中で、みんながみんな、本来そうでもないのに変な形で診断されるという話になれば、それはまた問題が起こってく るわけでありまして、そこは養成研修等々含めて力を入れていかなきゃならぬわけでありまして、現状、かかりつけ医うつ病対応力向上研修、こういう研修であ りますとか、思春期精神疾患対応力向上研修、さらには精神保健福祉関係者対象研修、さまざまな、それぞれ必要な方々に対して必要な研修を取り入れている。
また、一方で、研修だけではなくて、やはり連携が大事でありますから、これは二十五年度から、精神科医とかかりつけ医等々との連携を強めるという意味 で、連携会議、こういうものを設ける等々の取り組みを始めておりまして、そういう中において、今言われたような誤った診断が起こらないような形でうまく精 神科医につなげられていく、そのような進め方、これを我々今整備をさせていただきたいというふうに思っております。
○小池(政)分科員 ぜひお願いいたします。
また、DSMにつきましては、これは幾つか要因があるとは思いますけれども、安易な診断に結びついている一つの要因として、このDSMの、果たして日本語訳もこれでいいのかどうかというような指摘もあるわけでございます。
DSMの正式名称というのは、ディアグノスティック・アンド・スタティスティカル・マニュアル・オブ・メンタル・ディスオーダーズなんですね。こちら は、日本語では、精神疾患の診断・統計マニュアルと翻訳されておりますし、厚労省が内容を指示している医薬品の添付文書の中でも同様の訳語を使っていると ころでございます。
こちらも、よく調べてみますと、DSMの第三版の編集委員長であるロバート・スピッツァーさん、この方は、多くの精神疾患はいまだに病理的根拠の確定さ れていない症候群にすぎないもので、その意味においてディジーズとは呼べず、ディスオーダーとしたというようなこともおっしゃっております。つまり、病気 とはまだ呼べないということでございまして、ディスオーダーは本来、不調や失調ということでございます。メンタルディスオーダーの意味も、精神的な不調程 度の意味合いということで、それを精神疾患と伝えるというのがかなり誤解を与えてしまうんじゃないか。
また、これが、診断・統計マニュアルということで普及したということもありまして、あたかも精神疾患の診断が確立されたかのような誤解が蔓延していった というような意見もあるわけでございまして、ここはぜひ、このDSMというのは、あくまで精神的な不調を分類するものにすぎず、診断のためのバイブルとい うか、それで診断すべきものじゃないよということを徹底していただきたいと思うんですが、大臣、どうでしょうか。
○田村国務大臣 いずれにしても、学会等々といろいろとここは相談させていただきながら、専門家の方々のしっかりした意見をいただきながら 対応しなければならぬというふうに思っておりますので、先生がおっしゃられた考え方というものも含めて、しっかり検討の中において、誤った診断が行われな いように、そのような形を我々としては確立してまいりたい、このように思っております。
○小池(政)分科員 その専門家の中の専門家であるこのDSMを編集された方が、あえてディジーズじゃなくてディスオーダーという形で明記しているわけでございますから、ぜひそのような意見をもう一度考えていただきたいと思います。
最後、ストレス検査についてでありますけれども、よろしいでしょうか。
厚労省が導入予定のストレス検査というものがあります。これは、事業者に従業員のストレス検査というものを義務づけるものでございます。これについて、 ちょっと質問主意書等で確認をさせていただこうと思ったんですが、質問の意図がよくわからないということで御回答が返ってこなかったわけでございますか ら、もう一度、具体的にお伺いさせていただきたいと思います。
そもそも、このストレス検査の意義というものはどこにあるんでしょうか。その従業員の、個人のストレス度合いをチェックするのか、もしくは、会社全体と か部署の、その働き方の環境、そういうところをチェックするものなのか。それによって、その情報を誰が受けて、それをどうやって使うということを想定され ているのか等も含めて、ちょっと意義についてお伺いさせていただけますでしょうか。
○半田政府参考人 お答えいたします。
このストレス検査は、審議会の建議に基づいて私ども検討しているところでございますが、審議会の建議では、ストレスチェックと面接指導を入れるという提言になってございます。
このストレスチェックの意義といたしましては、労働者御本人に自分のストレス状態に気づいていただくということが一番の目的でございます。また、それを 踏まえまして、事業者の方には必要な職場の改善措置などをとっていただく、こういうことを念頭に置いたものを考えているところでございます。
○小池(政)分科員 本人の気づきを促すということを今お伺いさせていただきましたが、そうしますと、その結果というのは、基本的に本人が 受けるものであって、事業者はその結果を見ることはできない、本人の同意がなければ多分できないということだと思いますけれども、それは、事業所の規模等 に関係なく、そのような理解でいいんでしょうか。
○半田政府参考人 ただいまの点も御検討を今いただいているところでございますけれども、基本的な考え方といたしましては、事業場の規模に 関係なく、このストレス制度ということを導入していきたいとは考えておりますけれども、実態に応じて、どのような制度にしていくかということを今まさに御 検討いただいているところでございます。
○小池(政)分科員 時間も来ましたので。
私のここの問題意識というのも、今までと同じように、本人の気づきということを促すわけでございますけれども、厚労省の試算によりますと、大体一回のテ ストで百億円ぐらい、それを使って、果たしてどのような効果を見込んでいるのか。また、それによって、結果として、また自分たちが、今度は精神医療に行っ て、かえって正常だったのが悪くなってしまうような、そういう可能性もなきにしもあらずでありますから、その点も踏まえて、これからしっかり検討していた だきたいと思います。
きょうはありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0035/18602260035001a.html
衆議院
第187回国会 厚生労働委員会 第3号
平成二十六年十月十七日(金曜日)
<前略>
○宮沢(隆)委員 次世代の党、宮沢隆仁と申します。
私は実は、清水議員と同様、脳神経外科医でありまして、恐らく、和田参考人とほぼ同世代の医師であると思います。
率直にこの薬物依存、薬物等に対する私の感想を申し上げますと、やはり外科医であるせいもあるんですが、現場でそういう薬物依存らしき患者さんが来ます と、避ける傾向がありました。それはもう私も反省しております。この人は同じ頭の病気でも精神科へと言って、追いやるようにして避けていたように思いま す。
もう一つは、医者全般がそうかもしれないんですが、いわゆる精神安定剤のようなものを意外と気軽に出す傾向があります。特に、脳外科として脳を扱った医 者は、例えば、脳外科医をリタイアすると精神神経科みたいな役割もするようになるんですが、以前、この委員会でも言ったことがあるんですが、やはりメンタ ルクリニックみたいなのが急増してきまして、それによる薬物依存というような問題も出てきているように思います。
主に和田参考人にお聞きするようになると思うんですが、まず、今ちらっと述べておられましたが、この問題において、やはり医者の役割というのは物すごく 大きいと思うんです。ただ、正直、医者全般がこの危険ドラッグについての認識というのは物すごく薄い、あるいは興味を示していないように思うんですが、そ の点はいかがでしょうか。和田参考人にお聞きします。
○和田参考人 本当に、私がかねがね考えております大変重要な点を質問していただけたと思っております。
と申しますのは、例えば、医療的に薬を出せるのは、日本じゅうで医師しかおりません。ところが、その医師がこの薬物問題に関心をなかなか示さないということを、私は非常に前から怒りを持って見ております。
その最大の原因は、医学教育にあると思います。
実は、医学教育の中に、この薬物依存ということはどういうことなんだという授業は、ほとんどのところでなされていないと思います。
実は、依存と中毒、この区別が全然ついておりません。依存というのは、わかっていてもやめられない、見た目にはどこもおかしくない、言動もおかしくない、ただし、薬物が欲しくなったら、いても立ってもいられなくてやってしまう、これだけです。まさに喫煙者そのものです。
ところが、中毒、昔は中毒と依存の区別がなかった時代もありますが、現在は違います。中毒というのは、例えば、簡単に言えば、誰が見ても、この人は病院 で治した方がいいよ、治療を受けた方がいいよと見えちゃう人、あるいは、検査でそういうことがわかる人が中毒です。依存というのはそういう問題じゃありま せん。
そういうことを含めてきちんと医学教育で全然やっておりませんので、医者の方が、自分たちの日々出している処方薬、そういうものに依存性があるんだということを全然自覚していない。
ということで、私は、徹底的に医学教育でその辺のことを改善していく、それが絶対に望まれると考えています。
○宮沢(隆)委員 私が次に質問をさせていただこうと思っていた医学教育のことも述べていただいて、まさにそのとおりだと思います。少なくとも、これから生まれてくる医者に対しては、この薬物のことは別途講座を設けてでも教育してもいいだろうと思っております。
ただ、もう一つ重要なのは、今の現役の医師ですね。先ほどちらっと講習会、研修会をやられているとかおっしゃっていたんですが、精力的にやられているとは思うんですが、恐らく、全然足りていないだろうと思うんです。
今の現役の医師、特に、脳を扱っている医者を含め、精神科の医師に対する教育とかという点に関してはいかがでしょうか。
○和田参考人 実は、これは診療報酬に絡んだ話ですが、少々専門的になりますけれども、ベンゾジアゼピン系、そういう薬物を中心に、抗不安 薬、睡眠薬、そういうところから、ベンゾジアゼピンとは違いますけれども、うつ病に対する薬あるいは幻覚、妄想に対する向精神薬、そういうものは何種類以 上処方してはだめですよ、そういう診療報酬の制度に実は現在なっております。
それに従って、中には長年いろいろな種類の治療薬を飲まれてきている方もいますから、急にその錠剤を減らすことができないので、それを徐々に減らすため に、移行措置というんでしょうかね、診療報酬で決められた錠剤以上使ってもいいという医者の資格というんでしょうか、そういうものに対する講習会を今年度 から日本精神神経学会が学会主催で開いております。と同時に、Eラーニング、そういうシステムを導入して受講できるようになっています。
ということで、一応、学会の方でその辺は対応を始めて、実施したということで、今後、それはどんどん現役の医者に対してもやはり進めていくべきだろうと思います。
○宮沢(隆)委員 では、医師、医学系の質問はこのぐらいにさせていただいて、今度は薬理系です。
これは、もちろん、成分分析云々の話が入ってくるので、薬理学会、まあ薬理系もたくさんの学会があると思うんですけれども、いわゆる薬理学者自身もこれは積極的に絡んできていただかないといけないと思うんですが、そのあたりのコメントはいかがでしょうか。
○和田参考人 そのあたりのことは、正直言いまして私の専門からちょっと外れてしまうので、何ともコメントできません。
ただし、私は一つ思うことがあります。
私は、実は、薬剤師の方々からいろいろ声をかけていただいて、全国、いろいろなその関係のところで講演をすることが多いです。そのときに声をかけていた だく方々は、学校薬剤師の方々がほとんどです。薬剤師にもいろいろな資格といいましょうか、内部的にあるようでして、学校の衛生、健康、そういうことをつ かさどる学校薬剤師の方々が非常にこの薬物問題に熱心だという印象を持っております。
逆に、先ほどの話に戻りますが、医者から呼ばれて話しに行くということはほとんどないのが現状です。
以上です。
○宮沢(隆)委員 私の現場の経験も含めて、ちょっと医師と薬剤師というのはコミュニケーションがなさ過ぎるかなと思いますので、この点に関しても、そこは厚生労働省等が中心になって進めていってもいいと思います。
それから、ちょっと細かい話になると思うんですが、文献等を読みますと、和田参考人の感想の中に、国会議員との認識の差がどうも気になるというようなこ とを書かれていますが、私が想像するに、例えば、さっきお話がちらっと出ていましたけれども、薬理作用云々の話に入っていくと、いわゆる受容体の話があっ て、それで受容体を持っている細胞の話になって、あとは脳のことですから、脳の各部位の反応の話になりますよね。
それから、もう一つ別の方向でいくと、いわゆる薬の成分の話、これはケミカルな話ですね。それから、それを含むいわゆる薬草というんですか、そういうも のの話。さらに、それを今度混合して、しかも、さっきA、B、Cとおっしゃっていましたけれども、名前をつけて売り出す。しかも、混合の仕方というのは、 各薬草を、例えば四種類を六種類にしたり、その中身を変えたりということで、天文学的に幾らでもふえていきますよね。
多分、その辺の認識のギャップがあるのかなという気がするんですが、ちょっとその辺の感想を述べていただければと思います。
○和田参考人 なかなか、その辺のことをどこまで御説明すべきか。
いわゆる脱法ハーブという名前が、呼称が物すごく広まりました。そうすると、何か危険ドラッグは脱法ハーブだけなのかという話になりますが、実はそう じゃなくて、いわゆる法の網をかいくぐる薬物は、形態的に三種類あります。一つはハーブ系と申します。これを脱法ハーブと呼んでいます。もう一つは液体で す。もう一つは粉末です。そういうことで、ハーブ系、リキッド系、パウダー系という三形態があるんです。
そのうちパウダー系とリキッド系というのは、もともとカチノン系という覚醒剤に類似した中枢神経作用薬が、昔も今も大体そういう形で売られています。
一方、ハーブ系と申しますのは、もともと大麻の成分に近いものが入っていたとされているんですが、現在売られているハーブ系というものには、いわゆる脱 法ハーブと言われるものには、合成カンナビノイドが数種類、さらにそこにパウダー系、リキッド系に入っているカチノン系という中枢神経興奮系もまた複数種 類まぜ込まれている。もうごちゃごちゃなんです。
それが現状なものですから、そこをまずきちんと御理解いただいた上で対策等を考えていただきたいと思っています。
○宮沢(隆)委員 私も、今回この会に出席して、その辺がやっと少し整理できてきたかなという気がしておりますので、法律をつくる上で、その辺の認識と、あと、何がわかっていて、どこまでわかっていないのかというようなことも認識しながら法律をつくっていくのは重要だろうと思います。
この後は飯泉参考人にお聞きしたいんですが、今の和田参考人のお話等を聞いた上で、現場では、ちょっと認識不足の医師の団体とか、あと、警察、行政、そ の辺と連携しないとこの問題は恐らくなかなか解決しないだろうと思うんですが、先ほどちらっとおっしゃっていましたけれども、現場での連携について、改め てコメントをしていただければと思います。
○飯泉参考人 関西広域連合で、まず条例を大阪府が二十四年の十一月、そして徳島、和歌山が十二月に、そして年が明けて鳥取がという形になりまして、そうしたこの危険ドラッグに対しての対応ができる素地ができた。
となってくると、今度は外周部にこれが広がってしまってはいけないということがありまして、いわゆる合同研修会、こちらを大阪府を中核としてさせていた だきました。昨年が十月、そしてことしが八月。当初におきましては、どちらかというと行政、あるいは、今お話のあった医療関係者、こちらを中核に行いまし た。しかし、今回はやはり取り締まり、こちらを重点的に行う必要があるということで、取り締まり機関である警察、それから麻薬取締部、こうしたところにも 入っていただいたという形で、今それを広げつつあるところでもあります。
○宮沢(隆)委員 非常にダイナミックな体制をつくっていただいて、私は国の方が学ぶべきことが結構あるんじゃないかなと思いました。
では、最後に秋元参考人にお聞きしたいんですが、先ほど資料を見ていて、日本地図が出ている、全国に幾つ、どこにあるかというのを見させていただいたんですが、必ずしも県庁所在地にはないですよね。
恐らく、これは手を挙げた人がつくるというような形になっているだろうと思うんですが、今後、このダルクを全国に広めていく上での哲学というんですか、どういう趣旨で、どこにつくるのがベストかというような、その辺のお考えがあったらちょっと述べていただきたいんです。
○秋元参考人 先ほどの御説明では、六月一日現在で七十四カ所ございますという説明があって、この日本地図は、実はこの黒い点を足すと、七 十四個ございません。実は、この地図自体は今から七年ぐらい前のデータでして、現在、六月一日あたりのときに北は北海道から南は沖縄まで数えたら七十四カ 所あったということでございます。例えば、北海道であれば、札幌に一カ所あって、あとは帯広にも実は一カ所ございます。
どのような拠点にダルクがあればよいかというのは、私たち自身は、例えば再乱用防止をするにはこのような場所に置くのが効果的であるとか、そういう哲学を持ってやっているわけではございません。
大体、東京の場合なんかは、薬物の施設が例えば地域にできると考えるだけで、今まで厳しい反対運動なんかもあったりしまして、そういう意味では、なるべ く私たちは活動しやすいような、何とか地域に受け入れてもらいやすいような場所でダルクができてきているというような現状があるかなというふうに思いま す。
○宮沢(隆)委員 ありがとうございました。
やはりこれは国なり厚生労働省が少しバックアップしてあげて、設置しやすいようにしてあげるというのは大事だろうと思います。
どうもありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/187/0097/18710170097003a.html
第187回国会 厚生労働委員会 第3号
平成二十六年十月十七日(金曜日)
<前略>
○宮沢(隆)委員 次世代の党、宮沢隆仁と申します。
私は実は、清水議員と同様、脳神経外科医でありまして、恐らく、和田参考人とほぼ同世代の医師であると思います。
率直にこの薬物依存、薬物等に対する私の感想を申し上げますと、やはり外科医であるせいもあるんですが、現場でそういう薬物依存らしき患者さんが来ます と、避ける傾向がありました。それはもう私も反省しております。この人は同じ頭の病気でも精神科へと言って、追いやるようにして避けていたように思いま す。
もう一つは、医者全般がそうかもしれないんですが、いわゆる精神安定剤のようなものを意外と気軽に出す傾向があります。特に、脳外科として脳を扱った医 者は、例えば、脳外科医をリタイアすると精神神経科みたいな役割もするようになるんですが、以前、この委員会でも言ったことがあるんですが、やはりメンタ ルクリニックみたいなのが急増してきまして、それによる薬物依存というような問題も出てきているように思います。
主に和田参考人にお聞きするようになると思うんですが、まず、今ちらっと述べておられましたが、この問題において、やはり医者の役割というのは物すごく 大きいと思うんです。ただ、正直、医者全般がこの危険ドラッグについての認識というのは物すごく薄い、あるいは興味を示していないように思うんですが、そ の点はいかがでしょうか。和田参考人にお聞きします。
○和田参考人 本当に、私がかねがね考えております大変重要な点を質問していただけたと思っております。
と申しますのは、例えば、医療的に薬を出せるのは、日本じゅうで医師しかおりません。ところが、その医師がこの薬物問題に関心をなかなか示さないということを、私は非常に前から怒りを持って見ております。
その最大の原因は、医学教育にあると思います。
実は、医学教育の中に、この薬物依存ということはどういうことなんだという授業は、ほとんどのところでなされていないと思います。
実は、依存と中毒、この区別が全然ついておりません。依存というのは、わかっていてもやめられない、見た目にはどこもおかしくない、言動もおかしくない、ただし、薬物が欲しくなったら、いても立ってもいられなくてやってしまう、これだけです。まさに喫煙者そのものです。
ところが、中毒、昔は中毒と依存の区別がなかった時代もありますが、現在は違います。中毒というのは、例えば、簡単に言えば、誰が見ても、この人は病院 で治した方がいいよ、治療を受けた方がいいよと見えちゃう人、あるいは、検査でそういうことがわかる人が中毒です。依存というのはそういう問題じゃありま せん。
そういうことを含めてきちんと医学教育で全然やっておりませんので、医者の方が、自分たちの日々出している処方薬、そういうものに依存性があるんだということを全然自覚していない。
ということで、私は、徹底的に医学教育でその辺のことを改善していく、それが絶対に望まれると考えています。
○宮沢(隆)委員 私が次に質問をさせていただこうと思っていた医学教育のことも述べていただいて、まさにそのとおりだと思います。少なくとも、これから生まれてくる医者に対しては、この薬物のことは別途講座を設けてでも教育してもいいだろうと思っております。
ただ、もう一つ重要なのは、今の現役の医師ですね。先ほどちらっと講習会、研修会をやられているとかおっしゃっていたんですが、精力的にやられているとは思うんですが、恐らく、全然足りていないだろうと思うんです。
今の現役の医師、特に、脳を扱っている医者を含め、精神科の医師に対する教育とかという点に関してはいかがでしょうか。
○和田参考人 実は、これは診療報酬に絡んだ話ですが、少々専門的になりますけれども、ベンゾジアゼピン系、そういう薬物を中心に、抗不安 薬、睡眠薬、そういうところから、ベンゾジアゼピンとは違いますけれども、うつ病に対する薬あるいは幻覚、妄想に対する向精神薬、そういうものは何種類以 上処方してはだめですよ、そういう診療報酬の制度に実は現在なっております。
それに従って、中には長年いろいろな種類の治療薬を飲まれてきている方もいますから、急にその錠剤を減らすことができないので、それを徐々に減らすため に、移行措置というんでしょうかね、診療報酬で決められた錠剤以上使ってもいいという医者の資格というんでしょうか、そういうものに対する講習会を今年度 から日本精神神経学会が学会主催で開いております。と同時に、Eラーニング、そういうシステムを導入して受講できるようになっています。
ということで、一応、学会の方でその辺は対応を始めて、実施したということで、今後、それはどんどん現役の医者に対してもやはり進めていくべきだろうと思います。
○宮沢(隆)委員 では、医師、医学系の質問はこのぐらいにさせていただいて、今度は薬理系です。
これは、もちろん、成分分析云々の話が入ってくるので、薬理学会、まあ薬理系もたくさんの学会があると思うんですけれども、いわゆる薬理学者自身もこれは積極的に絡んできていただかないといけないと思うんですが、そのあたりのコメントはいかがでしょうか。
○和田参考人 そのあたりのことは、正直言いまして私の専門からちょっと外れてしまうので、何ともコメントできません。
ただし、私は一つ思うことがあります。
私は、実は、薬剤師の方々からいろいろ声をかけていただいて、全国、いろいろなその関係のところで講演をすることが多いです。そのときに声をかけていた だく方々は、学校薬剤師の方々がほとんどです。薬剤師にもいろいろな資格といいましょうか、内部的にあるようでして、学校の衛生、健康、そういうことをつ かさどる学校薬剤師の方々が非常にこの薬物問題に熱心だという印象を持っております。
逆に、先ほどの話に戻りますが、医者から呼ばれて話しに行くということはほとんどないのが現状です。
以上です。
○宮沢(隆)委員 私の現場の経験も含めて、ちょっと医師と薬剤師というのはコミュニケーションがなさ過ぎるかなと思いますので、この点に関しても、そこは厚生労働省等が中心になって進めていってもいいと思います。
それから、ちょっと細かい話になると思うんですが、文献等を読みますと、和田参考人の感想の中に、国会議員との認識の差がどうも気になるというようなこ とを書かれていますが、私が想像するに、例えば、さっきお話がちらっと出ていましたけれども、薬理作用云々の話に入っていくと、いわゆる受容体の話があっ て、それで受容体を持っている細胞の話になって、あとは脳のことですから、脳の各部位の反応の話になりますよね。
それから、もう一つ別の方向でいくと、いわゆる薬の成分の話、これはケミカルな話ですね。それから、それを含むいわゆる薬草というんですか、そういうも のの話。さらに、それを今度混合して、しかも、さっきA、B、Cとおっしゃっていましたけれども、名前をつけて売り出す。しかも、混合の仕方というのは、 各薬草を、例えば四種類を六種類にしたり、その中身を変えたりということで、天文学的に幾らでもふえていきますよね。
多分、その辺の認識のギャップがあるのかなという気がするんですが、ちょっとその辺の感想を述べていただければと思います。
○和田参考人 なかなか、その辺のことをどこまで御説明すべきか。
いわゆる脱法ハーブという名前が、呼称が物すごく広まりました。そうすると、何か危険ドラッグは脱法ハーブだけなのかという話になりますが、実はそう じゃなくて、いわゆる法の網をかいくぐる薬物は、形態的に三種類あります。一つはハーブ系と申します。これを脱法ハーブと呼んでいます。もう一つは液体で す。もう一つは粉末です。そういうことで、ハーブ系、リキッド系、パウダー系という三形態があるんです。
そのうちパウダー系とリキッド系というのは、もともとカチノン系という覚醒剤に類似した中枢神経作用薬が、昔も今も大体そういう形で売られています。
一方、ハーブ系と申しますのは、もともと大麻の成分に近いものが入っていたとされているんですが、現在売られているハーブ系というものには、いわゆる脱 法ハーブと言われるものには、合成カンナビノイドが数種類、さらにそこにパウダー系、リキッド系に入っているカチノン系という中枢神経興奮系もまた複数種 類まぜ込まれている。もうごちゃごちゃなんです。
それが現状なものですから、そこをまずきちんと御理解いただいた上で対策等を考えていただきたいと思っています。
○宮沢(隆)委員 私も、今回この会に出席して、その辺がやっと少し整理できてきたかなという気がしておりますので、法律をつくる上で、その辺の認識と、あと、何がわかっていて、どこまでわかっていないのかというようなことも認識しながら法律をつくっていくのは重要だろうと思います。
この後は飯泉参考人にお聞きしたいんですが、今の和田参考人のお話等を聞いた上で、現場では、ちょっと認識不足の医師の団体とか、あと、警察、行政、そ の辺と連携しないとこの問題は恐らくなかなか解決しないだろうと思うんですが、先ほどちらっとおっしゃっていましたけれども、現場での連携について、改め てコメントをしていただければと思います。
○飯泉参考人 関西広域連合で、まず条例を大阪府が二十四年の十一月、そして徳島、和歌山が十二月に、そして年が明けて鳥取がという形になりまして、そうしたこの危険ドラッグに対しての対応ができる素地ができた。
となってくると、今度は外周部にこれが広がってしまってはいけないということがありまして、いわゆる合同研修会、こちらを大阪府を中核としてさせていた だきました。昨年が十月、そしてことしが八月。当初におきましては、どちらかというと行政、あるいは、今お話のあった医療関係者、こちらを中核に行いまし た。しかし、今回はやはり取り締まり、こちらを重点的に行う必要があるということで、取り締まり機関である警察、それから麻薬取締部、こうしたところにも 入っていただいたという形で、今それを広げつつあるところでもあります。
○宮沢(隆)委員 非常にダイナミックな体制をつくっていただいて、私は国の方が学ぶべきことが結構あるんじゃないかなと思いました。
では、最後に秋元参考人にお聞きしたいんですが、先ほど資料を見ていて、日本地図が出ている、全国に幾つ、どこにあるかというのを見させていただいたんですが、必ずしも県庁所在地にはないですよね。
恐らく、これは手を挙げた人がつくるというような形になっているだろうと思うんですが、今後、このダルクを全国に広めていく上での哲学というんですか、どういう趣旨で、どこにつくるのがベストかというような、その辺のお考えがあったらちょっと述べていただきたいんです。
○秋元参考人 先ほどの御説明では、六月一日現在で七十四カ所ございますという説明があって、この日本地図は、実はこの黒い点を足すと、七 十四個ございません。実は、この地図自体は今から七年ぐらい前のデータでして、現在、六月一日あたりのときに北は北海道から南は沖縄まで数えたら七十四カ 所あったということでございます。例えば、北海道であれば、札幌に一カ所あって、あとは帯広にも実は一カ所ございます。
どのような拠点にダルクがあればよいかというのは、私たち自身は、例えば再乱用防止をするにはこのような場所に置くのが効果的であるとか、そういう哲学を持ってやっているわけではございません。
大体、東京の場合なんかは、薬物の施設が例えば地域にできると考えるだけで、今まで厳しい反対運動なんかもあったりしまして、そういう意味では、なるべ く私たちは活動しやすいような、何とか地域に受け入れてもらいやすいような場所でダルクができてきているというような現状があるかなというふうに思いま す。
○宮沢(隆)委員 ありがとうございました。
やはりこれは国なり厚生労働省が少しバックアップしてあげて、設置しやすいようにしてあげるというのは大事だろうと思います。
どうもありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/187/0097/18710170097003a.html
衆議院
第189回国会 予算委員会 第15号
平成二十七年三月六日(金曜日)
<前略>
○柿沢委員 維新の党の柿沢未途でございます。
まず、何度か出しているアレシナの黄金律のおさらいをしたいと思います。
ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授が、過去のOECD二十カ国の財政データを用いて、財政再建に成功した国と失敗した国の要因を検証した。それ によると、増税先行の財政再建は失敗に終わり、財政再建を成功させた国は歳出削減に力を入れていたということであります。その比率が、歳出削減七、そして 増税三。この七対三が、財政再建と経済成長を両立するアレシナの黄金律ということであるわけです。そして、財政再建に成功した国が歳出削減で何を削ってい たかというと、公務員人件費と社会保障費、これが対象になっていた。
このところ国会ではピケティの話が非常に多いんですけれども、私は、日本の現状を鑑みて言うと、ピケティよりアレシナだ、こういうふうに思っているところです。
地方創生の集中審議で何でハーバード大学の先生の名前が出てくるんだという話なんですが、ここからが本番です。
土日で、私、海士町に行ってきました。安倍総理も昨年秋の所信表明演説で取り上げられた、隠岐に浮かぶ、人口二千四百人、小さな町であります。米子の近 くの七類港からフェリーで四時間半かかります。しかも、しけていて大変揺れました。東京から八百五十キロ、本当に遠いです。
しかし、この離島に、東京から、全国から、Iターンの人たちがこの十年間で四百八十七人も移り住んできております。定住しているだけでも三百人以上、島 の人口の一割以上をこうしたIターンの皆さんが占めています。来るのは、ほぼ全員が四十歳以下で、トヨタを、ソニーを、リクルートをやめて、遠いこの島に 移り住んでくるわけです。
パネルを見ていただくと、さざえカレー、安倍総理も紹介されていましたが、写真で載せてあります。
あと、これは隠岐牛です。建設業から業種転換して肥育を始めたという隠岐牛は、東京の食肉市場で最高ランクのA5になって、幻の黒毛和牛と言われているそうであります。
ここに岩ガキの春香もつけておきましたけれども、Uターンの漁師さんとIターンのサーフショップの経営者の二人が組んで養殖を始めた岩ガキ春香が、今、東京のオイスターバーで大人気、こういうことであります。
かつて朝廷に献上していたという干しナマコを復活させて中国や香港へ売り込みたいと、宮崎さんというこの写真にある青年が、一橋大学を卒業して、海士町に移り住んで、干しナマコの加工、生産に今取り組んでいます。
島の唯一の高校である隠岐島前高校、生徒流出で分校格下げの寸前でしたけれども、町がIターンの青年と一緒に魅力化プロジェクトというものに取り組んで、学習支援のために町営の塾を設けて、ここでも、Iターンの皆さんが夜十時、十一時まで学生の指導に当たっている。
今や、島留学と呼ばれる都会からの生徒もやってきて、生徒数、二〇〇八年度は八十九人だったのが、今は百五十六人。V字回復をしている。
ちょうど、島留学で、あした卒業式を迎えるという三年生二人とそこで会ったんですけれども、上智大学や東洋大学に進学するんだそうですけれども、必ず帰ってきて島に恩返ししたいと、真っすぐな瞳で語っておられたのが大変印象的でありました。
島根県では、平成の大合併で市町村数が五十九から二十一に減ったそうですけれども、人口減少がとまったのはこの海士町だけ。今や、Iターン者のおかげで 子供の数がふえて、ことしは島で唯一の保育園に何と待機児童が出そうだというんですね。これらの取り組みを進めているのが、写真にもありますが、山内道雄 町長です。
きょうは、地方創生担当の小泉進次郎政務官にも来ていただいていますけれども、十一月に海士町を訪れていますよね。百聞は一見にしかずだと私も思いまし た。いろいろお感じになられたことがあるんじゃないかと思うんですけれども、海士町にも足を運んで、山内町長とも会われた小泉政務官、町と町長にどんな印 象を持ったか、ぜひ聞かせてください。
〔委員長退席、金田委員長代理着席〕
○小泉大臣政務官 委員がおっしゃるとおり、十一月に私も海士町に伺いました。数多くの地方に足を運びましたが、その中でも最も感銘を受けた、そんな視察先だと言っても過言ではありませんでした。
山内町長の、みずからの給料を五〇%カットし、そして、吉元課長初め町の幹部の皆さんがそれに呼応する形で三割カットをし、そして、それを見ていた町民 の皆さんが、町の皆さん頑張っているなということで、バスに対する補助金をカットしても構わないという自主的な声が生まれ、まさに覚悟のあるまちづくりを なし遂げた結果が、さざえカレーであり、CASシステムでもあり、また島留学でもあると思いますので、この海士町の山内町長の言葉は、私も、今地方創生を 担当している政務官として、常に胸の中に持っております。
やる気と本気は違うんだ。やる気がありますかと言えば、みんな、やる気があると言う。だけれども、その本気はしっかりと見きわめなければいけない。小泉さん、お金を配っちゃいけないよ。本気で、地方の覚悟があるところに配らなければ死に金になるよ。
その言葉を忘れずに、これからもしっかりと、地方創生、後押しをしていきたいと思っております。
○柿沢委員 いい御答弁をいただきました。
山内町長も、進次郎さんは大変将来有望な政治家だと言っておられましたよ。
海士町では、このようにIターンの二十代、三十代の若い人たちが活躍しています。今いみじくも答弁あったとおり、山内町長は、補助金がつくからやらない かということは絶対言わないようにしている、何かやりたいと本気で考えている人というのは、最終的に熱意だけで成功に導いていく、本気で向かってくる人に は本気で応えようと思っている、金があるからやりますというのは、絶対にいい結果を生まないと言っています。
今回、その典型例みたいな記事に出くわしたので、紹介したいと思います。
これは長野県なんですが、大変失礼ですけれども、平成二十六年度補正予算が二月の県議会で可決をされたというニュースなんです。地方創生のための国から の交付金が二十一億六千五百万円おりてきたけれども、詳細な事業設計はこれからで、何に使うのか、効果は上がるのかと県議会で問われて、担当者が説明に窮 する場面があったと。担当者は、事業計画の国への提出期限も迫っているから走りながら考えるしかない、こういうふうに答えているんだそうですよ。これはま さに、金があるからやりますというものの典型ではないですか。
地方創生は今までの地方振興策とは違う、異次元だと石破大臣もおっしゃられていたわけですけれども、現場で起きていることは、まさにこれまでの繰り返しになってしまっているのではありませんか。
地方創生は、それぞれの地域が何をやるか考えるのが先で、国から金が来る、何をするか、こんな順番で物を考えるのはだめだと思いますけれども、安倍総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 まさに、私たちが進めている改革は、地域の主体性、地域の創意工夫を国が応援していくためのものでありまして、地方公 共団体が策定する地方版総合戦略は、地方の皆さんが地域の資源の活用について知恵を絞って、それぞれの地域に適した地方創生の実現を目指していくものであ りまして、国としては、しっかりと、まさに本気でやる気のある地方の創意工夫を全力で応援していくという方針に基づいて、地方がつくる戦略を、予算や税制 や人材等、あらゆる方策を使ってこれからも後押しをしていくという考えでございます。
○柿沢委員 そうなってはいないではありませんか。
さて、山内町長は、平成十四年に初当選したとき、オール野党で、四面楚歌の状態だった。小泉改革の三位一体改革で、町の税収に相当する二億円の地方交付税が減らされた。累積債務は当時百五億円と、財政再建団体転落が確実視されたという状況だったそうです。
この危機的状況から改革に打って出るためにまず行ったのが、さっきもお話が出ましたが、町長の給与五〇%カットだった。みずから身を削らない改革は支持 されない、この信念を持って、町長みずから給与五〇%カットを断行したところ、町長だけにやらせるわけにはいかないということで、幹部職員も、また一般職 の職員労組からも申し出があって、副町長四〇%、管理職、一般職三〇%から一六%、こういう給与のカットで続いてくれた。思わず涙が出たと町長は言ってお られました。
おかげで、これで、国家公務員給与比、ラスパイレス指数は七二・四ということになって、全国一の給与の低い自治体になったわけです。しかし、これで、町 は本気だというのが住民に伝わった。住民から、バス運賃の高齢者半額をなくしてもいい、ゲートボール協会への補助金は返上しますとか、こういう申し出が相 次いで、結果、交付税削減分の二億円を上回る財源が新たに生み出されることになったということであります。
これらの財源を使って、結婚祝い金一カップル十万円。出産祝い金、一人目十万、二人目二十万、三人目五十万、四人目以上百万。島の外に妊婦健診や出産に 行く交通費の助成。そして、島の特産のシロイカや岩ガキの離島からの輸送に、ハンディを克服するためのCAS凍結技術、この機器導入五億円。こういう未来 の投資にこの財源を充てていったということなんですね。
リーダーに必要なのは覚悟だ、本気でやるかやらないかだ、そして、みずから身を削らない改革は支持されないと、山内町長は繰り返し語っておられます。
身を切る改革については、再三再四申し上げてまいりました。それなくして、いかなる大改革も実現しないと考えているからです。国会議員の定数、歳費の削 減、財政再建等、改革に乗り出すための第一歩として、リーダーが身を切る改革をみずから断行する、この必要性について安倍総理はどう思われますか。
○安倍内閣総理大臣 私は、行政府の長として、私の閣僚としての給与については三割カットしておりますし、昨年四月に特例による減額がなくなって以降もこの三割の削減は続けておりますし、私は三割、そして閣僚は二割、国庫に返納させていただいております。
そういう意味におきましては、行政府の長としての覚悟は示させていただいているところでございます。(発言する者あり)
○柿沢委員 今、こちらからありましたけれども、前々からそれはやられていることですね。
ちなみに、小泉さんはどう思いますか。
○小泉大臣政務官 この海士町の取り組みの中でも、今おっしゃった財政再建に対する覚悟、そこから生まれた、島留学を含めて、この取り組み がなぜ生まれたのかというのは、これは海士町だけではなくて、例えば、最近行った長野県の下條村を含め、やはりそれぞれの地域で、その政治の覚悟というの は改革の中では不可欠だ、そういった思いは委員と全く同感です。
○柿沢委員 さて、山内町長は、みずからの給与の五〇%カットに続いて、一般職員の給与を削減するに当たって、島の民間企業で働いている人 たちの給与水準をアンケートをとって調べた。おおむね、職員給与が民間より大体三割高いという見当をつけて、その上で職員の給与削減を決めていったという ことなんです。
地方では、最も高い給与をもらっているのが公務員というのが少なくないと思います。実感ベースでもそう感じている人は多いと思います。なぜそうなるの か。国、地方の公務員給与水準の決定の前提となる人事院並びに人事委員会の官民給与比較のやり方がゆがんでいるからだと私は思います。
パネルをごらんください。
上は、人事院の職種別民間給与実態調査。これだと、全職種の民間給与平均は、年額換算でボーナスを含めて六百六十万とされています。ところが、下を見て ください、国税庁が調べている民間給与実態統計調査、これだと四百十四万円。同じ政府の統計で、同じ民間給与の平均ですといって、二百万円以上、一・五倍 もの開きがある。一体これはどういうことでしょうか。
どういうことかというと、調査対象に違いがあるんですね。人事院の調査は、企業規模五十人以上かつ事業所規模五十人以上の事業所、つまり、社員五十人以上の企業で、なおかつ本店、支店等の事業所で五十人以上が勤務しているところ、それのみが調査対象になっている。
そんなのどれだけありますか。しかも、地方に行けば行くほどこんな事業所は少ないし、都市部に偏ってしまう。結局、こういう調査対象にしていることに よって、待遇のいい、大企業の事業所だけを取り出して調査して、それが民間給与の平均ですと出してきて、それをベースに公務員給与を決めている形になって いるんです。
都道府県の人事委員会も同じような調査をしていて、市町村もほぼそれに倣って給与水準を決めるから、結果、全国津々浦々、大企業なんか一つもないところの市町村の職員も、地域の平均とかけ離れた、大企業並みの給与を得ることになっている。
一方、国税庁の調査は、従業員一人以上の企業と事業所を規模別に抽出して調査していますから、四百十四万円、より民間実勢に近い数字が出ているように思います。
何で、こんな公務員給与を高くするためのような調査をわざわざ別にやっているんでしょうか。
ちなみに、現業職員についてはもっとひどくてというか、そもそも同業の民間企業との官民給与比較そのものを行っていない。おおむね、一般職員の、行政職 の給与表を引っ張ってきて、大体それで現業職員の給与にしている。だから、それこそ、同じ仕事であったとしても、官が高くて民が低い、逆官民格差が甚だし くなってしまっているわけです。
安倍総理、この、一・五倍、二百万円も平均で違う数字が出てくる、国、地方の公務員給与水準の決定の前提となる官民給与比較を、民間企業の実勢に、本当にそれを反映するようなやり方に改めていくべきだと考えますけれども、いかがですか。
○有村国務大臣 まず私の方から担当としてお答えさせていただきます。
柿沢委員も御案内のとおり、国家公務員制度については、労働基本権が制約されているために、その代償の措置として、第三者機関である人事院による給与勧 告制度が設けられています。勧告に当たっては、人事院の、何が給与を決めるのかということで、民間においても、役職、年齢、あるいは先ほどおっしゃった勤 務地域、学歴など大体同じような方々の給与を比較するということで、直近では全国で一万二千事業所以上の調査をされています。
私どもはこれを妥当と思い、また信用性があるものと認識をしておりますけれども、国税庁の調査で四百十四という数値を出していただいておりますが、この 四百十四万円というのは、フルタイムの従業員でない方、つまりパートタイマーの方も入っています。また、公務員と類似しない、例えば生産労働現場、建設 業、あるいは販売員の方々の給与も、いわゆる年齢とか、あるいはそういう地域を考慮せずに単純平均している数値でございまして、これを信頼性のある、ずっ とやっていかなきゃいけない公務員給与制度ということに直接当てはめるのは妥当ではないという認識でございます。
○柿沢委員 非正規も入っているというお話なんですけれども、非正規を抜いて正規だけを取り出しても四百七十三万円なんです。
安倍総理、これは安倍総理に対して通告をさせていただいた質問なので、ぜひお答えをいただきたいと思うんですけれども、今の御答弁でいいんですか。
○安倍内閣総理大臣 ちなみに、先ほど私が給与を三割カットしているというふうに申し上げましたら、それは前例を踏襲しているんじゃないか という指摘をいただきましたが、前例というのは、第一次安倍政権で私が三割カットというのをつくった、安倍内閣でつくった前例であるということは申し添え ておきたい、このように思います。
多くの方は御存じないと思いますが、殊さら私は今までこれを強調したことはないわけでありまして、聞かれたからお答えをしたわけでございます。
そして、第三者機関としての人事院及び人事委員会が専門的見地からこれは判断し、そして実施しているものと承知をしております。
いずれにいたしましても、公務員の給与については、職員の士気や組織活力の向上を図るとともに、国民の理解を得る観点から、適切に対応していくべき、このように考えているわけでございます。
また、人事院等が行っている官民給与比較の手法については、これは調査対象企業の規模も含めて、人事院等において専門的見地から判断されるものである、このように考えております。
○柿沢委員 ここから先は、今の御答弁で妥当かどうかというのは、私たち自身も受けとめて、またそれを踏まえて判断をするということになると思います。
公務員についてなんですけれども、昇給についても能力・業績評価をやっていますと言うんですけれども、そして年功序列を排するということを言うんですが、実態は全然そうなっていないんです。
総務省が、昨年二月に、人事評価に関する検討会の報告書を公表しています。これまでの能力・業績評価の状況というのを明らかにしています。
パネルを見ていただきたいんですけれども、一般職については、能力と業績について、S、A、B、C、Dと五段階の評価をしているんですけれども、驚い ちゃうんですよ。特に優秀、S、優秀、A、通常のB、この上三つで九九・四%を占めていて、そして下二つのCとDを合わせて〇・六%、こういうことになっ ているわけですね。これは幹部公務員になるともっとすごくて、A、B、Cの三段階で評価するんですが、Aが八割、そして通常のBが二割前後、そして最下位 ランクのCはゼロということであります。
これが何を意味するのかというと、これは昇給に関係してくるわけですね。Bの通常という評価で四号俸上がります。Aではその一・五倍、Sではその二倍、 いわば上乗せ昇給をされるわけです。では、下のC、Dはどうかというと、実は、下から二番目のCの評価をとっても二号俸上がるんです。つまり、給与はアッ プするんですね。この中で給与が上がらないのは、Dの評価をとった〇・一%の人だけなんですよ。つまり、千人いれば九百九十九人が昇給する、毎年給与が上 がる、こういうものなんですね。
どこの会社で、千人いる企業で、一人を除いて、一番最下位の評価の人以外はみんな給与を上げている、こんな会社が一体どこにあるでしょうか。
しかも、後ろから声が上がりましたけれども、この日本国というのは、いわば赤字企業であります。そして、加えて申し上げれば、安倍総理は、政労使会議で、民間企業に対しては、年功序列の賃金体系は見直せということを言っておられるわけですね。
自分の足元では、みんなそろって、千人中九百九十九人が、仮に低い評価を受けていても昇給をする、こういう制度が残っている、このことについてどう思われますか。
○有村国務大臣 恐縮ですが、まず私の方から御報告させていただきます。
民間との給与の比較ということでございますが、国家公務員の給与制度は、民間企業の状況ということを当然踏まえます。その中で、民間企業においても、約 八割、過半数を優に超える企業の方々が、いわゆる管理職においても、経験や熟練度ということでの定期昇給ということを考慮した仕組みになっておりますの で、それに準拠して、参考にしているものというふうに、人事院で御判断をされているものだと理解をいたしております。
先ほどのS、A、B、Cということの表示をいただきましたけれども、これは平成二十一年、全省庁でスタートさせました人事評価制度の本格実施から五年の検証として総務省が出されたものでございます。
任用、給与、人事育成、全ての人事的な側面において人事管理を行うには、能力・実績主義を上げなければならない。議員おっしゃるとおりでございます。
その中で、一人一人のこれからの人材開発という点からも、私どもは、絶対評価による評価が妥当だと思っています。これが直ちに昇給に反映されるわけではありません。あらかじめ適当な、いわゆる評語、このカテゴリーは何割というようなことを決めているわけではありません。
けれども、やはり委員がおっしゃったように、人事の公平性、透明性、また国家公務員の総人件費の増加の抑制ということは、引き続き安倍内閣としてもやっていかなければならない、また、それを実施してまいりたいと考えております。
〔金田委員長代理退席、委員長着席〕
○柿沢委員 今のも安倍総理に通告させていただいた質問です。
改めて申し上げます。安倍総理は政労使会議で、民間企業には、年功序列で、年功で賃金が上がっていく、そういう賃金体系を見直したらどうかということをおっしゃっているわけですね。この現状を見てどう思われますか。安倍総理、どうですか。
○安倍内閣総理大臣 基本的に、今既に担当大臣が答弁しているとおりでございますが、人事評価については、あらかじめ分布の割合を定めるこ とはせず、また複数の者による評価を行うなど、公正性にも配慮した仕組みを設けているわけでありまして、その中で、各任命権者においてそれぞれ評価された 結果と考えています。
引き続き、評価者への研修の充実など、努力すべきところは努力しながら対応して、制度の趣旨に沿ったものにしていきたいと思います。
○柿沢委員 千人中九百九十九人が昇給をするというこの現状は妥当だというふうにお考えになられている、少なくとも、現状これが問題だというふうに即座にお答えになる、そんな意識ではないということなんでしょうか。そう理解させていただきます。
リーダーが覚悟を見せるという点でも、僕はこれは落第だと思うんです。幹部公務員、もう一回見ていただくと、A、B、Cの三段階の評価で、Cはゼロです からね。事務次官クラス、もっと上になるともっとすごくて、A、Bの二段階の評価しかない。通常に仕事をしていればAとみなすということをわざわざ政令に 書き込んでいるんですよ。要は、上に行けば行くほど大甘の評価をしている、こういうことになっているわけですね。
事実上こうして年功序列で右肩上がりに毎年昇給をしていく、こういう仕組みに今メスを入れようということで、大阪の橋下市長が市職員の給与構造の調査と改革を始めています。
ちょっとわかりにくいんですけれども、これが人事委員会に出させたデータなんです。上が事務係長、事務職の係長ですね。民間の給与実態を見ると、ほぼ三十代半ばから頭打ちになっていますね。しかし、公務員は、係長のままでも毎年昇給していくわけです。
下は課長ですけれども、課長も、ごらんのとおり、民間では三十五歳ぐらいから大体頭打ちになっています。そして、五十五歳以上は下がってきているわけですね。
では、公務員はどうなっているかというと、国家公務員も五十五歳から昇給停止になりましたけれども、民間は下がっているわけですから。しかも、係長であ ろうと課長であろうと、同一ポストにいても、さっき言ったように、通常の評価以上のものを受けていれば、四号俸、六号俸、八号俸と上がっていくわけです ね。
これは、そもそも、法律に規定をされた公務員における職務給の原則というものも踏み外してしまっているのではないかと思います、同一ポストで上がっていっちゃうわけですから。
これは、大阪府では、局長、部長級の幹部職員は、年功的な要素を廃止して、より成果を問う定額制の給与にした。
民間企業で、管理職、成果を問われるポストの場合は、こうした定額制の給与にして、そして賞与やあるいは昇格、昇任、こうしたことで処遇をするというこ とが一般的になりつつあるようにも思いますけれども、やはり同様に国家公務員も、成果が特に問われる課長級以上は定額制の給与にして、そして成果に応じて 昇格やあるいは賞与で処遇する、これが正しいやり方ではないかと思いますが、いかがですか。
○有村国務大臣 お答えいたします。
先ほど少し申し上げましたけれども、民間においても、約八割が、そのような同じ職員においても経験や熟練ということを勘案しておりますので、それは妥当だという認識をしております。
また、先ほど御指摘をいただきました、特に幹部職員についてはCがないじゃないかということで、お手盛りじゃないかというような旨の御指摘をいただきま したけれども、幹部職員の人事評価においては、Cがつく場合は、求められる行動や役割がほとんどとられていないというふうに多くの者が一致して評価すると いう厳しい、そういうデフィニションのもとで動いていますので、Cがつかないというのは何らおかしいことではない。むしろ、そのように、一般の職員を統率 してトップリーダーになっていく人たちにCがつかないというような状況の中でしっかり働いていただきたいと思います。
ちなみに、Dというのは、本人が不利益処分を受ける、分限の契機になるというレベルでございますので、その評語というのと、何を意図するのかということ を共有して、研修も続けながら、そのカテゴリーが意味することをしっかりと国家公務員制度の中でみんなで共有して、人事の信頼性を引き続き高めていきたい と考えております。
○柿沢委員 そういうことで、結局、年功序列の護送船団になっているんじゃないか、そう言わざるを得ないと私は思います。
アレシナの法則でも、歳出削減、公務員人件費の削減が重要だとされています。海士町では、町長が率先して給与カットをして、それを契機に財政再建と町の活性化が進んでいるわけですね。
また維新の党が何か言っていると思われるのかもしれませんけれども、しかし、もともと民主党も、国家公務員総人件費の二割削減というのは言っていたわけですね。
だから、そういう意味では、先ほど申し上げたように、官が高くて民が低い、逆官民格差がある、そして、能力や実績にかかわらず昇給する年功序列の賃金体 系が事実上温存されている、こういうことがあるわけですから、そして、歳出削減というのはどうしてもやっていかなきゃいけないことですから、ならば、国、 地方の公務員人件費二割削減に向けたロードマップを、これは与野党共同してつくっていこうではありませんか。
ぜひ、安倍総理に御答弁いただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 国家公務員の総人件費については、給与水準は、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、民間の水準を踏まえて決定され、定員はその時々の行政需要に的確に対応する観点から決定されるべきものと考えています。
また、地方公務員についても、各地方公共団体において、適正な定員管理の推進や給与適正化に取り組むべきもの、このように思います。
そういう中において、政府としては、厳しい財政事情に鑑み、国家公務員の総人件費については、国家公務員の総人件費に関する基本方針において、その抑制を図ることとしています。
具体的には、早期退職募集制度の活用や高齢層職員の給与の見直しによって、年齢構成の高齢化や高齢化による人件費の伸びを抑えるとともに、簡素で効率的な行政組織、体制の確立に努めています。
また、国家公務員の給与については、昨年夏の人事院勧告に沿って、地域間、世代間の給与配分を見直す給与制度の総合的見直しに取り組んでいるところでありまして、地方公務員においても、この趣旨に沿った対応が行われるものと考えています。
したがって、国、地方の公務員の人件費について、あらかじめ、御指摘のような具体的な数値目標を設けたロードマップを作成することはなじまないのではないかと考えています。
○柿沢委員 安倍総理、戦後以来の大改革をやろうということですので、大変私は期待をしたいと思うんですが、そうであるとすれば、まさにこ ういうことから始めていく、そのことが財政再建、また歳出削減を実現し、また、改革をなし遂げる第一歩になるはずだ、そのことについて、残念ながら前向き な答弁をいただけなかったように思います。
アレシナの黄金律に戻しますが、一番下に書いてあるとおり、公務員人件費と社会保障費、これを削っている国が財政再建に成功したということが、アレシナ 教授の研究の結果、明らかになったことであります。国の一般歳出の五割を社会保障費は占めているわけですから、ここにメスを入れなければ歳出削減は進まな い、これは事実だと思います。
一方で、そうしたことが国民への給付やサービスの低下、いわゆる切り捨て的な状況を生まないように、負の影響というものは最小限にしていかなければいけないのも事実だと思います。
一つの事例を紹介したいと思います。
認知症の人が認知症を介護する、いわゆる認認介護、この言葉の生みの親とも言われる高瀬義昌医師が中心となった、地域包括ケアにおける医薬品適正使用に 関する研究というのがあります。東京都大田区で在宅医療の専門医をやっていて、三百三十人の患者を抱えて、その多くは認知症高齢者です。
患者さんのお宅に行ってみると、このとおりですよ、大量の薬を処方されている。こんな量の薬をもらって、認知症のある高齢者の方が果たしてこれを正しく飲めるかという話です。
しかも、こうやって安易に薬をぱっぱと大量に処方することによって、どうなるか。中には、ベンゾジアゼピン系の向精神薬とか睡眠薬等が入っていて、これ らの薬剤が患者の意識障害、特に譫妄の症状を悪化させて、むしろケアを困難にする、こういうケースが間々あるんです。特に、六剤以上の薬剤の多剤併用は危 険を生じやすいというふうにされています。
これを、在宅医療の現場で薬の量を整理するとどうなるか、お示ししたいと思います。
八十七歳の男性、要介護三、見てのとおり、今まで十七種類もの薬剤を処方されていた。ベンゾジアゼピン系の向精神薬、これはデパスとかですね、入ってい ます。しかも、見てください。朝食後はこれを飲め、毎食後はこれを飲め、これは朝夕二回だ、これは夕食前だ、そして就寝前だ、こんなのを正しく服用できる 認知症高齢者がいるんでしょうか。複雑怪奇です。
これを、高瀬先生が入って薬剤の整理を行った。どうなったか。
服薬を夕食後全て一回に調節をして、四種類にした。二種類、頓服というか、不穏時に飲む不定期のお薬が出ていますけれども、基本四種類。十七種類、これは必要ないねと削っていくことによって四種類にした。
四種類に減らしただけじゃないんですよ。減らした結果どうなったかというと、この人は、夜ぐっすり寝られるようになって、徘回がなくなって、譫妄の症状も落ちついて、自分でデイサービスへ行けるようになった。QOLが上がっているんです。
そして、これだけ薬剤が減ったわけですから、薬剤費が減ります。一日分の薬価差額七百四円。三百六十五掛ければ、年額換算で、一人ですよ、一人で二十六万円も薬剤費の削減になるわけです。
認知症対策は、国家戦略として今オレンジプラン、新たに策定をしたところですよね。二〇二五年には七百万人になると。七百万と言うけれども、実は、予備 軍と言われるMCI、軽度認知障害の人はもう七百万人いますから、千五百万人。つまり、高齢者三千万人の二人に一人は二〇二五年には認知症になっている。 あなたも認知症、私も認知症、こういう時代が来るわけです。
このときにこんなことをやっていたら、それこそ医療費のだだ漏れになってしまう。こうした点をやはり今改めていかなければならないと思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 認知症については、今後、誰もがかかわる、本人、配偶者、あるいは両親という形で、誰もがかかわりを持つ可能性のある身近な病気であろう、このように思います。
最も速いスピードで高齢化が進む我が国こそ、社会全体で世界のモデルとなる取り組みを進めていく必要があり、このため、本年一月に、新たに新オレンジプランを策定したわけでございます。
認知症による行動や心理面の症状に対する薬の使用についてでございますが、委員が示された薬というのは、これは一つの病院で処方された薬なんでしょうか。(柿沢委員「そうですね」と呼ぶ)一つの病院で。
一つの病院だということ、大変これは驚きなんですが、今後、高齢者の特性を考慮した対応が不十分であることによって副作用や日常生活への支障が生じる、 またあるいは、複数の医療機関から投薬をされることによって薬の重複や副作用が頻繁に見られる場合があるといった課題も指摘されていることは承知をしてお ります。
さらに、委員が御指摘になったように、一つの医療機関でこれだけたくさんの薬を処方するというのは、これは確かに大きな問題だろう、このように私は思います。
こうした課題に対応するために、新戦略では、まず、的確に症状や周囲の環境を把握した上、原則、薬物を使わない対応を第一選択とすること、そして、投薬 が必要な場合には高齢者の特性を十分考慮することなどを定めたガイドラインについて、研修等を通じ普及を図るとともに、医療、介護の関係者が情報を共有し て、連携して支援できるよう取り組んでいくこととしております。
繰り返しになりますが、原則、薬物を使わない対応を第一選択とすることということでございます。
今後、認知症の方ができる限り住みなれた地域で適切に医療、介護を受けられるよう取り組みを強化することとしておりまして、これによって社会保障費の伸びの抑制にもつながり得るものである、このように考えております。
○柿沢委員 公務員の人件費の削減も、またこの社会保障費の削減も、やればできる、できる余地があるわけです。そして、それは、本気で取り 組むことによって改革はなし遂げられる、まさに海士町の山内町長が教えてくれるとおりだと思います。ぜひ本気の取り組みを期待して、終わりにさせていただ きたいと思います。
ありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/189/0018/18903060018015a.html
第189回国会 予算委員会 第15号
平成二十七年三月六日(金曜日)
<前略>
○柿沢委員 維新の党の柿沢未途でございます。
まず、何度か出しているアレシナの黄金律のおさらいをしたいと思います。
ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授が、過去のOECD二十カ国の財政データを用いて、財政再建に成功した国と失敗した国の要因を検証した。それ によると、増税先行の財政再建は失敗に終わり、財政再建を成功させた国は歳出削減に力を入れていたということであります。その比率が、歳出削減七、そして 増税三。この七対三が、財政再建と経済成長を両立するアレシナの黄金律ということであるわけです。そして、財政再建に成功した国が歳出削減で何を削ってい たかというと、公務員人件費と社会保障費、これが対象になっていた。
このところ国会ではピケティの話が非常に多いんですけれども、私は、日本の現状を鑑みて言うと、ピケティよりアレシナだ、こういうふうに思っているところです。
地方創生の集中審議で何でハーバード大学の先生の名前が出てくるんだという話なんですが、ここからが本番です。
土日で、私、海士町に行ってきました。安倍総理も昨年秋の所信表明演説で取り上げられた、隠岐に浮かぶ、人口二千四百人、小さな町であります。米子の近 くの七類港からフェリーで四時間半かかります。しかも、しけていて大変揺れました。東京から八百五十キロ、本当に遠いです。
しかし、この離島に、東京から、全国から、Iターンの人たちがこの十年間で四百八十七人も移り住んできております。定住しているだけでも三百人以上、島 の人口の一割以上をこうしたIターンの皆さんが占めています。来るのは、ほぼ全員が四十歳以下で、トヨタを、ソニーを、リクルートをやめて、遠いこの島に 移り住んでくるわけです。
パネルを見ていただくと、さざえカレー、安倍総理も紹介されていましたが、写真で載せてあります。
あと、これは隠岐牛です。建設業から業種転換して肥育を始めたという隠岐牛は、東京の食肉市場で最高ランクのA5になって、幻の黒毛和牛と言われているそうであります。
ここに岩ガキの春香もつけておきましたけれども、Uターンの漁師さんとIターンのサーフショップの経営者の二人が組んで養殖を始めた岩ガキ春香が、今、東京のオイスターバーで大人気、こういうことであります。
かつて朝廷に献上していたという干しナマコを復活させて中国や香港へ売り込みたいと、宮崎さんというこの写真にある青年が、一橋大学を卒業して、海士町に移り住んで、干しナマコの加工、生産に今取り組んでいます。
島の唯一の高校である隠岐島前高校、生徒流出で分校格下げの寸前でしたけれども、町がIターンの青年と一緒に魅力化プロジェクトというものに取り組んで、学習支援のために町営の塾を設けて、ここでも、Iターンの皆さんが夜十時、十一時まで学生の指導に当たっている。
今や、島留学と呼ばれる都会からの生徒もやってきて、生徒数、二〇〇八年度は八十九人だったのが、今は百五十六人。V字回復をしている。
ちょうど、島留学で、あした卒業式を迎えるという三年生二人とそこで会ったんですけれども、上智大学や東洋大学に進学するんだそうですけれども、必ず帰ってきて島に恩返ししたいと、真っすぐな瞳で語っておられたのが大変印象的でありました。
島根県では、平成の大合併で市町村数が五十九から二十一に減ったそうですけれども、人口減少がとまったのはこの海士町だけ。今や、Iターン者のおかげで 子供の数がふえて、ことしは島で唯一の保育園に何と待機児童が出そうだというんですね。これらの取り組みを進めているのが、写真にもありますが、山内道雄 町長です。
きょうは、地方創生担当の小泉進次郎政務官にも来ていただいていますけれども、十一月に海士町を訪れていますよね。百聞は一見にしかずだと私も思いまし た。いろいろお感じになられたことがあるんじゃないかと思うんですけれども、海士町にも足を運んで、山内町長とも会われた小泉政務官、町と町長にどんな印 象を持ったか、ぜひ聞かせてください。
〔委員長退席、金田委員長代理着席〕
○小泉大臣政務官 委員がおっしゃるとおり、十一月に私も海士町に伺いました。数多くの地方に足を運びましたが、その中でも最も感銘を受けた、そんな視察先だと言っても過言ではありませんでした。
山内町長の、みずからの給料を五〇%カットし、そして、吉元課長初め町の幹部の皆さんがそれに呼応する形で三割カットをし、そして、それを見ていた町民 の皆さんが、町の皆さん頑張っているなということで、バスに対する補助金をカットしても構わないという自主的な声が生まれ、まさに覚悟のあるまちづくりを なし遂げた結果が、さざえカレーであり、CASシステムでもあり、また島留学でもあると思いますので、この海士町の山内町長の言葉は、私も、今地方創生を 担当している政務官として、常に胸の中に持っております。
やる気と本気は違うんだ。やる気がありますかと言えば、みんな、やる気があると言う。だけれども、その本気はしっかりと見きわめなければいけない。小泉さん、お金を配っちゃいけないよ。本気で、地方の覚悟があるところに配らなければ死に金になるよ。
その言葉を忘れずに、これからもしっかりと、地方創生、後押しをしていきたいと思っております。
○柿沢委員 いい御答弁をいただきました。
山内町長も、進次郎さんは大変将来有望な政治家だと言っておられましたよ。
海士町では、このようにIターンの二十代、三十代の若い人たちが活躍しています。今いみじくも答弁あったとおり、山内町長は、補助金がつくからやらない かということは絶対言わないようにしている、何かやりたいと本気で考えている人というのは、最終的に熱意だけで成功に導いていく、本気で向かってくる人に は本気で応えようと思っている、金があるからやりますというのは、絶対にいい結果を生まないと言っています。
今回、その典型例みたいな記事に出くわしたので、紹介したいと思います。
これは長野県なんですが、大変失礼ですけれども、平成二十六年度補正予算が二月の県議会で可決をされたというニュースなんです。地方創生のための国から の交付金が二十一億六千五百万円おりてきたけれども、詳細な事業設計はこれからで、何に使うのか、効果は上がるのかと県議会で問われて、担当者が説明に窮 する場面があったと。担当者は、事業計画の国への提出期限も迫っているから走りながら考えるしかない、こういうふうに答えているんだそうですよ。これはま さに、金があるからやりますというものの典型ではないですか。
地方創生は今までの地方振興策とは違う、異次元だと石破大臣もおっしゃられていたわけですけれども、現場で起きていることは、まさにこれまでの繰り返しになってしまっているのではありませんか。
地方創生は、それぞれの地域が何をやるか考えるのが先で、国から金が来る、何をするか、こんな順番で物を考えるのはだめだと思いますけれども、安倍総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 まさに、私たちが進めている改革は、地域の主体性、地域の創意工夫を国が応援していくためのものでありまして、地方公 共団体が策定する地方版総合戦略は、地方の皆さんが地域の資源の活用について知恵を絞って、それぞれの地域に適した地方創生の実現を目指していくものであ りまして、国としては、しっかりと、まさに本気でやる気のある地方の創意工夫を全力で応援していくという方針に基づいて、地方がつくる戦略を、予算や税制 や人材等、あらゆる方策を使ってこれからも後押しをしていくという考えでございます。
○柿沢委員 そうなってはいないではありませんか。
さて、山内町長は、平成十四年に初当選したとき、オール野党で、四面楚歌の状態だった。小泉改革の三位一体改革で、町の税収に相当する二億円の地方交付税が減らされた。累積債務は当時百五億円と、財政再建団体転落が確実視されたという状況だったそうです。
この危機的状況から改革に打って出るためにまず行ったのが、さっきもお話が出ましたが、町長の給与五〇%カットだった。みずから身を削らない改革は支持 されない、この信念を持って、町長みずから給与五〇%カットを断行したところ、町長だけにやらせるわけにはいかないということで、幹部職員も、また一般職 の職員労組からも申し出があって、副町長四〇%、管理職、一般職三〇%から一六%、こういう給与のカットで続いてくれた。思わず涙が出たと町長は言ってお られました。
おかげで、これで、国家公務員給与比、ラスパイレス指数は七二・四ということになって、全国一の給与の低い自治体になったわけです。しかし、これで、町 は本気だというのが住民に伝わった。住民から、バス運賃の高齢者半額をなくしてもいい、ゲートボール協会への補助金は返上しますとか、こういう申し出が相 次いで、結果、交付税削減分の二億円を上回る財源が新たに生み出されることになったということであります。
これらの財源を使って、結婚祝い金一カップル十万円。出産祝い金、一人目十万、二人目二十万、三人目五十万、四人目以上百万。島の外に妊婦健診や出産に 行く交通費の助成。そして、島の特産のシロイカや岩ガキの離島からの輸送に、ハンディを克服するためのCAS凍結技術、この機器導入五億円。こういう未来 の投資にこの財源を充てていったということなんですね。
リーダーに必要なのは覚悟だ、本気でやるかやらないかだ、そして、みずから身を削らない改革は支持されないと、山内町長は繰り返し語っておられます。
身を切る改革については、再三再四申し上げてまいりました。それなくして、いかなる大改革も実現しないと考えているからです。国会議員の定数、歳費の削 減、財政再建等、改革に乗り出すための第一歩として、リーダーが身を切る改革をみずから断行する、この必要性について安倍総理はどう思われますか。
○安倍内閣総理大臣 私は、行政府の長として、私の閣僚としての給与については三割カットしておりますし、昨年四月に特例による減額がなくなって以降もこの三割の削減は続けておりますし、私は三割、そして閣僚は二割、国庫に返納させていただいております。
そういう意味におきましては、行政府の長としての覚悟は示させていただいているところでございます。(発言する者あり)
○柿沢委員 今、こちらからありましたけれども、前々からそれはやられていることですね。
ちなみに、小泉さんはどう思いますか。
○小泉大臣政務官 この海士町の取り組みの中でも、今おっしゃった財政再建に対する覚悟、そこから生まれた、島留学を含めて、この取り組み がなぜ生まれたのかというのは、これは海士町だけではなくて、例えば、最近行った長野県の下條村を含め、やはりそれぞれの地域で、その政治の覚悟というの は改革の中では不可欠だ、そういった思いは委員と全く同感です。
○柿沢委員 さて、山内町長は、みずからの給与の五〇%カットに続いて、一般職員の給与を削減するに当たって、島の民間企業で働いている人 たちの給与水準をアンケートをとって調べた。おおむね、職員給与が民間より大体三割高いという見当をつけて、その上で職員の給与削減を決めていったという ことなんです。
地方では、最も高い給与をもらっているのが公務員というのが少なくないと思います。実感ベースでもそう感じている人は多いと思います。なぜそうなるの か。国、地方の公務員給与水準の決定の前提となる人事院並びに人事委員会の官民給与比較のやり方がゆがんでいるからだと私は思います。
パネルをごらんください。
上は、人事院の職種別民間給与実態調査。これだと、全職種の民間給与平均は、年額換算でボーナスを含めて六百六十万とされています。ところが、下を見て ください、国税庁が調べている民間給与実態統計調査、これだと四百十四万円。同じ政府の統計で、同じ民間給与の平均ですといって、二百万円以上、一・五倍 もの開きがある。一体これはどういうことでしょうか。
どういうことかというと、調査対象に違いがあるんですね。人事院の調査は、企業規模五十人以上かつ事業所規模五十人以上の事業所、つまり、社員五十人以上の企業で、なおかつ本店、支店等の事業所で五十人以上が勤務しているところ、それのみが調査対象になっている。
そんなのどれだけありますか。しかも、地方に行けば行くほどこんな事業所は少ないし、都市部に偏ってしまう。結局、こういう調査対象にしていることに よって、待遇のいい、大企業の事業所だけを取り出して調査して、それが民間給与の平均ですと出してきて、それをベースに公務員給与を決めている形になって いるんです。
都道府県の人事委員会も同じような調査をしていて、市町村もほぼそれに倣って給与水準を決めるから、結果、全国津々浦々、大企業なんか一つもないところの市町村の職員も、地域の平均とかけ離れた、大企業並みの給与を得ることになっている。
一方、国税庁の調査は、従業員一人以上の企業と事業所を規模別に抽出して調査していますから、四百十四万円、より民間実勢に近い数字が出ているように思います。
何で、こんな公務員給与を高くするためのような調査をわざわざ別にやっているんでしょうか。
ちなみに、現業職員についてはもっとひどくてというか、そもそも同業の民間企業との官民給与比較そのものを行っていない。おおむね、一般職員の、行政職 の給与表を引っ張ってきて、大体それで現業職員の給与にしている。だから、それこそ、同じ仕事であったとしても、官が高くて民が低い、逆官民格差が甚だし くなってしまっているわけです。
安倍総理、この、一・五倍、二百万円も平均で違う数字が出てくる、国、地方の公務員給与水準の決定の前提となる官民給与比較を、民間企業の実勢に、本当にそれを反映するようなやり方に改めていくべきだと考えますけれども、いかがですか。
○有村国務大臣 まず私の方から担当としてお答えさせていただきます。
柿沢委員も御案内のとおり、国家公務員制度については、労働基本権が制約されているために、その代償の措置として、第三者機関である人事院による給与勧 告制度が設けられています。勧告に当たっては、人事院の、何が給与を決めるのかということで、民間においても、役職、年齢、あるいは先ほどおっしゃった勤 務地域、学歴など大体同じような方々の給与を比較するということで、直近では全国で一万二千事業所以上の調査をされています。
私どもはこれを妥当と思い、また信用性があるものと認識をしておりますけれども、国税庁の調査で四百十四という数値を出していただいておりますが、この 四百十四万円というのは、フルタイムの従業員でない方、つまりパートタイマーの方も入っています。また、公務員と類似しない、例えば生産労働現場、建設 業、あるいは販売員の方々の給与も、いわゆる年齢とか、あるいはそういう地域を考慮せずに単純平均している数値でございまして、これを信頼性のある、ずっ とやっていかなきゃいけない公務員給与制度ということに直接当てはめるのは妥当ではないという認識でございます。
○柿沢委員 非正規も入っているというお話なんですけれども、非正規を抜いて正規だけを取り出しても四百七十三万円なんです。
安倍総理、これは安倍総理に対して通告をさせていただいた質問なので、ぜひお答えをいただきたいと思うんですけれども、今の御答弁でいいんですか。
○安倍内閣総理大臣 ちなみに、先ほど私が給与を三割カットしているというふうに申し上げましたら、それは前例を踏襲しているんじゃないか という指摘をいただきましたが、前例というのは、第一次安倍政権で私が三割カットというのをつくった、安倍内閣でつくった前例であるということは申し添え ておきたい、このように思います。
多くの方は御存じないと思いますが、殊さら私は今までこれを強調したことはないわけでありまして、聞かれたからお答えをしたわけでございます。
そして、第三者機関としての人事院及び人事委員会が専門的見地からこれは判断し、そして実施しているものと承知をしております。
いずれにいたしましても、公務員の給与については、職員の士気や組織活力の向上を図るとともに、国民の理解を得る観点から、適切に対応していくべき、このように考えているわけでございます。
また、人事院等が行っている官民給与比較の手法については、これは調査対象企業の規模も含めて、人事院等において専門的見地から判断されるものである、このように考えております。
○柿沢委員 ここから先は、今の御答弁で妥当かどうかというのは、私たち自身も受けとめて、またそれを踏まえて判断をするということになると思います。
公務員についてなんですけれども、昇給についても能力・業績評価をやっていますと言うんですけれども、そして年功序列を排するということを言うんですが、実態は全然そうなっていないんです。
総務省が、昨年二月に、人事評価に関する検討会の報告書を公表しています。これまでの能力・業績評価の状況というのを明らかにしています。
パネルを見ていただきたいんですけれども、一般職については、能力と業績について、S、A、B、C、Dと五段階の評価をしているんですけれども、驚い ちゃうんですよ。特に優秀、S、優秀、A、通常のB、この上三つで九九・四%を占めていて、そして下二つのCとDを合わせて〇・六%、こういうことになっ ているわけですね。これは幹部公務員になるともっとすごくて、A、B、Cの三段階で評価するんですが、Aが八割、そして通常のBが二割前後、そして最下位 ランクのCはゼロということであります。
これが何を意味するのかというと、これは昇給に関係してくるわけですね。Bの通常という評価で四号俸上がります。Aではその一・五倍、Sではその二倍、 いわば上乗せ昇給をされるわけです。では、下のC、Dはどうかというと、実は、下から二番目のCの評価をとっても二号俸上がるんです。つまり、給与はアッ プするんですね。この中で給与が上がらないのは、Dの評価をとった〇・一%の人だけなんですよ。つまり、千人いれば九百九十九人が昇給する、毎年給与が上 がる、こういうものなんですね。
どこの会社で、千人いる企業で、一人を除いて、一番最下位の評価の人以外はみんな給与を上げている、こんな会社が一体どこにあるでしょうか。
しかも、後ろから声が上がりましたけれども、この日本国というのは、いわば赤字企業であります。そして、加えて申し上げれば、安倍総理は、政労使会議で、民間企業に対しては、年功序列の賃金体系は見直せということを言っておられるわけですね。
自分の足元では、みんなそろって、千人中九百九十九人が、仮に低い評価を受けていても昇給をする、こういう制度が残っている、このことについてどう思われますか。
○有村国務大臣 恐縮ですが、まず私の方から御報告させていただきます。
民間との給与の比較ということでございますが、国家公務員の給与制度は、民間企業の状況ということを当然踏まえます。その中で、民間企業においても、約 八割、過半数を優に超える企業の方々が、いわゆる管理職においても、経験や熟練度ということでの定期昇給ということを考慮した仕組みになっておりますの で、それに準拠して、参考にしているものというふうに、人事院で御判断をされているものだと理解をいたしております。
先ほどのS、A、B、Cということの表示をいただきましたけれども、これは平成二十一年、全省庁でスタートさせました人事評価制度の本格実施から五年の検証として総務省が出されたものでございます。
任用、給与、人事育成、全ての人事的な側面において人事管理を行うには、能力・実績主義を上げなければならない。議員おっしゃるとおりでございます。
その中で、一人一人のこれからの人材開発という点からも、私どもは、絶対評価による評価が妥当だと思っています。これが直ちに昇給に反映されるわけではありません。あらかじめ適当な、いわゆる評語、このカテゴリーは何割というようなことを決めているわけではありません。
けれども、やはり委員がおっしゃったように、人事の公平性、透明性、また国家公務員の総人件費の増加の抑制ということは、引き続き安倍内閣としてもやっていかなければならない、また、それを実施してまいりたいと考えております。
〔金田委員長代理退席、委員長着席〕
○柿沢委員 今のも安倍総理に通告させていただいた質問です。
改めて申し上げます。安倍総理は政労使会議で、民間企業には、年功序列で、年功で賃金が上がっていく、そういう賃金体系を見直したらどうかということをおっしゃっているわけですね。この現状を見てどう思われますか。安倍総理、どうですか。
○安倍内閣総理大臣 基本的に、今既に担当大臣が答弁しているとおりでございますが、人事評価については、あらかじめ分布の割合を定めるこ とはせず、また複数の者による評価を行うなど、公正性にも配慮した仕組みを設けているわけでありまして、その中で、各任命権者においてそれぞれ評価された 結果と考えています。
引き続き、評価者への研修の充実など、努力すべきところは努力しながら対応して、制度の趣旨に沿ったものにしていきたいと思います。
○柿沢委員 千人中九百九十九人が昇給をするというこの現状は妥当だというふうにお考えになられている、少なくとも、現状これが問題だというふうに即座にお答えになる、そんな意識ではないということなんでしょうか。そう理解させていただきます。
リーダーが覚悟を見せるという点でも、僕はこれは落第だと思うんです。幹部公務員、もう一回見ていただくと、A、B、Cの三段階の評価で、Cはゼロです からね。事務次官クラス、もっと上になるともっとすごくて、A、Bの二段階の評価しかない。通常に仕事をしていればAとみなすということをわざわざ政令に 書き込んでいるんですよ。要は、上に行けば行くほど大甘の評価をしている、こういうことになっているわけですね。
事実上こうして年功序列で右肩上がりに毎年昇給をしていく、こういう仕組みに今メスを入れようということで、大阪の橋下市長が市職員の給与構造の調査と改革を始めています。
ちょっとわかりにくいんですけれども、これが人事委員会に出させたデータなんです。上が事務係長、事務職の係長ですね。民間の給与実態を見ると、ほぼ三十代半ばから頭打ちになっていますね。しかし、公務員は、係長のままでも毎年昇給していくわけです。
下は課長ですけれども、課長も、ごらんのとおり、民間では三十五歳ぐらいから大体頭打ちになっています。そして、五十五歳以上は下がってきているわけですね。
では、公務員はどうなっているかというと、国家公務員も五十五歳から昇給停止になりましたけれども、民間は下がっているわけですから。しかも、係長であ ろうと課長であろうと、同一ポストにいても、さっき言ったように、通常の評価以上のものを受けていれば、四号俸、六号俸、八号俸と上がっていくわけです ね。
これは、そもそも、法律に規定をされた公務員における職務給の原則というものも踏み外してしまっているのではないかと思います、同一ポストで上がっていっちゃうわけですから。
これは、大阪府では、局長、部長級の幹部職員は、年功的な要素を廃止して、より成果を問う定額制の給与にした。
民間企業で、管理職、成果を問われるポストの場合は、こうした定額制の給与にして、そして賞与やあるいは昇格、昇任、こうしたことで処遇をするというこ とが一般的になりつつあるようにも思いますけれども、やはり同様に国家公務員も、成果が特に問われる課長級以上は定額制の給与にして、そして成果に応じて 昇格やあるいは賞与で処遇する、これが正しいやり方ではないかと思いますが、いかがですか。
○有村国務大臣 お答えいたします。
先ほど少し申し上げましたけれども、民間においても、約八割が、そのような同じ職員においても経験や熟練ということを勘案しておりますので、それは妥当だという認識をしております。
また、先ほど御指摘をいただきました、特に幹部職員についてはCがないじゃないかということで、お手盛りじゃないかというような旨の御指摘をいただきま したけれども、幹部職員の人事評価においては、Cがつく場合は、求められる行動や役割がほとんどとられていないというふうに多くの者が一致して評価すると いう厳しい、そういうデフィニションのもとで動いていますので、Cがつかないというのは何らおかしいことではない。むしろ、そのように、一般の職員を統率 してトップリーダーになっていく人たちにCがつかないというような状況の中でしっかり働いていただきたいと思います。
ちなみに、Dというのは、本人が不利益処分を受ける、分限の契機になるというレベルでございますので、その評語というのと、何を意図するのかということ を共有して、研修も続けながら、そのカテゴリーが意味することをしっかりと国家公務員制度の中でみんなで共有して、人事の信頼性を引き続き高めていきたい と考えております。
○柿沢委員 そういうことで、結局、年功序列の護送船団になっているんじゃないか、そう言わざるを得ないと私は思います。
アレシナの法則でも、歳出削減、公務員人件費の削減が重要だとされています。海士町では、町長が率先して給与カットをして、それを契機に財政再建と町の活性化が進んでいるわけですね。
また維新の党が何か言っていると思われるのかもしれませんけれども、しかし、もともと民主党も、国家公務員総人件費の二割削減というのは言っていたわけですね。
だから、そういう意味では、先ほど申し上げたように、官が高くて民が低い、逆官民格差がある、そして、能力や実績にかかわらず昇給する年功序列の賃金体 系が事実上温存されている、こういうことがあるわけですから、そして、歳出削減というのはどうしてもやっていかなきゃいけないことですから、ならば、国、 地方の公務員人件費二割削減に向けたロードマップを、これは与野党共同してつくっていこうではありませんか。
ぜひ、安倍総理に御答弁いただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 国家公務員の総人件費については、給与水準は、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、民間の水準を踏まえて決定され、定員はその時々の行政需要に的確に対応する観点から決定されるべきものと考えています。
また、地方公務員についても、各地方公共団体において、適正な定員管理の推進や給与適正化に取り組むべきもの、このように思います。
そういう中において、政府としては、厳しい財政事情に鑑み、国家公務員の総人件費については、国家公務員の総人件費に関する基本方針において、その抑制を図ることとしています。
具体的には、早期退職募集制度の活用や高齢層職員の給与の見直しによって、年齢構成の高齢化や高齢化による人件費の伸びを抑えるとともに、簡素で効率的な行政組織、体制の確立に努めています。
また、国家公務員の給与については、昨年夏の人事院勧告に沿って、地域間、世代間の給与配分を見直す給与制度の総合的見直しに取り組んでいるところでありまして、地方公務員においても、この趣旨に沿った対応が行われるものと考えています。
したがって、国、地方の公務員の人件費について、あらかじめ、御指摘のような具体的な数値目標を設けたロードマップを作成することはなじまないのではないかと考えています。
○柿沢委員 安倍総理、戦後以来の大改革をやろうということですので、大変私は期待をしたいと思うんですが、そうであるとすれば、まさにこ ういうことから始めていく、そのことが財政再建、また歳出削減を実現し、また、改革をなし遂げる第一歩になるはずだ、そのことについて、残念ながら前向き な答弁をいただけなかったように思います。
アレシナの黄金律に戻しますが、一番下に書いてあるとおり、公務員人件費と社会保障費、これを削っている国が財政再建に成功したということが、アレシナ 教授の研究の結果、明らかになったことであります。国の一般歳出の五割を社会保障費は占めているわけですから、ここにメスを入れなければ歳出削減は進まな い、これは事実だと思います。
一方で、そうしたことが国民への給付やサービスの低下、いわゆる切り捨て的な状況を生まないように、負の影響というものは最小限にしていかなければいけないのも事実だと思います。
一つの事例を紹介したいと思います。
認知症の人が認知症を介護する、いわゆる認認介護、この言葉の生みの親とも言われる高瀬義昌医師が中心となった、地域包括ケアにおける医薬品適正使用に 関する研究というのがあります。東京都大田区で在宅医療の専門医をやっていて、三百三十人の患者を抱えて、その多くは認知症高齢者です。
患者さんのお宅に行ってみると、このとおりですよ、大量の薬を処方されている。こんな量の薬をもらって、認知症のある高齢者の方が果たしてこれを正しく飲めるかという話です。
しかも、こうやって安易に薬をぱっぱと大量に処方することによって、どうなるか。中には、ベンゾジアゼピン系の向精神薬とか睡眠薬等が入っていて、これ らの薬剤が患者の意識障害、特に譫妄の症状を悪化させて、むしろケアを困難にする、こういうケースが間々あるんです。特に、六剤以上の薬剤の多剤併用は危 険を生じやすいというふうにされています。
これを、在宅医療の現場で薬の量を整理するとどうなるか、お示ししたいと思います。
八十七歳の男性、要介護三、見てのとおり、今まで十七種類もの薬剤を処方されていた。ベンゾジアゼピン系の向精神薬、これはデパスとかですね、入ってい ます。しかも、見てください。朝食後はこれを飲め、毎食後はこれを飲め、これは朝夕二回だ、これは夕食前だ、そして就寝前だ、こんなのを正しく服用できる 認知症高齢者がいるんでしょうか。複雑怪奇です。
これを、高瀬先生が入って薬剤の整理を行った。どうなったか。
服薬を夕食後全て一回に調節をして、四種類にした。二種類、頓服というか、不穏時に飲む不定期のお薬が出ていますけれども、基本四種類。十七種類、これは必要ないねと削っていくことによって四種類にした。
四種類に減らしただけじゃないんですよ。減らした結果どうなったかというと、この人は、夜ぐっすり寝られるようになって、徘回がなくなって、譫妄の症状も落ちついて、自分でデイサービスへ行けるようになった。QOLが上がっているんです。
そして、これだけ薬剤が減ったわけですから、薬剤費が減ります。一日分の薬価差額七百四円。三百六十五掛ければ、年額換算で、一人ですよ、一人で二十六万円も薬剤費の削減になるわけです。
認知症対策は、国家戦略として今オレンジプラン、新たに策定をしたところですよね。二〇二五年には七百万人になると。七百万と言うけれども、実は、予備 軍と言われるMCI、軽度認知障害の人はもう七百万人いますから、千五百万人。つまり、高齢者三千万人の二人に一人は二〇二五年には認知症になっている。 あなたも認知症、私も認知症、こういう時代が来るわけです。
このときにこんなことをやっていたら、それこそ医療費のだだ漏れになってしまう。こうした点をやはり今改めていかなければならないと思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 認知症については、今後、誰もがかかわる、本人、配偶者、あるいは両親という形で、誰もがかかわりを持つ可能性のある身近な病気であろう、このように思います。
最も速いスピードで高齢化が進む我が国こそ、社会全体で世界のモデルとなる取り組みを進めていく必要があり、このため、本年一月に、新たに新オレンジプランを策定したわけでございます。
認知症による行動や心理面の症状に対する薬の使用についてでございますが、委員が示された薬というのは、これは一つの病院で処方された薬なんでしょうか。(柿沢委員「そうですね」と呼ぶ)一つの病院で。
一つの病院だということ、大変これは驚きなんですが、今後、高齢者の特性を考慮した対応が不十分であることによって副作用や日常生活への支障が生じる、 またあるいは、複数の医療機関から投薬をされることによって薬の重複や副作用が頻繁に見られる場合があるといった課題も指摘されていることは承知をしてお ります。
さらに、委員が御指摘になったように、一つの医療機関でこれだけたくさんの薬を処方するというのは、これは確かに大きな問題だろう、このように私は思います。
こうした課題に対応するために、新戦略では、まず、的確に症状や周囲の環境を把握した上、原則、薬物を使わない対応を第一選択とすること、そして、投薬 が必要な場合には高齢者の特性を十分考慮することなどを定めたガイドラインについて、研修等を通じ普及を図るとともに、医療、介護の関係者が情報を共有し て、連携して支援できるよう取り組んでいくこととしております。
繰り返しになりますが、原則、薬物を使わない対応を第一選択とすることということでございます。
今後、認知症の方ができる限り住みなれた地域で適切に医療、介護を受けられるよう取り組みを強化することとしておりまして、これによって社会保障費の伸びの抑制にもつながり得るものである、このように考えております。
○柿沢委員 公務員の人件費の削減も、またこの社会保障費の削減も、やればできる、できる余地があるわけです。そして、それは、本気で取り 組むことによって改革はなし遂げられる、まさに海士町の山内町長が教えてくれるとおりだと思います。ぜひ本気の取り組みを期待して、終わりにさせていただ きたいと思います。
ありがとうございました。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/189/0018/18903060018015a.html
参議院
第189回国会 厚生労働委員会 第10号
平成二十七年五月十二日(火曜日)
<前略>
○三原じゅん子君 自由民主党の三原でございます。
私も、ライフワークであるがん対策について質問させていただきたいと思います。
参議院本会議で、今は亡き山本孝史先生が自らがんに罹患していることを公表して、がん対策基本法の成立を訴えたのが九年前の五月二十二日でした。そして 参議院本会議でがん対策基本法が全会一致で成立したのが同年の六月十六日でした。本日は、がん対策推進基本計画の十年目である来年に向けて、いま一度がん 対策を考え直す必要があるとの思いから質問をさせていただきたいと思います。
がんは早期発見が重要ですが、検査にも二種類あって、いわゆるがん検診である一次検診とその後に行われる精密検査と分けて考える必要があります。
まず、いわゆるがん検診、一次検診についてですが、平成十九年六月のがん対策推進基本計画では、早期発見の個別指標として、がん検診の受診率を五年以内に五〇%とするとの目標がありますが、平成二十五年時点で残念ながら目標に到達しておりません。
次に、精密検査の受診率についてです。精密検査とは、一次検診の結果、何らかの異常が疑われた方が受診してがんかどうかを判断する重要な検査ですが、日 本消化器がん検診学会の
平成二十四年度の検診全国集計によりますと、胃がんの精密検査では、一次検診の結果、要精密検査と判定された人のうち、地域検診で は二〇・六%、職域検診では五六・八%の方が
精密検査を受けておられないという結果でありました。同様に大腸がん検診の精密検査でも、要精密検査の人のう ち、地域検診で二八・九%、職域検診では六八・九%が精密検査を受診しておられません。がんの疑いありということで精密検査が必要と判定されているにもか かわらず、その精密検査を受診しないというのは見過ごせない問題であると思います。特に、職域検診で精密検査の未受診が高いというのは深刻だと思っており ます。
そこで厚労省へ伺います。
職域検診を含めて、がん検診における精密検査の受診率を上げるための施策、これ一層強化する必要があると考えますが、いかがお考えでしょうか。
○政府参考人(新村和哉君) お答えいたします。
地域保健・健康増進の事業報告というのがございまして、御指摘の地域検診の方になるかと思いますが、がん検診が行われた後の精密検査受診率につきまして 平成二十四年度の数値を申し上げますと、乳がんで八四%、胃がんで七九%、肺がんで七八%、子宮頸がん六九%、大腸がん六四%となっております。
精密検査の未受診の理由につきまして、国で行った調査はございませんが、NPO法人が大腸がんの検査につきまして行った全国意識調査がございます。これによりますと、検査内容を知らない、費用が掛かる、自覚症状がないからといった理由が挙げられております。
要精密検査とされた方は一般の方よりがんの可能性が高いということでございますので、更なる受診勧奨により早期発見につなげることが重要と考えておりま す。このため、平成二十七年度予算におきまして新たに、精密検査を未受診の者に対する再勧奨など精検受診率向上に向けた事業を実施することといたしており まして、今後ともしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
○三原じゅん子君 ありがとうございます。
ここで重要なのは、がん検診の受診勧奨事業で、子宮頸がん、乳がん、大腸がんのほかにも対象を拡充していくことや、職域検診への支援として精密検査の受 診勧奨をするという、そういう施策などの強化の余地があると思うんですね。そして、今後は、がん対策推進基本計画においても、一次検診だけではなくて精密 検査の受診率にも達成目標を設定するべきではないかと考えております。
次に、がん検診に用いられる検査方法に関して質問をしたいと思います。
本年四月二十日に国立がん研究センターが胃の内視鏡検査の有効性を認めて、対策型検診、任意型検診共に胃がん検診で内視鏡検査の実施を推奨するガイドラインを発表しました。
また、日本消化器がん検診学会、国立がん研究センターの胃がん、大腸がん検診ガイドラインによりますと、胃内視鏡検査は、胃エックス線検査と比較して、 本来がんでないのにがんと誤診されてしまう偽陽性、これが発生しない。さらに重要な点として、がんに罹患しているのにがんではないと誤診されてしまう偽陰 性の発生、これが二五%から一六%へと九%も低下させることができるという報告があります。同様に大腸がんでも、大腸内視鏡検査は便潜血検査と比較して偽 陽性は発生せず、そして、がんの見落としである偽陰性について、その発生を二六・二%から五%へと二〇%以上も低下させることができると報告されておりま す。特に、がんの早期発見、早期治療の観点からいえば、がんであるのにがんではないと誤診される偽陰性、これはがんの見落としそのもので、見過ごせない重 大な問題です。
また、胃の内視鏡検査は、検診間隔も二、三年に一回でよくて、さらに、一次検診と二次検診が一度で済むということだそうで、忙しい方が検査を受けやすく なるということ、あるいは医療費負担の軽減、こういったことも期待できます。実際に、韓国などではがん検診の一次検査から内視鏡検査が推奨されるように なったと承知しております。
そこで厚労省に伺いますが、我が国においても消化器系がん検診での一次検査から内視鏡検査の普及啓発を推進していくべきではないかと考えますが、この点についていかがお考えでしょうか。
○政府参考人(新村和哉君) 厚生労働省では、市町村が実施しますがん検診につきまして、科学的根拠の有無について議論した上で、がん予防 重点健康教育及びがん検診実施のための指針を定めて実施しております。御指摘の胃がん検診につきましては、この指針におきまして、死亡率減少効果が認めら れている胃エックス線検査を位置付けております。
御指摘の胃内視鏡検査につきましては、これまで指針に位置付けられておりませんでしたけれども、御指摘ありましたように、今年三月に国立がん研究セン ターから公表されました有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン二〇一四年版におきまして、胃内視鏡検査について一定の死亡率減少効果が認められたとい うふうに報告されております。こういった新たな知見を踏まえて、現在、がん検診のあり方に関する検討会で検討を行っているところでございます。
専門家の検討を踏まえつつ、胃内視鏡検査を指針に位置付けるべきかどうか、検討していきたいと考えております。
○三原じゅん子君 最新の医学的知見や技術の発展による成果をがん対策へと反映していっていただくことをお願いを申し上げたいと思います。
内視鏡を用いた精密検査の受診率が上がらないことの背景には、検査時の不快感というような問題があると思います。民間の内視鏡メーカーが行った調査によ りますと、胃の内視鏡検査を受けた方の五七・三%がつらさというのを覚えているという結果が出ています。また、胃の内視鏡検査を受けていない方であって も、七八・二%が内視鏡検査はつらいという印象を抱いているとの結果が出ています。
私も、毎年、胃がん検診で内視鏡検査を受けておりますけれども、こういう苦痛や不快感、非常に想像できるなというところでありますけれども、そのような 苦痛や不快感への対応として、我が国でも、内視鏡検査の際に薬剤を用いた鎮静、セデーションに対する必要性の認識、これが高まってきていると思います。
この点に関連して、日本消化器内視鏡学会では、二〇一三年十二月の学会誌で内視鏡診療における鎮静に関するガイドラインを発表しています。
少々長くなりますけど関連部分を引用させていただきますと、内視鏡診療、特に内視鏡治療においては鎮静が不可欠である。最近では、内視鏡検査においても 苦痛のない内視鏡に対する患者側の要望も強くなっている。消化器内視鏡診療における鎮静の利点として、一、内視鏡実施前の患者の不安やストレス並びに内視 鏡実施に伴う苦痛や不快感を軽減できる。二、消化器内視鏡に対する被検者の受容性を高め、消化器がん等の早期発見につながるなどの点が挙げられるが、現 在、内視鏡時の鎮静に対する適用承認を取得している薬剤はなく、主にベンゾジアゼピン系の薬剤が適応外で使用されているのが現状であり、安全な鎮静を支援 する体制づくりが求められているところである。少なくとも、日本国内には鎮静のためのガイドラインとして明確に標準化されているものはなく、各施設の担当 医の裁量により様々な薬剤が用いられ、鎮静深度の判定なども施設ごとに工夫して行われているのが現状である。そのため、一、必ずしも適切でない薬剤が用い られている。二、鎮静レベルの調節が不十分であるため患者の安全性に問題が出ることがある。三、標準化された方法が取られていないため施設間の比較が難し い。四、多施設で共同臨床研究を行うことが難しい。五、いずれの鎮静薬も内視鏡診療時の保険適用がないなどの潜在する問題、課題を抱えている。このような 学会の専門家の指摘がございます。
この点に関して、このような指摘がある中、内視鏡検査における安全な鎮静のための環境や体制づくりにおける国としての指導、対策の方針についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(新村和哉君) 対策型検診として胃内視鏡検査を行う場合、先ほど御紹介いたしました国立がん研究センターのガイドラインにお きましては、重篤な偶発症に迅速かつ適切に対応できる体制が整備できないうちは実施すべきでないという、こういった見解も示されておりまして、厚生労働省 において開催しているがん検診のあり方に関する検討会におきましても同様の議論が行われているところでございます。
内視鏡検査の検討に当たりましては、この安全確保ということが非常に重要であると考えておりまして、具体的な安全確保の在り方につきましては、御指摘の鎮静の体制も含めましてよく検討していきたいと考えております。
○三原じゅん子君 専門家からの指摘を考慮しながら、検診受診率向上のために内視鏡診療時の安全な鎮静の確保に向けた体制づくり、これが重要だということを重ねて指摘をさせていただきたいと思います。
もう一点、がん検診の内視鏡検査における鎮静に関連してですが、がんの早期発見に向けて、検査精度の高い内視鏡による検査の受診率を上げるには、適切な 鎮静を通じて受診者の苦痛や不快感を抑えることが有効です。しかし、御存じのように、麻酔科医の数の不足、地域的偏在があり、通常の手術でさえも麻酔科医 の不在によって手術が十分に実施できない状況がある中で、消化器内視鏡検査などの診療時に麻酔科医が安全に鎮静を行うには現状では手が回らないのではない かなという声が聞かれております。
この課題に対しましては麻酔医育成の強化というのが対策になるとは思いますけれども、これは、人材育成というのは長期の時間が掛かりますので、それと並 行して、医師と医療機器とで機能分担を適切に行いながら安全に内視鏡検査を実施できるような技術革新、これが進展していることを考慮しますと、当面の対応 として、我が国においても、このような医療機器の開発、導入、普及のための施策を推進していくことが必要な段階に来ているのではないかなと考えておりま す。
この点につきましても、国としての方針、今後の施策の方向性について、しっかりとこれから御検討をいただきたいと、これはお願いとして御要望しておきます。
次に、遺伝情報の利活用と、関連する法制度について質問をさせていただきたいと思います。
私たちは、両親から受け継いだ、生まれたときからの生涯変わることのない遺伝情報というのを持っております。遺伝情報には、その人の外見に関する情報か ら将来発症する可能性のある病気のリスク、こういったことまで様々な情報が含まれております。その遺伝情報は、私たちの生活における様々な分野で活用され ております。例えば、犯罪捜査や司法領域ではDNA検査や親子鑑定で活用されていますし、医療分野では感染症やがんなどの診断、あるいは抗がん剤などを選 ぶときの薬剤応答や出生前検査などにも活用されております。
最近では、医療領域以外で行われているいわゆる遺伝子検査ビジネス、これが過熱しております。大手インターネット検索サイトや大手スマホアプリ開発会社 など、三万円弱でサービスを提供して、しかも、インターネットで気軽に申し込めるということがマスメディアでも話題になっております。遺伝子検査ビジネス では、個人の能力、性格検査、病気のなりやすさに関するリスク検査、体質判定を目的とした検査や親子鑑定などが行われております。その精度は現代の星占い レベルと言われるものまであるようであります。ただ、検査精度については、今後、研究が進むことで精度が高まり、技術革新も進むということで、更に安い価 格で提供されるのではと言われているようであります。
さて、この遺伝子検査の検査方法ですが、医療領域、つまり医療機関で行われている遺伝子検査は、一般的に血液やがん細胞を用いて検査を行って、Aという 病気なのか違うのかといったその診断を行うことを目的として実施をされています。一方、医療領域以外で行われている遺伝子検査ビジネスでは、遺伝情報は体 のどの細胞を取っても基本的に同じ遺伝子で構成されているということで、医療行為である採血ではなくて、髪の毛や爪、あるいは唾液とか頬の内側の粘膜と いった、誰もが簡単に取れるものを検体として検査機関へ送付しています。
この遺伝子検査ビジネスで有名な企業の一つに米国の23アンド・ミーというのがあります。この企業の活動を説明したいと思います。
23アンド・ミーは、グーグルが出資する遺伝子検査ビジネス事業者です。この企業では、利用者はインターネットを通じて約一万円で遺伝子検査キットを購 入して、唾液を自分で採取して返送するだけで二百五十四種類の疾病リスクなどを判定し、検査結果はオンラインで簡単に確認できるというものです。最近で は、カナダやイギリスでも事業展開を開始して、全ての疾患リスク検査を実施しています。
ただ、この企業ですが、二〇一三年の十一月に米国のFDAから、診断精度に大きな問題があるとして、一度は遺伝子検査サービスの中止命令を下されて、新 規の疾患リスク検査を停止しています。しかし、今年の二月、FDAは、希少遺伝疾患、いわゆるブルームシンドロームの検査キットについては販売承認してい るんですね。
このように、昨今、遺伝子検査ビジネスの利用者は世界中に広がっているようであります。これは米国の一企業が世界中から国境を越えて多くの検体を米国に集めることができるということを意味しているということを是非皆様には御理解をいただきたいと思います。
民間企業が実施している遺伝子検査ビジネスについてですが、実施機関に対して事前承認や認可制にすべきといった意見があるようですが、つまり、民間企業 が実施している検査結果に対しても一定の精度を求めようという考えからのようでありますが、この点については、厚労省は遺伝子検査ビジネスに関する規制の 在り方についてどのようにお考えなのか、お聞かせください。
○政府参考人(鈴木康裕君) お答え申し上げます。
民間企業が実施しております遺伝子検査でございますけれども、医療目的の遺伝子検査を医療機関以外で行う場合、この場合は臨床検査技師等に関する法律に 基づきまして、必要な検査機器、人員の確保、検査の精度管理体制について一定の基準を満たすものとしてあらかじめ登録された衛生検査所において行われるこ とになっております。また、こうした衛生検査所におきましては、学会や業界団体が作成したガイドラインを踏まえて、検査の質の向上に努めているというふう に認識をしております。
さらに、医療分野以外を含めました全般の遺伝子検査につきましてですけれども、これは平成二十六年度の厚生労働科学特別研究事業によりまして、国内外の 遺伝学的検査の実施の状況、それから海外における法規制等の状況について調査を行い、課題の抽出及び整理を行っているところでございます。
中間的な報告におきましては、御指摘ありました遺伝学的検査の質の保証に関する点、これも課題の一つとして指摘をされているところでございます。今月末 に提出される予定の最終的な調査結果を踏まえまして、今後、検査の質の保証に関する点も含めて必要な対応について検討してまいりたいというふうに思ってお ります。
○三原じゅん子君 ありがとうございます。
遺伝学的検査の質の保証、これについて、利用者保護の観点から一定程度の品質を確保しなければならないという考えはそのとおりだと思います。
ただ、事前承認や認可制となった場合には注意をしていただきたいことがあります。規制が日本企業に対して効果を発揮する、しかしながら、23アンド・ ミーのようなグローバル企業、つまり消費者が直接検体を海外へ送付して検査をするというような消費者直販型、こういう形式を取っている海外企業に対しては 適用されない規制では意味がありません。既に日本人にも、自分の検体を日本から海外へ送付して検査をしている人が大勢いらっしゃいます。日本企業を規制し て海外企業は野放しということでは、単に日本企業のビジネス機会を損なうだけになりますので、この点は十分に配慮する必要があると思っております。
さて、23アンド・ミーの話に戻りますけれども、この企業は昨年度、NIHから約一億五千万円の研究費を獲得しています。NIHはなぜ一民間企業に研究 助成を行っているのか。23アンド・ミーのホームページによりますと、彼らは既に八十万人以上の顧客の遺伝型を蓄積していて、そのうち八〇%は研究の参加 にも同意している。つまり、23アンド・ミーは、彼らの研究に自分の遺伝情報を活用してもいいと同意を得ている六十万人のコホート集団を既に持っている。 NIHは彼らと組むことで、健常者だけではなくて、患者参加型の研究を容易に推し進めたいという意図があるからなのであります。ちなみに、彼らが所有して いる六十万人コホートの内訳ですが、これ、がん患者が約三万三千人、健常者が約四十一万人、アルツハイマー患者さん約十二万人、パーキンソン病患者が約一 万人、自己免疫疾患約一万人となっています。
それに対する我が国の遺伝子検査ビジネスなどのような状況についてですが、通産省が三年前に調査した、平成二十四年度中小企業支援調査、個人遺伝情報保 護の環境整備に関する調査報告書によりますと、民間企業や医療機関合わせて約七百四十事業者が遺伝子検査ビジネスを実施しており、もはやこの遺伝子検査ビ ジネスは、我が国においてもこれからのことではなくて、既に国民の皆様には身近なビジネスであると思っていいのではないかと思っております。
さて、米国のオバマ大統領は、今年の一月三十一日に、がんなどの二つの疾患について遺伝的要素の発見と創薬を目指した施策に約二百三十六億円の投資を発 表しました。この発表を受けて、NIHは米国人のボランティア百万人の全遺伝情報の収集に約百四十三億円、NCIはがんの遺伝子研究に約七十七億円、 FDAは個別化医療、創薬に関する規制制度の構築に約十一億円、関連情報を収集、統合する組織に約五・五億円の予算措置を決めました。
オバマ大統領は、アメリカの国民の死因の二三%を占めるがんにフォーカスして、国民をがんから守るための具体的な対策として、遺伝情報の活用によるがん研究、創薬開発、データバンクの構築や法制度の整備などに力を入れることを決めたということであります。
国家的なプロジェクトとして遺伝情報を活用している国には、皆様御存じのとおり、デンマーク、これも有名です。ここでは国民のほとんどの遺伝情報が登録されているバイオバンクがあり、新たな治療方法や創薬の研究開発を行っており、イノベーションを起こしております。
これから我が国は、こうしたアメリカやデンマークのような国家プロジェクトとして遺伝情報を活用している国々とイノベーションで競争していかないといけないんです。
昨年、我が国にはAMEDが発足して研究から産業化まで一貫して管理できるようになって、従来よりも効率的な資源配分が可能になったと理解はしておりま すけれども、我が国の二人に一人はがんになって、三人に一人はがんで亡くなるわけです。我が国の国民の死因の三〇%以上を占めるがん対策には、アメリカと 同様に遺伝情報に基づく研究や創薬、データ整備、関連する法制度の整備、こういう資源を集中させる必要があるのではないかと思っております。
ここで質問です。
我が国では、遺伝情報を活用してがんに関連する研究やデータ整備、また法制度の整備がどのように進められているのか、政府の取組の現状をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(新村和哉君) お答えいたします。
遺伝子情報の活用を含むがん研究につきましては、がんの病態解明や新たな治療法の開発に資するなど、がん対策を進める上で非常に重要と認識しております。
平成二十六年三月に文部科学大臣、経済産業大臣とともに厚生労働大臣が関係三大臣の合意を結んでおりまして、がん研究十か年戦略を策定しております。これに基づいて、総合的かつ計画的ながん研究を推進しているところでございます。
この戦略では、遺伝情報等を活用した個人の発がんリスクの同定と発がんリスクのグループ化、個別化に向けた研究や、個人の発がんリスクに応じてリスクを 低減させる手法の開発のための研究等を推進することとしております。御指摘のありました日本医療研究開発機構、AMEDも活用しつつ、公募と厳正な評価に 基づいて研究課題を採択しているところでございます。
また、平成二十八年一月からは全国がん登録の施行が予定されておりますが、遺伝子情報を直接これは登録するものではございませんけれども、がん登録情報 と遺伝子情報を組み合わせた研究が可能となるよう、情報の利活用の在り方については検討を進めているところでございます。
厚生労働省といたしましては、引き続きこれらを通じて、遺伝子情報も活用したがん対策の取組を推進していきたいと考えています。
○三原じゅん子君 アメリカやデンマークだけではなく、中国やイギリスでもこういったことを行っておるわけで、繰り返しますけれども、我が 国は、このような、国家を挙げて遺伝情報の収集やデータベースの構築、研究開発へ莫大な予算を投資するということ、そういった国を相手にイノベーションで 戦っていかなければならないんです。
今後、どの疾病にフォーカスするべきか、国が対処することで一定の効果が予想できる、政治がある程度主導してこういうことを決めてもよいのではないかと私は思っておりますので、是非政府のリーダーシップ、発揮していただきたいと思います。
最後に、法制度についてお伺いをしたいと思います。
医療の発展のためには、遺伝情報を収集して研究を進めることが不可欠です。それによって、将来、より優れた個別化医療、オーダーメード医療の実現が可能 となるからでありますが、しかし、医学における様々な発見というのは、時に新たな生命倫理の問題を抱えていると思います。
諸外国では、個別化の裏には差別という問題が潜んでいるという考えから、遺伝情報を基にして差別を行ってはいけないという法制度の整備が行われておりま す。例えば、アメリカでも雇用機会均等法に関する法律として複数の連邦法がありますけれども、その上で二〇〇八年に遺伝情報差別禁止法が連邦法として成立 しました。こうしたことで、具体的には採用時の差別、遺伝情報の要求を禁止しており、雇用、解雇、仕事の割当て、昇進や降格の決定などに影響させてはなら ない、こういうことが決められております。そのほかにも、イギリス、フランス、ドイツ、韓国も同様にこういう法整備が整備されておりますけれども、我が国 ではそれらがありません。これは個人情報保護法について規定されたガイドラインがあるということのようですけれども、ガイドラインでは強制力がないので、 遺伝情報に関連する差別については、私、限界があると思います。
今回の問題は、遺伝情報という医学の発展に伴って新たな技術に対して倫理的に制御しなくてはならない課題が出てきたということでありますので、是非、この法整備について政府の所見をお伺いしたいと思います。
○大臣政務官(橋本岳君) お答えをいたします。
先ほど技術総括審議官の方で、昨年度、厚生労働科学特別研究事業というのをやっているというお話をしました。その中で、御指摘の遺伝子情報に基づく差別についても重要な課題の一つとして指摘されているところでございます。
採用等についてということでお話しでございましたけれども、一般論ではありますけれども、現在でも、採用選考に当たっては、応募者の適性、能力に関係の ない事項については把握しないよう事業主に対して周知啓発をしているとか、解雇に関して言えば、労働契約法におきまして、客観的な合理的な理由を欠き、社 会通念上相当であると認められないものについては無効とする旨の一般的な規定が設けられているところでございまして、お尋ねの遺伝子情報に基づく差別を防 ぐ一つの枠組みにはなるのではないかと考えているところでございます。
ただ、私、たまたまですが、昨日、新宿区戸山の国立国際医療研究センターに視察をしてまいりまして、ゲノム医療が研究を進めているという話も聞いて、心 強く思って期待をしているところでございます。ただ、やはりそうしたものが更に進むことによって様々な問題も御指摘のように起こり得るだろうということは 認識をしたところでございまして、現在の取組等、あるいは先ほど申し上げた研究班の調査結果などを踏まえまして、遺伝子情報がその本人の、何というんです か、意に反するような形で差別的な取扱いにつながることなく適切に利活用されるように、今後、必要な取組について検討してまいるということは必要なことだ ろうと、このように考えているところでございます。
○委員長(丸川珠代君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
○三原じゅん子君 はい、終わります。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/189/0062/18905120062010a.html
初版:2015年10月5日
第189回国会 厚生労働委員会 第10号
平成二十七年五月十二日(火曜日)
<前略>
○三原じゅん子君 自由民主党の三原でございます。
私も、ライフワークであるがん対策について質問させていただきたいと思います。
参議院本会議で、今は亡き山本孝史先生が自らがんに罹患していることを公表して、がん対策基本法の成立を訴えたのが九年前の五月二十二日でした。そして 参議院本会議でがん対策基本法が全会一致で成立したのが同年の六月十六日でした。本日は、がん対策推進基本計画の十年目である来年に向けて、いま一度がん 対策を考え直す必要があるとの思いから質問をさせていただきたいと思います。
がんは早期発見が重要ですが、検査にも二種類あって、いわゆるがん検診である一次検診とその後に行われる精密検査と分けて考える必要があります。
まず、いわゆるがん検診、一次検診についてですが、平成十九年六月のがん対策推進基本計画では、早期発見の個別指標として、がん検診の受診率を五年以内に五〇%とするとの目標がありますが、平成二十五年時点で残念ながら目標に到達しておりません。
次に、精密検査の受診率についてです。精密検査とは、一次検診の結果、何らかの異常が疑われた方が受診してがんかどうかを判断する重要な検査ですが、日 本消化器がん検診学会の
平成二十四年度の検診全国集計によりますと、胃がんの精密検査では、一次検診の結果、要精密検査と判定された人のうち、地域検診で は二〇・六%、職域検診では五六・八%の方が
精密検査を受けておられないという結果でありました。同様に大腸がん検診の精密検査でも、要精密検査の人のう ち、地域検診で二八・九%、職域検診では六八・九%が精密検査を受診しておられません。がんの疑いありということで精密検査が必要と判定されているにもか かわらず、その精密検査を受診しないというのは見過ごせない問題であると思います。特に、職域検診で精密検査の未受診が高いというのは深刻だと思っており ます。
そこで厚労省へ伺います。
職域検診を含めて、がん検診における精密検査の受診率を上げるための施策、これ一層強化する必要があると考えますが、いかがお考えでしょうか。
○政府参考人(新村和哉君) お答えいたします。
地域保健・健康増進の事業報告というのがございまして、御指摘の地域検診の方になるかと思いますが、がん検診が行われた後の精密検査受診率につきまして 平成二十四年度の数値を申し上げますと、乳がんで八四%、胃がんで七九%、肺がんで七八%、子宮頸がん六九%、大腸がん六四%となっております。
精密検査の未受診の理由につきまして、国で行った調査はございませんが、NPO法人が大腸がんの検査につきまして行った全国意識調査がございます。これによりますと、検査内容を知らない、費用が掛かる、自覚症状がないからといった理由が挙げられております。
要精密検査とされた方は一般の方よりがんの可能性が高いということでございますので、更なる受診勧奨により早期発見につなげることが重要と考えておりま す。このため、平成二十七年度予算におきまして新たに、精密検査を未受診の者に対する再勧奨など精検受診率向上に向けた事業を実施することといたしており まして、今後ともしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
○三原じゅん子君 ありがとうございます。
ここで重要なのは、がん検診の受診勧奨事業で、子宮頸がん、乳がん、大腸がんのほかにも対象を拡充していくことや、職域検診への支援として精密検査の受 診勧奨をするという、そういう施策などの強化の余地があると思うんですね。そして、今後は、がん対策推進基本計画においても、一次検診だけではなくて精密 検査の受診率にも達成目標を設定するべきではないかと考えております。
次に、がん検診に用いられる検査方法に関して質問をしたいと思います。
本年四月二十日に国立がん研究センターが胃の内視鏡検査の有効性を認めて、対策型検診、任意型検診共に胃がん検診で内視鏡検査の実施を推奨するガイドラインを発表しました。
また、日本消化器がん検診学会、国立がん研究センターの胃がん、大腸がん検診ガイドラインによりますと、胃内視鏡検査は、胃エックス線検査と比較して、 本来がんでないのにがんと誤診されてしまう偽陽性、これが発生しない。さらに重要な点として、がんに罹患しているのにがんではないと誤診されてしまう偽陰 性の発生、これが二五%から一六%へと九%も低下させることができるという報告があります。同様に大腸がんでも、大腸内視鏡検査は便潜血検査と比較して偽 陽性は発生せず、そして、がんの見落としである偽陰性について、その発生を二六・二%から五%へと二〇%以上も低下させることができると報告されておりま す。特に、がんの早期発見、早期治療の観点からいえば、がんであるのにがんではないと誤診される偽陰性、これはがんの見落としそのもので、見過ごせない重 大な問題です。
また、胃の内視鏡検査は、検診間隔も二、三年に一回でよくて、さらに、一次検診と二次検診が一度で済むということだそうで、忙しい方が検査を受けやすく なるということ、あるいは医療費負担の軽減、こういったことも期待できます。実際に、韓国などではがん検診の一次検査から内視鏡検査が推奨されるように なったと承知しております。
そこで厚労省に伺いますが、我が国においても消化器系がん検診での一次検査から内視鏡検査の普及啓発を推進していくべきではないかと考えますが、この点についていかがお考えでしょうか。
○政府参考人(新村和哉君) 厚生労働省では、市町村が実施しますがん検診につきまして、科学的根拠の有無について議論した上で、がん予防 重点健康教育及びがん検診実施のための指針を定めて実施しております。御指摘の胃がん検診につきましては、この指針におきまして、死亡率減少効果が認めら れている胃エックス線検査を位置付けております。
御指摘の胃内視鏡検査につきましては、これまで指針に位置付けられておりませんでしたけれども、御指摘ありましたように、今年三月に国立がん研究セン ターから公表されました有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン二〇一四年版におきまして、胃内視鏡検査について一定の死亡率減少効果が認められたとい うふうに報告されております。こういった新たな知見を踏まえて、現在、がん検診のあり方に関する検討会で検討を行っているところでございます。
専門家の検討を踏まえつつ、胃内視鏡検査を指針に位置付けるべきかどうか、検討していきたいと考えております。
○三原じゅん子君 最新の医学的知見や技術の発展による成果をがん対策へと反映していっていただくことをお願いを申し上げたいと思います。
内視鏡を用いた精密検査の受診率が上がらないことの背景には、検査時の不快感というような問題があると思います。民間の内視鏡メーカーが行った調査によ りますと、胃の内視鏡検査を受けた方の五七・三%がつらさというのを覚えているという結果が出ています。また、胃の内視鏡検査を受けていない方であって も、七八・二%が内視鏡検査はつらいという印象を抱いているとの結果が出ています。
私も、毎年、胃がん検診で内視鏡検査を受けておりますけれども、こういう苦痛や不快感、非常に想像できるなというところでありますけれども、そのような 苦痛や不快感への対応として、我が国でも、内視鏡検査の際に薬剤を用いた鎮静、セデーションに対する必要性の認識、これが高まってきていると思います。
この点に関連して、日本消化器内視鏡学会では、二〇一三年十二月の学会誌で内視鏡診療における鎮静に関するガイドラインを発表しています。
少々長くなりますけど関連部分を引用させていただきますと、内視鏡診療、特に内視鏡治療においては鎮静が不可欠である。最近では、内視鏡検査においても 苦痛のない内視鏡に対する患者側の要望も強くなっている。消化器内視鏡診療における鎮静の利点として、一、内視鏡実施前の患者の不安やストレス並びに内視 鏡実施に伴う苦痛や不快感を軽減できる。二、消化器内視鏡に対する被検者の受容性を高め、消化器がん等の早期発見につながるなどの点が挙げられるが、現 在、内視鏡時の鎮静に対する適用承認を取得している薬剤はなく、主にベンゾジアゼピン系の薬剤が適応外で使用されているのが現状であり、安全な鎮静を支援 する体制づくりが求められているところである。少なくとも、日本国内には鎮静のためのガイドラインとして明確に標準化されているものはなく、各施設の担当 医の裁量により様々な薬剤が用いられ、鎮静深度の判定なども施設ごとに工夫して行われているのが現状である。そのため、一、必ずしも適切でない薬剤が用い られている。二、鎮静レベルの調節が不十分であるため患者の安全性に問題が出ることがある。三、標準化された方法が取られていないため施設間の比較が難し い。四、多施設で共同臨床研究を行うことが難しい。五、いずれの鎮静薬も内視鏡診療時の保険適用がないなどの潜在する問題、課題を抱えている。このような 学会の専門家の指摘がございます。
この点に関して、このような指摘がある中、内視鏡検査における安全な鎮静のための環境や体制づくりにおける国としての指導、対策の方針についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(新村和哉君) 対策型検診として胃内視鏡検査を行う場合、先ほど御紹介いたしました国立がん研究センターのガイドラインにお きましては、重篤な偶発症に迅速かつ適切に対応できる体制が整備できないうちは実施すべきでないという、こういった見解も示されておりまして、厚生労働省 において開催しているがん検診のあり方に関する検討会におきましても同様の議論が行われているところでございます。
内視鏡検査の検討に当たりましては、この安全確保ということが非常に重要であると考えておりまして、具体的な安全確保の在り方につきましては、御指摘の鎮静の体制も含めましてよく検討していきたいと考えております。
○三原じゅん子君 専門家からの指摘を考慮しながら、検診受診率向上のために内視鏡診療時の安全な鎮静の確保に向けた体制づくり、これが重要だということを重ねて指摘をさせていただきたいと思います。
もう一点、がん検診の内視鏡検査における鎮静に関連してですが、がんの早期発見に向けて、検査精度の高い内視鏡による検査の受診率を上げるには、適切な 鎮静を通じて受診者の苦痛や不快感を抑えることが有効です。しかし、御存じのように、麻酔科医の数の不足、地域的偏在があり、通常の手術でさえも麻酔科医 の不在によって手術が十分に実施できない状況がある中で、消化器内視鏡検査などの診療時に麻酔科医が安全に鎮静を行うには現状では手が回らないのではない かなという声が聞かれております。
この課題に対しましては麻酔医育成の強化というのが対策になるとは思いますけれども、これは、人材育成というのは長期の時間が掛かりますので、それと並 行して、医師と医療機器とで機能分担を適切に行いながら安全に内視鏡検査を実施できるような技術革新、これが進展していることを考慮しますと、当面の対応 として、我が国においても、このような医療機器の開発、導入、普及のための施策を推進していくことが必要な段階に来ているのではないかなと考えておりま す。
この点につきましても、国としての方針、今後の施策の方向性について、しっかりとこれから御検討をいただきたいと、これはお願いとして御要望しておきます。
次に、遺伝情報の利活用と、関連する法制度について質問をさせていただきたいと思います。
私たちは、両親から受け継いだ、生まれたときからの生涯変わることのない遺伝情報というのを持っております。遺伝情報には、その人の外見に関する情報か ら将来発症する可能性のある病気のリスク、こういったことまで様々な情報が含まれております。その遺伝情報は、私たちの生活における様々な分野で活用され ております。例えば、犯罪捜査や司法領域ではDNA検査や親子鑑定で活用されていますし、医療分野では感染症やがんなどの診断、あるいは抗がん剤などを選 ぶときの薬剤応答や出生前検査などにも活用されております。
最近では、医療領域以外で行われているいわゆる遺伝子検査ビジネス、これが過熱しております。大手インターネット検索サイトや大手スマホアプリ開発会社 など、三万円弱でサービスを提供して、しかも、インターネットで気軽に申し込めるということがマスメディアでも話題になっております。遺伝子検査ビジネス では、個人の能力、性格検査、病気のなりやすさに関するリスク検査、体質判定を目的とした検査や親子鑑定などが行われております。その精度は現代の星占い レベルと言われるものまであるようであります。ただ、検査精度については、今後、研究が進むことで精度が高まり、技術革新も進むということで、更に安い価 格で提供されるのではと言われているようであります。
さて、この遺伝子検査の検査方法ですが、医療領域、つまり医療機関で行われている遺伝子検査は、一般的に血液やがん細胞を用いて検査を行って、Aという 病気なのか違うのかといったその診断を行うことを目的として実施をされています。一方、医療領域以外で行われている遺伝子検査ビジネスでは、遺伝情報は体 のどの細胞を取っても基本的に同じ遺伝子で構成されているということで、医療行為である採血ではなくて、髪の毛や爪、あるいは唾液とか頬の内側の粘膜と いった、誰もが簡単に取れるものを検体として検査機関へ送付しています。
この遺伝子検査ビジネスで有名な企業の一つに米国の23アンド・ミーというのがあります。この企業の活動を説明したいと思います。
23アンド・ミーは、グーグルが出資する遺伝子検査ビジネス事業者です。この企業では、利用者はインターネットを通じて約一万円で遺伝子検査キットを購 入して、唾液を自分で採取して返送するだけで二百五十四種類の疾病リスクなどを判定し、検査結果はオンラインで簡単に確認できるというものです。最近で は、カナダやイギリスでも事業展開を開始して、全ての疾患リスク検査を実施しています。
ただ、この企業ですが、二〇一三年の十一月に米国のFDAから、診断精度に大きな問題があるとして、一度は遺伝子検査サービスの中止命令を下されて、新 規の疾患リスク検査を停止しています。しかし、今年の二月、FDAは、希少遺伝疾患、いわゆるブルームシンドロームの検査キットについては販売承認してい るんですね。
このように、昨今、遺伝子検査ビジネスの利用者は世界中に広がっているようであります。これは米国の一企業が世界中から国境を越えて多くの検体を米国に集めることができるということを意味しているということを是非皆様には御理解をいただきたいと思います。
民間企業が実施している遺伝子検査ビジネスについてですが、実施機関に対して事前承認や認可制にすべきといった意見があるようですが、つまり、民間企業 が実施している検査結果に対しても一定の精度を求めようという考えからのようでありますが、この点については、厚労省は遺伝子検査ビジネスに関する規制の 在り方についてどのようにお考えなのか、お聞かせください。
○政府参考人(鈴木康裕君) お答え申し上げます。
民間企業が実施しております遺伝子検査でございますけれども、医療目的の遺伝子検査を医療機関以外で行う場合、この場合は臨床検査技師等に関する法律に 基づきまして、必要な検査機器、人員の確保、検査の精度管理体制について一定の基準を満たすものとしてあらかじめ登録された衛生検査所において行われるこ とになっております。また、こうした衛生検査所におきましては、学会や業界団体が作成したガイドラインを踏まえて、検査の質の向上に努めているというふう に認識をしております。
さらに、医療分野以外を含めました全般の遺伝子検査につきましてですけれども、これは平成二十六年度の厚生労働科学特別研究事業によりまして、国内外の 遺伝学的検査の実施の状況、それから海外における法規制等の状況について調査を行い、課題の抽出及び整理を行っているところでございます。
中間的な報告におきましては、御指摘ありました遺伝学的検査の質の保証に関する点、これも課題の一つとして指摘をされているところでございます。今月末 に提出される予定の最終的な調査結果を踏まえまして、今後、検査の質の保証に関する点も含めて必要な対応について検討してまいりたいというふうに思ってお ります。
○三原じゅん子君 ありがとうございます。
遺伝学的検査の質の保証、これについて、利用者保護の観点から一定程度の品質を確保しなければならないという考えはそのとおりだと思います。
ただ、事前承認や認可制となった場合には注意をしていただきたいことがあります。規制が日本企業に対して効果を発揮する、しかしながら、23アンド・ ミーのようなグローバル企業、つまり消費者が直接検体を海外へ送付して検査をするというような消費者直販型、こういう形式を取っている海外企業に対しては 適用されない規制では意味がありません。既に日本人にも、自分の検体を日本から海外へ送付して検査をしている人が大勢いらっしゃいます。日本企業を規制し て海外企業は野放しということでは、単に日本企業のビジネス機会を損なうだけになりますので、この点は十分に配慮する必要があると思っております。
さて、23アンド・ミーの話に戻りますけれども、この企業は昨年度、NIHから約一億五千万円の研究費を獲得しています。NIHはなぜ一民間企業に研究 助成を行っているのか。23アンド・ミーのホームページによりますと、彼らは既に八十万人以上の顧客の遺伝型を蓄積していて、そのうち八〇%は研究の参加 にも同意している。つまり、23アンド・ミーは、彼らの研究に自分の遺伝情報を活用してもいいと同意を得ている六十万人のコホート集団を既に持っている。 NIHは彼らと組むことで、健常者だけではなくて、患者参加型の研究を容易に推し進めたいという意図があるからなのであります。ちなみに、彼らが所有して いる六十万人コホートの内訳ですが、これ、がん患者が約三万三千人、健常者が約四十一万人、アルツハイマー患者さん約十二万人、パーキンソン病患者が約一 万人、自己免疫疾患約一万人となっています。
それに対する我が国の遺伝子検査ビジネスなどのような状況についてですが、通産省が三年前に調査した、平成二十四年度中小企業支援調査、個人遺伝情報保 護の環境整備に関する調査報告書によりますと、民間企業や医療機関合わせて約七百四十事業者が遺伝子検査ビジネスを実施しており、もはやこの遺伝子検査ビ ジネスは、我が国においてもこれからのことではなくて、既に国民の皆様には身近なビジネスであると思っていいのではないかと思っております。
さて、米国のオバマ大統領は、今年の一月三十一日に、がんなどの二つの疾患について遺伝的要素の発見と創薬を目指した施策に約二百三十六億円の投資を発 表しました。この発表を受けて、NIHは米国人のボランティア百万人の全遺伝情報の収集に約百四十三億円、NCIはがんの遺伝子研究に約七十七億円、 FDAは個別化医療、創薬に関する規制制度の構築に約十一億円、関連情報を収集、統合する組織に約五・五億円の予算措置を決めました。
オバマ大統領は、アメリカの国民の死因の二三%を占めるがんにフォーカスして、国民をがんから守るための具体的な対策として、遺伝情報の活用によるがん研究、創薬開発、データバンクの構築や法制度の整備などに力を入れることを決めたということであります。
国家的なプロジェクトとして遺伝情報を活用している国には、皆様御存じのとおり、デンマーク、これも有名です。ここでは国民のほとんどの遺伝情報が登録されているバイオバンクがあり、新たな治療方法や創薬の研究開発を行っており、イノベーションを起こしております。
これから我が国は、こうしたアメリカやデンマークのような国家プロジェクトとして遺伝情報を活用している国々とイノベーションで競争していかないといけないんです。
昨年、我が国にはAMEDが発足して研究から産業化まで一貫して管理できるようになって、従来よりも効率的な資源配分が可能になったと理解はしておりま すけれども、我が国の二人に一人はがんになって、三人に一人はがんで亡くなるわけです。我が国の国民の死因の三〇%以上を占めるがん対策には、アメリカと 同様に遺伝情報に基づく研究や創薬、データ整備、関連する法制度の整備、こういう資源を集中させる必要があるのではないかと思っております。
ここで質問です。
我が国では、遺伝情報を活用してがんに関連する研究やデータ整備、また法制度の整備がどのように進められているのか、政府の取組の現状をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(新村和哉君) お答えいたします。
遺伝子情報の活用を含むがん研究につきましては、がんの病態解明や新たな治療法の開発に資するなど、がん対策を進める上で非常に重要と認識しております。
平成二十六年三月に文部科学大臣、経済産業大臣とともに厚生労働大臣が関係三大臣の合意を結んでおりまして、がん研究十か年戦略を策定しております。これに基づいて、総合的かつ計画的ながん研究を推進しているところでございます。
この戦略では、遺伝情報等を活用した個人の発がんリスクの同定と発がんリスクのグループ化、個別化に向けた研究や、個人の発がんリスクに応じてリスクを 低減させる手法の開発のための研究等を推進することとしております。御指摘のありました日本医療研究開発機構、AMEDも活用しつつ、公募と厳正な評価に 基づいて研究課題を採択しているところでございます。
また、平成二十八年一月からは全国がん登録の施行が予定されておりますが、遺伝子情報を直接これは登録するものではございませんけれども、がん登録情報 と遺伝子情報を組み合わせた研究が可能となるよう、情報の利活用の在り方については検討を進めているところでございます。
厚生労働省といたしましては、引き続きこれらを通じて、遺伝子情報も活用したがん対策の取組を推進していきたいと考えています。
○三原じゅん子君 アメリカやデンマークだけではなく、中国やイギリスでもこういったことを行っておるわけで、繰り返しますけれども、我が 国は、このような、国家を挙げて遺伝情報の収集やデータベースの構築、研究開発へ莫大な予算を投資するということ、そういった国を相手にイノベーションで 戦っていかなければならないんです。
今後、どの疾病にフォーカスするべきか、国が対処することで一定の効果が予想できる、政治がある程度主導してこういうことを決めてもよいのではないかと私は思っておりますので、是非政府のリーダーシップ、発揮していただきたいと思います。
最後に、法制度についてお伺いをしたいと思います。
医療の発展のためには、遺伝情報を収集して研究を進めることが不可欠です。それによって、将来、より優れた個別化医療、オーダーメード医療の実現が可能 となるからでありますが、しかし、医学における様々な発見というのは、時に新たな生命倫理の問題を抱えていると思います。
諸外国では、個別化の裏には差別という問題が潜んでいるという考えから、遺伝情報を基にして差別を行ってはいけないという法制度の整備が行われておりま す。例えば、アメリカでも雇用機会均等法に関する法律として複数の連邦法がありますけれども、その上で二〇〇八年に遺伝情報差別禁止法が連邦法として成立 しました。こうしたことで、具体的には採用時の差別、遺伝情報の要求を禁止しており、雇用、解雇、仕事の割当て、昇進や降格の決定などに影響させてはなら ない、こういうことが決められております。そのほかにも、イギリス、フランス、ドイツ、韓国も同様にこういう法整備が整備されておりますけれども、我が国 ではそれらがありません。これは個人情報保護法について規定されたガイドラインがあるということのようですけれども、ガイドラインでは強制力がないので、 遺伝情報に関連する差別については、私、限界があると思います。
今回の問題は、遺伝情報という医学の発展に伴って新たな技術に対して倫理的に制御しなくてはならない課題が出てきたということでありますので、是非、この法整備について政府の所見をお伺いしたいと思います。
○大臣政務官(橋本岳君) お答えをいたします。
先ほど技術総括審議官の方で、昨年度、厚生労働科学特別研究事業というのをやっているというお話をしました。その中で、御指摘の遺伝子情報に基づく差別についても重要な課題の一つとして指摘されているところでございます。
採用等についてということでお話しでございましたけれども、一般論ではありますけれども、現在でも、採用選考に当たっては、応募者の適性、能力に関係の ない事項については把握しないよう事業主に対して周知啓発をしているとか、解雇に関して言えば、労働契約法におきまして、客観的な合理的な理由を欠き、社 会通念上相当であると認められないものについては無効とする旨の一般的な規定が設けられているところでございまして、お尋ねの遺伝子情報に基づく差別を防 ぐ一つの枠組みにはなるのではないかと考えているところでございます。
ただ、私、たまたまですが、昨日、新宿区戸山の国立国際医療研究センターに視察をしてまいりまして、ゲノム医療が研究を進めているという話も聞いて、心 強く思って期待をしているところでございます。ただ、やはりそうしたものが更に進むことによって様々な問題も御指摘のように起こり得るだろうということは 認識をしたところでございまして、現在の取組等、あるいは先ほど申し上げた研究班の調査結果などを踏まえまして、遺伝子情報がその本人の、何というんです か、意に反するような形で差別的な取扱いにつながることなく適切に利活用されるように、今後、必要な取組について検討してまいるということは必要なことだ ろうと、このように考えているところでございます。
○委員長(丸川珠代君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
○三原じゅん子君 はい、終わります。
<後略>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/189/0062/18905120062010a.html
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